八牧浩行 2013年2月1日(金) 7時30分
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中国経済は緩やかな回復軌道にあり、2013年の実質的GDP経済は8%台前半と昨年の7.8%を上回る見通しだ。しかし政府による巨大インフラ投資によるもので、バランスのとれた経済発展からは程遠い。不動産バブルを危惧する声もある。写真は北京の地下鉄工事現場。
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2013年2月、中国経済は緩やかな回復軌道にあり、今年の実質的GDP経済は8%台前半と7.8%を上回る見通しだ。しかし政府による巨大インフラ投資によるもので、バランスのとれた経済発展からは程遠い。不動産バブルの再来を危惧する声も、巻き起こっている。
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最近の中国の景気回復の背景となっているのは(1)12年4月以降の金融緩和と積極的財政支出を背景に、地下鉄、道路建設などのインフラ投資が増加し始めていること(2)12年5月以降、不動産価格が上昇に転じたため、先行きの値上がり期待が高まり、不動産投資が回復しつつあること、(3)先進国に比べ著しく劣っていた第3次産業が徐々に拡大、雇用の増加と賃金上昇から消費増につながったこと―の3点だ。
さらに、今年3月の習近平政権の本格スタートにより、大型公共投資を中心とした巨大国家プロジェクトが動き出す。心配された消費者物価が昨年半ばから2%前後と安定しているほか、財政事情もほかの主要国に比べ格段に良好なため、政策運営の自由度は大きい。
ただ、この先、欧米向け輸出の伸び悩み、不動産バブルの再燃とこれに伴う不動産取引規制の継続が予想される。さらに、銀行貸出の一部が不良債権化していることも懸念材料である。
12年末の「中央経済工作会議」で「経済構造改革」に力点が置かれた基本政策方針が打ち出された。内需主導型成長モデルへの転換、消費拡大の促進、過剰設備の抑制、技術革新の推進、都市化促進、国民生活水準の向上などである。
これら構造改革は10年前の胡錦濤政権の初期段階から叫ばれていたが、既得権益者が激しく抵抗、ほとんど実現されていないのが実情だ。3月に国家主席と首相に就任するなる習近平氏と李克強氏の政策手腕が試される。
新政権には、所得格差の縮小、産業競争力の強化、汚職・腐敗の是正といった「待ったなし」の課題が待ち受けている。中国のような中進国(1人当たりGDPが年1万ドル程度まで)で、これら高いハードル(罠)をクリアできずに先進国になれない国は数多い。アジアで首尾よく先進国の仲間入りを果たした国・地域は、日本以外ではシンガポール、韓国、台湾、香港だけ。インドネシア、タイ、フィリピンなどは先進国への移行に失敗した経緯がある。中国が「中進国の罠」に落ち込む懸念も大きいと言わざるを得ない。
共産党政権は多くの関係組織を総動員し、所得格差是正、国有企業民営化、汚職・腐敗の解消、情報統制の緩和、政治改革(民主化)など最優先政策課題に取り組む方針だ。富裕層、既得権益層の抵抗が強く、実行は至難の業。深刻度を増す公害など社会的な歪は増大する一方で、国民の不満は高まっている。
これらの課題をクリアできなければ、中間層が拡大せず、消費が伸び悩む。企業経営の効率化が阻害され、企業の採算性も悪化する。さらには企業の国際競争力が低下し、貿易赤字国に転落。その結果、経済成長率が低下してしまう。
上海、北京、広州、深セン等の沿海部主要都市は、すでに先進国並みの経済水準に達した。
しかし、武漢、重慶、成都、西安、瀋陽など内陸部の主要都市およびその他中小都市、さらには農村地域はこれから重要な局面を迎える。
習近平総書記は1月上旬、就任後初の地方訪問として広東省深セン市を視察した。深センはトウ小平氏の改革開放政策で急速に発展し、現在はサービス業やハイテク産業など高度経済化が進んでいる「模範都市」。習総書記の訪問には、成功したトウ氏の改革開放政策を踏襲。産業構造改革を推進し持続的成長を目指す姿勢をアピールする狙いがある。
<「コラム・巨象を探る」その26>
<「コラム・巨象を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆)によるコラム記事。近著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)がある>
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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