「焦って母親になる必要はない」というアドバイスが増えている理由とは?―中国

人民網日本語版    2019年5月17日(金) 1時40分

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「母の日」に際し、中国版ツイッターでは、「もし若い時の自分の母親に会えたとしたら、どんな言葉を彼女にかける?」いう話題で盛り上がっている。写真は中国の家族。

「母の日」に際し、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)では、「もし若い時の自分の母親に会えたとしたら、どんな言葉を彼女にかける?」いう話題で盛り上がっている。その答えの中でランキングの上位に入ったのは、次のような回答だった。

「パパと結婚するのをやめて、大学に進んで。もっと充実した生活が待っているはず」

「パパと一緒にならないで。思い切って自分のやりたいことをして」

「ママがもっと良い人生を送ることを願っているわ。私がこの世に誕生するかどうかなんて、どうでもいいから」

このような答えから、多くの中国人家庭の現状を伺い知ることができるかもしれない。両親はまるでそれが義務であるかのように結婚し、子供を産んでいるが、親になることに、一体どのような意味があるのかについては考えてもいなかったようだ。

■母親になることに一体どんな意味があるのか?

2年前に子供を産んだ29歳の張清(ジャン・チン)さんは、母親になることでもたらされたすべてが不思議な体験だったと感じていた。

妊娠中に感じた胎動から、赤ん坊が歩き始めて口をきくようになるまで、息子の一挙一動はすべて、母親である張さんの影響を受けており、その話し方から訛り、食習慣、性格まですべてに彼女の面影を見ることができるという。

ある時、息子が床に寝ころんだまま、「ママ、ママ、僕を抱いて、抱っこして」と甘え続けたことがあり、食事中だった張さんは、息子に自分で立ち上がるように言ったが、言うことを聞かず膠着状態になったという。結局は息子の、「ママ大好き。僕を抱っこして」の一言にほだされて、張さんはすぐさま息子を抱き上げた。その瞬間、彼女は母親として最も満ち足りた思いを感じたという。それでも張さんは、出産を経験していない女性に対して、「じっくり考えてから行動に移すように」と勧めている。

結婚は、既婚の人は抜け出したく、未婚の人は結婚したいと感じるようなものだが、母親になるということは、車で狭い路地に入っていくようなもので、多くの場合、進退窮まり、身動きが取れなくなるようなものだと言ってもいいかもしれない。

張さんと夫は、卒業後すぐに結婚した。仕事がまだ不安定だった時期に彼女は妊娠し、彼女の母親が子育てをサポートしてくれたが、それでも仕事への影響は避けられなかった。2度の転職を経て、今は求職中の身だ。再就職するには心配の種も尽きない。もし就職試験の準備をしようと思ったら、2週間ほど子供を預けなければならないという。

張さんがより身につまされたことは、子供を産み落としたその瞬間から一生、その子供に対する責任を負わなければならないことだ。これは、自分の優先順位が変わることを意味する。個人としての自分よりも先にまずは息子の母親でなければならないからだ。

■母親が背負うべきものとは?

「君に休みを取る必要があるのか?」

これは映画「半辺天」インド編のヒロインであるインド人の専業主婦が1カ月の休暇を取りたいと言い出した時に、仕事に忙しい夫が顔を上げて問い返してきた言葉だ。

彼女は、思わずムッとしたように、「私に休みは必要ないっていうの?あなたたちの面倒を見る以外に、私には自分自身の時間は必要ないということ?」と反論した。

このインド人夫妻が交わすやりとりは、わたしたちの日常でも身近に生じている類のものだ。

なぜ慌てて母親になる必要がないのかとするのは、どうして母親はこれほど多くの責任を負わなければならないのか、そして一体誰がこうした母親を「解放」してくれるのかといった問題をまずは解決しなければならないからだ。

これはまたイプセンの「人形の家」に関して魯迅が問いかけた「ノラは家出してからどうなったか」という問題にも関わってくると言える。魯迅はこれについて、「独立する意識しかなく、独立した経済力が無かった場合、家を出たノラには2つの道しかないだろう。堕落するか、そうでなければ家に帰るかだ」との見解を示している。

現代のノラには、経済力がある。しかし直面する問題もより多い。この問題が最初に提起されてから100年近くたった現在でさえも、答えはまだはっきりと出ていない。

「半辺天」中国編では、ひとつの答えが模索されている。それは自分で自分を「解放」するという答えだ。映画で、母親は料理人との再婚を願ったが、娘から反対される。なぜなら娘にとっては料理人という職業が、院士である実の父親とはあまりにもかけ離れていると感じたからだ。

しかし、母親は、自分は料理人と一緒になって初めて本来の自分に戻ることができると主張する。前夫との生活では、母親は相手に合わせるしかなく、自分を押し殺して控えめに生きてきた。娘もまた同様の問題に直面しており、他人からはとても優秀で、仕事でも順調に昇進していたが、彼女の日々は毎日が緊張の連続だった。最終的に娘は母親の再婚に同意しただけでなく、自分も本当に好きな仕事に就いた。

■なぜ母親になるのか?

なぜ母親になる必要があるのか?子供が好きだから、という人もいれば、子孫を残したいという人もいる。両親に催促されたという理由の人もいれば、子供に老後の面倒を見てもらうため、という人もいる。

また、なかにはビジネスキャリアを理由に子供を産む人もいる。職場では、既婚で子供のいない男性に比べ、同じ状況の女性は、より悪しき立場に置かれやすい。特に一定期間務めあげて仕事でボトルネックに直面し、転職したいと思ったとき、彼女たちがまず考えるのは、子供を産むことだ。

では一方で、母親になることをためらう女性は、一体何をためらっているのだろうか?

青青さんは今年結婚したばかりだが、子供を持つかどうかについて、まだ夫と合意に達していないという。結婚前、2人はこのことについて何度も話し合った。夫は「今年結婚したから、来年には子供を持ってもいい」と考えていた。

しかし青青さんは、「自分に決定権があるなら、産まない選択をする。子供を産み育てることは、心身ともに疲れるだけでなく、スタイルは悪くなるし、さらに重要なのは暮らしの中心が全て変化してしまうこと」としている。

これまで、彼女は大学院博士課程受験のための準備をしてきた。合格した場合、子供を産むとさらに面倒が増える。しかしその一方でこの問題は彼女一人で決定できる問題ではないことは青青さん自身も十分理解している。

また、なかにはディンクス(子供を持たない共働き夫婦)を選択する人もいる。経済的条件が不安定で、子育て費用をまだ貯めていないからという人もいれば、まだ母親になる準備ができていないからという人もいる。それだけでなく「子供が母親にとってどんな意味があるのか?」、「私は良い母親になれるのだろうか?」、「子供を産んでから後悔しないだろうか?」と思い悩む人もいる。

女性が母親になることについて見せるためらいを「エゴ」や「わがままな甘え」とみなし、「誰もがみなやってきたことなのに、なぜ貴女だけが耐えられないのか?」とする人も一部いる。

しかし母親になる前に、まずやらなければならないのはしっかりとした自分を作り上げることだろう。焦って母親にならないことは間違いかと言えば、そうとも限らない。なぜならしっかりした母親になれないことの方がむしろ間違いだといえるからだ(文中の人物の名は本人の希望で全て仮名)。(提供/人民網日本語版・編集/KM)

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