Record China 2012年11月29日(木) 11時40分
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2012年も終わりに差し掛かった先日、出張のため中国の航空会社の便で北京へ行ってきた。何と、機内放送で“抗日映画”が上映されるという驚くべき事態に遭遇した。来日して15年、初めてのことである。
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2012年も終わりに差し掛かった先日、出張のため中国の航空会社の便で北京へ行ってきた。来日して15年、年に2回帰国すると計算すれば、私はすでに日中間の航空路線を60回も利用していることになる。東京から北京へは3〜4時間程度。ビールを飲んで機内放送の映画を見ていると、もう到着となる。快適な空の旅といってもいいはずだが、しかし今回の旅は愉快とは言い難かった。
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機内で上映されていたのは何と、“抗日映画”。日中戦争下の40年代、中国内陸部で活動する匪賊が、自ら拉致してきた抗日活動家と心を通わせるうちに愛国心によって団結し、日本軍と戦うというストーリーだった。
日中を結ぶ国際線でこのような映画が上映されるのは、おそらく初めてのことではないだろうか。先般の尖閣問題で日中関係が悪化したからだろうか。意図があってこうした映画を上映したのかどうかは分からないが、少なくとも私にとっては初めての体験だった。
小学生のころ、親と一緒に近所の書店に行き、書道のお手本を求めた。しかし、その本は販売禁止になったと店員に言われた。理由を聞くと、中に収録されている岳飛の詩「満江紅」が民族の団結に悪影響を及ぼす恐れがあるため、発禁になったというのだ。
岳飛(がくひ)は南宋(1103〜42)の武将で、漢民族にとって最高の英雄である。中国北東部から侵攻してきた金を撃退し、宋を救ったからだ。しかし、撤退を命じる穏健派に迎合せず、抗戦継続を強硬に唱えた岳飛は、謀反の罪を着せられて獄死した。
彼は書家としても一流の人物であった。愛国をうたった彼の代表作「満江紅」には、「壮き志ある者、飢(うえ)しとき餐(さん)すは胡虜の肉、笑い談じて渇きしとき飮むは匈奴の血」という言葉がある。「胡、匈奴」とは異民族を指すが、ここでは金のことである。金は現在の黒竜江省にあたる松花江流域に居住した女真族の国。そして岳飛は河南省の出身。これを現代に当てはめると、河南省の人が黒竜江省の人を批判することになるので、「民族の団結に不利」として発禁となり、学校の教科書からも消えた。つまり、「多民族国家の団結」を優先するための配慮である。
このような配慮は自国だけではなく、隣国に対しても必要ではないだろうか。中国在住の日本人と会った際、時々中国でよく放映される抗日戦争映画やドラマの話題が出る。彼らの多くは、史実を隠さず戦後の日本が歩んだ道や現代の日本の姿も平等に伝えてほしいと考えている。抗日ドラマをテレビで見かけない日はないという現状を変えない限り、中国人の日本へに対する恨みは消えることはないだろう。
日本人にとって、こうしたことはダイレクトに批判しづらいかと思うが、少なくとも日本在住の中国人は一般の中国人より日本の現実をよく知っているはず。日中関係の発展のためにも、このような映画やドラマをなくすように働きかけてもいいのではないだろうか。(42歳男性/在日15年/会社員)
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