車椅子の祖母を2020年東京五輪に連れて行く! 障がい者が暮らしやすい日本に感銘―「中国人の日本語作文コンクール」最優秀賞・黄さん

八牧浩行    2019年2月28日(木) 6時10分

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第14回「中国人の日本語作文コンクール」で、最優秀賞に選ばれた黄さんが来日し、心境を語った。受賞作品『車椅子で東京オリンピックに行く!』は以前日本を訪れた際、障がい者が暮らしやすい環境が整備されていることに感銘したことなどが、綴られている。写真は黄さん。

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第14回「中国人の日本語作文コンクール」(2018年)で、最優秀賞(日本大使賞)に選ばれた黄安●(王へんに其)さん(復旦大学)がこのほど来日し、東京都内で心境を語った。今回の課題テーマは「中国の若者が見つけた日本の新しい魅力」。受賞作品『車椅子で東京オリンピックに行く!』によると、以前日本を訪れた際「日本ではバリアフリー化が進み、スロープや多目的なトイレをよく見かけ」、車椅子の人も歓迎され、障がい者が暮らしやすい環境が整備されていることに感銘した。「それは『平等』や『愛』を伝えるメッセージであるだけでなく、不幸な人の心を癒し、幸せにする『薬』なのだ」と気づく。

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この忘れられない体験から、車椅子生活を余儀なくされている祖母を2020年東京オリンピック・パラリンピックに連れて一緒に観戦したいと思うようになったという。祖母は2008年北京五輪の観戦を楽しみにしていたが、五輪直前に交通事故に遭い、観戦を断念したという。交通事故で障害が残った祖母に「愛」を感じてもらうと同時に、小学校の体育教師だった祖母の五輪を観戦するという夢をかなえてあげたいという心情が情感細やかに綴られている。

黄さんは日本の印象について「日本の街並みは美しく、人も親切」と高く評価。「コンビニエンスストアなどのレジ袋も温かいものと冷たいものを分けている。街のショップでも、雨天の時は濡れないようビニールのカバーをつけてくれる」と指摘した。

大学では日本語・文学を専攻、川端康成の『雪国』『古都』を愛読し、その表現の細やかさに惹かれると言う。現代の日本人作家では村上春樹より東野圭吾のファンとか。魯迅の『阿Q正伝』『藤野先生』も愛読している。

黄さんが日本語を本格的に勉強し始めたのは3年半前。英語の学習の方が長く「英語の方が得意」と言うが、日本語も流ちょうだ。幼少時から日本アニメを愛好しており、日本語も自然に覚えたという。将来の夢は語学を生かして「国際交流の仕事をし、日中友好の懸け橋になること」。

「中国人の日本語作文コンクール」は05年のスタート以来、応募者総数は4万1490人に達している。今回は、中国各地の短大・高専、大学235校から4288作品の応募があった。筆者はこの10年あまり毎年、作文コンクール入選作を読み、最優秀賞者を取材しているが、年を追うごとに作品の内容が充実、受け答えも洗練され、日中の若者の考え方が近づきつつあることを実感する。

2012年の尖閣諸島国有化と反日デモなどで日中間が険悪化した後、ある最優秀賞受賞者は「戦争はイヤです。誰かが死ぬことになります」と呼び掛け、日中の若者同士で「平和を語り合う」ネットブログ・サークルを立ち上げたこともあった。この2~3年は両国間の関係改善を反映して相互理解と平和友好を謳い上げる作文や発言が目立つ。この種の若者参加イベントの役割は大きい。

『<第14回中国人の日本作文コンクール入賞作品集>中国の若者が見つけた日本の新しい魅力』(段躍中編、日本僑報社刊)

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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