<コラム>日本が建造した中国の駅舎、中国の鉄道は1876年に始まった

工藤 和直    2018年10月27日(土) 21時30分

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日本の鉄道開業は1872年(明治5年)10月で、新橋と横浜停車場間29キロメートルを結んだ。中国に鉄道が敷設されたのは1876年である。

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1830年、イギリスのリバプール&マンチェスター鉄道は、工業都市マンチェスターと貿易港リバプール間の約50キロメートルを蒸気機関車で時刻表を用いて定期運行する世界初の営利事業をスタートした(写真1)。馬車と違って季節や天候に左右されず、大量・迅速かつ確実に輸送・移動することのできる鉄道は、交通事情を一変させた(交通革命)。

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1853年、アジアで初めてインドのボンベイとターネー駅間40キロメートルで鉄道が開業した。当時、インドではイギリスの植民地化が進みつつあり、イギリス資本で鉄道が建設された。日本の鉄道開業は1872年(明治5年)10月で、新橋と横浜停車場間29キロメートルを結んだ。1854年にペリーが蒸気機関の鉄道模型を紹介し、明治時代に入ってイギリス指導で鉄道の建設が始まった。旧新橋駅は現在の汐留にあり、昭和時代には広大な貨物ターミナル駅があったが、現在は高層ビル群の中となった(旧新橋停車場鉄道歴史展示室)。また、旧横浜駅は現在の桜木町にあり、現在の横浜駅はまだ海で、沖に堤が築かれ線路が敷設されていった。

中国に鉄道が敷設されたのは1876年である。上海駅(写真2、その後は上海北駅となり現在は上海鉄路博物館、地下鉄3号線宝山路の対面)と呉淞駅間にイギリスが鉄道を敷設した(地図1)。租界地にあった上海駅から現在の地下鉄3号線と同じ軌道を約15キロメートル北、ちょうど黄浦河が長江に入る位置に呉淞駅があり、大型船便が黄浦河に入るのが困難である点を補う目的でここから陸送にしたが、開業1年後に反対運動で撤去された(写真3)。その後、1880年代には欧米列強による鉄道建設が本格化した。

東京駅舎は辰野金吾が設計、1914年(大正3年)に竣工した(写真4)。上野駅舎は1923年(大正12年)の関東大震災で被災した初代駅舎を改築し、1932年(昭和7年)5月5日から営業開始した(写真5)。1895年日清戦争後の台湾割譲から日露戦争後の南満洲鉄道経営、1910年韓国併合以降、鉄道路建設が国策として進められ、海外にも大きな日本式の駅が建設された。その例が、旧満州地区の瀋陽(奉天)・長春(新京)駅などである。現在も当時のままに補修されて現存しているのが瀋陽(奉天)駅である。

瀋陽(奉天)駅舎は辰野金吾の学生であった太田毅と吉田宗太郎により設計、1910年10月1日に竣工した(写真6-1)。東京駅の4年前に建設されたが、非常に東京駅に似ていることから、辰野の指導のもとに設計されたと想像がつく。日露戦争後租借地となった大連駅は1903年にすでに営業していたが、1937年に新駅舎(写真6-2)が完成。上野駅に非常に似ている。偽満州国成立後に多くの日本による駅舎が作られ、現在でも撫順駅・金州駅・吉林市孟家駅・海林市横道河子駅・ハルビン市香坊駅・内モンゴル阿爾山駅などが現存している。203高地がある旅順駅も当時のままの駅であるが、ロシア建造物である。

植民地となった台湾でも多くの日本式駅舎が建設された。現存する最古の駅舎は新竹駅(写真6-3)で1913年竣工している。台中駅も1917年建設された日本人建造の駅舎である。韓国ソウル(京城)駅は日韓併合後に作られた駅舎で、1925年に竣工した(写真6-4)。設計は辰野金吾に学んだ塚本靖であるので、東京駅に似ている。

■筆者プロフィール:工藤 和直

1953年、宮崎市生まれ。1977年九州大学大学院工学研究科修了。韓国で電子技術を教えていたことが認められ、2001年2月、韓国電子産業振興会より電子産業大賞受賞。2004年1月より中国江蘇省蘇州市で蘇州住電装有限公司董事総経理として新会社を立上げ、2008年からは住友電装株式会社執行役員兼務。2013年には蘇州日商倶楽部(商工会)会長として、蘇州市ある日系2500社、約1万人の邦人と共に、日中友好にも貢献してきた。2015年からは最高顧問として中国関係会社を指導する傍ら、現在も中国関係会社で駐在13年半の経験を生かして活躍中。中国や日本で「チャイナリスク下でのビジネスの進め方」など多方面で講演会を行い、「蘇州たより」「蘇州たより2」などの著作がある。

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