<コラム>気ぜわしい師走、中国の日本人駐在員の些細な行動がピンチを招くかも

曽賀 善雄    2018年12月16日(日) 16時0分

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何かと気ぜわしい「師走」。往年よりも減ったとはいえ年賀状の準備、家の大掃除や友人たちとの忘年会等々。それは中国に住む日本人にとっても同じこと。写真は中国の正月の飾り。

何かと気ぜわしい「師走」。往年よりも減ったとはいえ年賀状の準備、家の大掃除や友人たちとの忘年会等々。それは中国に住む日本人にとっても同じこと。間もなくやってくるお正月を前に心が少々浮ついている日本人と一緒に、中国の社員達はいつもと変わらない雰囲気の中で淡々と仕事をしています。

【中国の元旦は単なる休日】

公式的には中国も1月1日が新年。ただ、生活面は旧暦で動いている中国では12月と言ってもいつもの月と何も変わりません。街もいつものとおりですが、仕事が終わり家に戻ってテレビをつけると日本チャンネルでは年末にちなんだ番組が放送されているので、その時だけは「年の瀬」をかろうじて感じることができます。大晦日の恒例、紅白歌合戦はとにかく1年が終わったとホッとするひと時を与えてくれます。

春節(旧暦の正月)の盛り上がりとはくらべものにはなりませんが、それでも、最近の12月31日大晦日には若者たちが街に出て新年のカウントダウンをやっているようです。

【元旦のお休み中に街に出るとそこはいつもと変わらない喧騒が…】

中国で「元旦」という文言が初めて使われたのは三国時代だそうです。元旦の「元」とは「始め」を意味し、「旦」は「日」を表し「元旦」は「始まりの日」との意です。その響きは気持ちを新たにしてくれます。

元旦に地元の日本料理店に行ってみると特別メニューの「お雑煮」が。白みそだ、赤みそだと贅沢は言えませんが、外国でお雑煮が食べられること自体がうれしいことです。

【年末の些細な行動が招くピンチ】

お正月を日本で過ごそうとする日本人は年の暮れが近づくとそわそわとしています。日本でのお正月を満喫するには3連休だけでは足りないので有給休暇を申請し、結局中国人社員よりは長い年末年始休暇となります。

そこで気になるのは現地社員の日本人社員に対する目。「自分たちは仕事をしているのに日本人は休暇を取っていいご身分だ」と思われたとしたら以降の仕事に、ひいては業績に影響することは避けられません。

考えてみたらもうしばらくすると春節休暇がやってきます。もし、年末年始に休暇を取れば春節にはまた一週間の休暇が取れるのですから、現地社員にしてみればたがが緩んでいるように見えるかもしれません。慎重を欠いた些細な行動が、それまで築き上げてきた信頼を失ってしまうことになるという中国の格言もあります。

人の上に立つリーダーとして、わずか3日ほどの休暇によって信頼を損なうことのないような、自らを律する行動が求められます。中国で会社経営層として仕事をしている日本人としては、お正月だと浮かれていてはいられないのです。元旦の少し後には春節長期休暇がやってくるのですから、私自身は14年半の赴任期間中はいつも中国で元旦を迎え、3連休明けには出社していました。

【浮かれてばかりいられない中国の12月】

中国の会計年度は1月~12月で、当年度の決算見通しを踏まえて新年度の予算を作成し、日本の株主総会に相当する「董事会」の準備など、12月は結構忙しいのです。日本本社は会計年度が4月~翌3月ですから、日本の新年度が始まるころには中国の現地会社ではすでに第1四半期が終わるってことになります。

ところでこの「予算」の作成がけっこう厄介。「頑張って売ろう!」や「たくさんやろう!」といった漠然とした表現をするときは中国人社員も威勢よくていいのですが、目標を数値化することはとても苦手。

今でこそ「予算」「重要目標達成指標(KGI)」「重要業績評価指標 (KPI)」などという言葉が中国でも聞かれるようになってきたようですが、私が勤務していた当時は「予算」という言葉さえ社内ではよく理解されていませんでした。

しかし、目標も計画なく出来高だけ見ていたのでは会社経営など成り立つわけがありません。適正で健全な経営のためには予算や施策など周到な準備が欠かせません。企業においては市場という戦場で新しい1年を戦うわけですから、そのために必要なのは具体的な数値目標の設定です。

ただし、その予算などの数値目標を社員達にそのまま示しても、消化されるとは思えませんので、目標に向かって挑戦するさまざまな工夫が不可欠です。そこが総経理(社長)の腕の見せ所。12月は決算見通しを立て、来期の予算と重要業績評価指標を策定したりと多忙な時期なのです。お気楽駐在員を除いては…。

■筆者プロフィール:曽賀 善雄

1949年和歌山県生まれ。1971年大手セキュリティサービス会社に入社。1998年6月、中国・上海のグループ現地法人の総経理(社長)として勤務。2000年4月から13年近くにわたり中国・大連の現法で総経理(社長)として勤務。2013年1月に帰国、本社勤務を経て2014年7月リタイア。

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