<コラム>中国の危険化学品業界市場の現状

内藤 康行    2020年11月12日(木) 13時40分

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中国の危険化学品業界市場の現状を紹介する。写真は化学工場の爆発事故。

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1.中国の危険化学品業界の基本的な定義と分類

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危険化学品とは、可燃性、爆発性、毒性、有害、および放射性等の特性を持つ化学品を指す。輸送、取扱い、保管、および保管中に死傷者や財産の損害を引き起こす可能性があり、特別な保護を必要とする化学物質である。通常使用される危険化学品は、主な危険特性に応じて、8つのカテゴリーに分類されている。

2.減少しない中国の危険化学品の事故と事故死傷者

「中国化学品セーフティーネット」と「中国化学品安全協会」の公式ウェブサイトが公開したデータによると、2013年から2019年まで、中国では合計5513件の危険化学品事故が発生している。 2015年に天津港で爆発事故を起こした後、中国政府は危険化学品の管理を強化したことで、事故の件数は減少したが、それでも2019年では30件以上の事故を起こしている。公表されていない事故を含めればさらに多いと推測される。

一方、危険化学品事故による死傷者は、2013年から2019年までに5592人が負傷し、2560人が死亡している。その中で、2015年の天津港の爆発は死傷者数で最大である。ちなみに昨年の危険化学品事故では750人が負傷し、144人が死亡している。

3.中国の危険化学品 生産量が増加

「危険化学品目録」には2828品目の危険化学品がある。石油化学、製薬等の業界にとって、あらゆる種類の危険化学品は生産に不可欠な原材料である。化学工業の急成長で、危険化学品の生産量も増加した。国家統計局のデータによると、2019年の中国の硫酸、苛性ソーダ、ソーダ灰の生産量は、それぞれ8935.7万トン、3464.4万トン、2887.7万トンで、前年比1.2%、0.5%、7.6%増加した。

4.中国の危険化学品主要生産地

2019年1月9日、国務院安全委員会弁公室が「危険化学品の重点県における専門家指導サービスの実施に関する通知」を公布し、2019年1月から2021年12月まで53の危険化学品調査の実施を決定し、全国の53の主要危険化学品重点県リスト及び30の省・市・自治区・新疆生産建設兵団のリストを公表した。重点県の分布では重点県数が最多省および自治区は、河北、遼寧、江蘇、浙江、山東である。

5.中国の危険化学品のパッケージ・容器低品質で甚大な損失

現在、危険化学品の一般的なパッケージ・容器は、ドラム缶(鋼板溶接ドラム缶、ブリキドラム缶)、プラスチックドラム缶、麻袋、プラスチックバッグである。中国の危険化学品のパッケージ品質は悪く、輸送中パッケージの損壊が多く深刻化している。危険化学品のパッケージ損傷によって引き起こされる火災、爆発、腐食やその他の事故の直接的損失は、年間数百万元(数千億円)にも上る。危険化学品に使用されるプラスチック容器は、高い難分解性と低リサイクル等で環境への負荷が大きいため、中国政府は段階的な標準化とプラスチック材料の使用制限を実施している。これはプラスチック容器業界の市場成長を阻害している。2019年のプラスチック容器の全国生産量は8万1842万トンであった。一方、金属パッケージでは、2019年1月から12月、全国金属包装容器業界の売り上げは前年比5.26%増の1167億3000万元(約1兆8300億円)に達した。昨年、全国金属包装容器業界の生産高上位5地域は、広東省、浙江省、福建省、遼寧省、江蘇省である。

6.中国の危険化学品輸送の主役はバンとタンクローリ

危険化学品の輸送車両は、国民経済の発展と密接に関係している。中国経済の急成長と自動車業界の急成長に伴い、石油化学工業業界の成長を促進された。同時に危険化学品の輸送車両の需要も急速に伸びた。

中国の危険化学品物輸送車両は主にバンとタンクローリだ。現在この2種類の車両生産は安定している、昨年のバン型特殊車両の累計生産量は85万5400台で、前年比6.4%増となった。他方タンクローリ特殊車両は2019年、累計で15万4800台となり、前年比24.9%増となった。

中国の危険化学品業界は、低レベル危険物ペッケージの損壊による経済損失と頻繁に起こる事故、いずれも環境汚染に直結する重大課題に直面している。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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