なぜ?理解できなかった日本人の先生の行動、理由を聞いたら感動でいっぱいになった―中国人学生

日本僑報社    2019年2月2日(土) 12時20分

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学生をどうやって「その気」にさせるかは教師の腕の見せ所でもある。海南師範大学で日本語を学んだ張少東さんは、日本人の教師のある言葉に感銘を覚えたようだ。

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学生をどうやって「その気」にさせるかは教師の腕の見せ所でもある。海南師範大学で日本語を学んだ張少東さんは、日本人の教師のある言葉に感銘を覚えたようだ。以下は張さんの作文。

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大学二年生になって、初めて倉元先生の授業を受けた時、私が自己紹介のスピーチをした後で、先生はこうおっしゃった。「すばらしい」。

その時は、「本当に?褒められちゃった!嬉しい」と密かに喜んだものだ。こうして、私の生まれて初めての日本人の先生の授業は楽しく過ぎていった。

しかし、この後、おかしなことに気づいた。倉元先生は誰が発表した後でも必ず「すばらしい」と躊躇なくおっしゃるのである。特にある授業でクラスメートの一人が発表したのだが、声が小さく流暢でもない日本語で文章を暗唱したというのに、倉元先生はいつものように「すばらしい」と褒めておられた。なぜなのか?私にはどうしても理解できない。もしかしたら、みんなの日本語能力は本当にすばらしいかもしれないかと思ってみたが、やっぱり合点がいかない。

倉元先生は「すばらしい」とおっしゃり、のみならずそれと共に、にっこりと微笑んでうなずいて見せるのである。いったい、なぜだろうか。その時分の私は、まだ先生の真意がわからなかった。

そんなある日、興味深い出来事が起きた。その日に、私は倉元先生の授業の予習を忘れてしまっていた。授業を受ける10分ほど前に、私は取り急ぎ予習してみたが、心の中は不安でいっぱいだった。しばらくして、先生が教室に入ってこられた。先生をじっと注目していた私は、今までの自信をすっかり失ってしまっていた。とうとう私の順番が回ってきて、私は椅子から立ち上がり、声が小さく流暢でもない日本語でなにやら答えた。しかし思わぬことに、先生はいつものように「すばらしい」と褒めてくださったのだ。

これは、一体どういうことだろう?自分を抑えられず私は「今の私の発表は別段すばらしくないのではないでしょうか」と、先生にぶしつけな質問をした。先生はやや呆気にとられたようだが、すぐににっこり笑って、「日本人がね、よくすばらしいと言いながら、うなずくのは相手への思いやりの気持ちを表しているんですよ」と答えられた。実際こうおっしゃる先生の笑顔はとても温かった。その温かさが、私の胸の奥まで伝わってきて、私はすっかり嬉しくなってしまった。

私は、さらに続けて「先生の真意をもっと詳しくうかがいたいと思います」と聞いていた。先生は、「学生は教師の質問に答えている時、自分に自信が持てないでいるかもしれない。その時に教師のポジティブなイメージが相手に伝われば、学生は自分を肯定する気持ちが沸き起こるもの。すると、学生は自信を持てるようになって、積極的に日本語を話し続けることができるんだ」と、先生は落ち着いておっしゃった。

この10年というもの、中国で学生をしていた私にとって、授業中先生から質問を受けるのは辛いことであり、いつもドキドキと胸が緊張し、頭は真っ白になっていたものだ。そういう時、担当の先生は励ますような言葉は何もかけてくれなかった。私は決まって自信がなくなり、それ以上何も答えられなくなっていた。倉元先生は私たちに教科書の知識を教えるだけではなく、人の道も教えてくださった。私は深い感動でいっぱいになった。

それ以来、相手に思いやりの気持ちを表すというのを、私のモットーにしている。毎回相手の話を聞いて「すばらしい」と言いながら、うなずいている私は、相手からいろいろな笑顔のお返しをもらってきた。「すばらしい」って言葉には、不思議な力が込もっていると思う。それを通して、良い人間関係を築くことができるのではないか。人と人の関係においても、国と国の関係においても。思いやりの心を知り、思いやりのある人になるよう目指すということは、忘れられない先生からの大切な教えだ。(編集/北田

※本文は、第十三回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「日本人に伝えたい中国の新しい魅力」(段躍中編、日本僑報社、2017年)より、張少東さん(海南師範大学)の作品「すばらしいって」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。

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