黄 文葦 2019年6月24日(月) 22時0分
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中国の芸能界で20年近くにわたって活躍する俳優、矢野浩二さん。映画やテレビドラマのほか、バラエティー番組の司会で活躍し、中国で「最も有名な日本人」として知られている。
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中国の芸能界で20年近くにわたって活躍する俳優、矢野浩二さん。映画やテレビドラマのほか、バラエティー番組の司会で活躍し、中国で「最も有名な日本人」として知られている。矢野さんは2000年から中国に渡って活動を開始し、2016年からは日本に拠点を再び移し、日中両国で活動している。同年、日中の懸け橋として、相互理解に貢献したことが認められた矢野さんが日本の外務大臣表彰を受賞された。
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先日ご縁があり、矢野さんを取材することができた。矢野さんは言語の表現力がたいへん豊かで、何気なく日本語と中国語を織り交ぜて話す。「家の中でも日本語と中国語を両方使っていますよ」と微笑みながら話していた。明るくてとても素直な方だという印象を受けた。現在、日本と中国にいる時間が半々で、両国の撮影現場を行き来するという。今年1月から中国でドラマ撮影、4月から日本で仕事をし、下半期にまた中国へ…
矢野さんはなぜ中国で大人気となったのか。もちろん、それなりの理由がある。取材の中で感服することが多かったので、ここでお伝えしていきたい。
●グローバル感覚で活動
矢野さんが仕事に関する価値観を語ってくれた。日本のマスコミが矢野さんを「逆輸入俳優」と称しているが、矢野さんは反論した。「僕は日本に戻って、活動の空間、仕事の幅が増えたと感じただけで、逆輸入ではないです。中国での仕事は続けていくつもりで、僕はグローバル感覚で活動します。どこでも仕事があれば、駆けつけます」この答えから、矢野さんは仕事熱心な役者であると感銘を受けた。
「日本の文化を中国に伝える」という趣旨のテレビ番組の仕事で、矢野さんは中国の習慣と文化を現場の仲間たちと分かち合う。例えば、中国のテレビ番組では、字幕とナレーション、両方の中国語が必要である。日本人の考え方には、字幕とナレーション、どちらか一つあればいい。ただし、中国は広く、いろいろな言葉がある。字幕があれば、どこの中国人にも大体分かる。
昨年12月、矢野さんは15年間契約を結んでいた中国の芸能会社と解約した途端、さまざまなところから仕事のオファーが殺到した。知名度が高いので、普段、中国で外出する際、必ず帽子と眼鏡を身につける。タクシーに乗る際、電話で話したら、すぐ運転手にばれるという。
2003-2008年、矢野さんは多くの悪役を演じた。2006年から段々仕事の幅が広くなってきて、いろんな役にチャレンジできるようになった。現在では、「悪役」「好人」問わず、素晴しい作品、興味ある作品にどんどん出たい、どんな役でも挑戦するという。10月に公開予定の中国国歌の作曲者聶耳の物語を描く中国映画「国の歌者」にも出演した。
●子役から中国語を学ぶ
流暢な中国語をどうやって覚えたのか聞いてみたところ、「中国語の勉強の秘訣は子役としゃべること」という意外な答えが返ってきた。
最初のころ、撮影現場で、矢野さんは中国語が全くわからなかった状態で、通訳の人もいなかったとき、現場で毎日子役たちとしゃべっていたという。子供の言葉は分かりやすいので、言葉をどんどん覚える。「30歳を過ぎて北京に行ったから、もし20代で中国に行ったら、もっと言葉を覚えやすかったかもしれませんね」と矢野さんがちょっとした後悔を漏らした。
2006年9月、矢野さんは中国鳳凰衛視のトーク番組「魯豫有約(=ルー・ユーとデート)」にゲスト出演。独特な雰囲気と面白いトークのおかげで、大きな反響を呼んだ。そして、2006年11月から、矢野さんはテレビ局のバラエティー番組の司会者に選ばれ、中国湖南衛視の名番組である「天天向上」「快楽大本営」のレギュラー司会者などを務めた。最初、中国での仕事はドラマの「悪役」ばかりであったのが、バラエティー番組に出演してから矢野さんのイメージが一新され、「悪役を演じる人は実に面白い日本人だ!」と人々は矢野さんがもたらす「ギャップ」を喜んだ。司会者の仕事を通して、矢野さんは中国語の表現力を磨いてきた。さらに、中国の若者たちからも人気を得た。
「司会者の仕事は楽しかった。僕は大阪人なので、中国にノリが合うみたい。興味深いことで、芸能界に限らず、中国でビジネスに成功する日本人、頑張っている日本人の中には関西人が多いと思う。細かいことは気にしない、親切で誰とも友達になれるところ、そういう関西人の性格は中国人と似ているんじゃないですかね」と言う。
●現在の日中関係は普通にいい
この20年間、日中関係は波乱万丈であった。矢野さんは中国で仕事をする日本人の一人として、つらい時期があったかもしれないが、それについて、こう語った。「過去のことについて、僕の基本姿勢は、振りかえたくない。いつでも前向きに、今後のことを語りましょう」。さらに、「現在の日中関係は良い。日本で生活していると、旅行に来る中国人がだんだん増えている。身近な人たち、一緒に生活する仲間たちだと思います。これからも両方のことを理解し、テレビなどを通していろんなカタチで中国の魅力を日本人に伝えていきたいです。日本の人口が少なくなって、外国人を受け入れる姿勢が必要です。外国人は日本を助けてくれる人たちなので、外国人を大事にしなければならない。日本は、グローバルな国になってほしいですね」と語った。
矢野さんにとって、長年にわたって住んでいる北京は親しい場所で、まさに故郷のよう。中国に行くと、ポジティブで元気で、オープンな人たちに囲まれて、気持ちがわくわくするという。
●2人目の矢野浩二が出てほしい
現在、中国版ツイッターとも称される「weibo(ウェイボー)」を使って情報を発信しようという日本のスターが増えている。彼らは中国市場を重視する傾向が見られる。
それについて、矢野さんが助言した。「どんな有名な人でも、中国に行きたいなら、中国語を勉強した方がいい。中国語ができないと、できることが限られる。また、実際に中国で生活することが大事で、中国の生活に触れたり、友達を作ったり、1カ月でもいい。不可能じゃないでしょう。それぐらいしないといつまでたっても『ゲスト』『お客さま』です。中国人にとって、私はお客ではなく、むしろ『内の人』です。これから、2人目の矢野浩二が出てほしい。特に若い役者に期待しています」。
20年近く中国で芸能活動をしてきた。仕事の幅をどんどん広げ、中国の各年齢層の人が矢野浩二という日本人を好きになった。
ネットの発達のおかげで、日中両国の芸能情報は簡単に相手国に伝えられるようになっている。矢野さんは「日中芸能界の協力関係をもっと深めていきたいです。中国では意外に面白いドラマが結構ありますよ。特に社会問題を描くドラマを日本で放送できたら、日本人には今の中国社会をすごく勉強になると思います。日本と中国の間、僕しかできない役がある。そういう意味でラッキーですね。20年近く中国で積み重ねた経験をこれから、もっともっと生かしたいと思います」と、将来の日中両国の仕事について、自信満々に語った。
日中両国を頻繫に行き来して、日本人と中国人の両方の役をできる俳優は多くない。ある意味で、矢野さん一人しかいない。日本と中国の間に唯一無二の矢野浩二だと言える。
いつも自信にあふれて、俳優としてのスタンスを貫いて、日本人と中国人の長所を身につけ、日中相互理解に尽力している。これからも、このような矢野浩二さんの活躍ぶりに注目していきたい。
日中両国の間にいる中国人・日本人、自分の役割は何でしょうか。「誇れるもの」は何でしょうか。さらに自分しかできないことを見つけられるでしょうか。矢野さんの取材を通して、それらの質問を考えずにいられなくなった。
●矢野浩二さんの出演情報
1、2018年4月からテレビ朝日「警視庁・捜査一課長」シーズン3で武藤広樹役
2、2019年春からParavi「SICK’S 覇乃抄」で陳部長役
3、2019年1月15日から、NHKが初めて取り組むインターネット中国語放送「華語視界(かごしかい)」のMCを担当
4、NHK Eテレ「テレビで中国語」に月1レギュラー(第1週目)で出演
■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。Facebookはこちら「黄文葦の日中楽話」の登録はこちらから
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