<コラム>究極コラボ!蘭州牛肉麺が抗日ドラマに

岩田宇伯    2019年7月9日(火) 11時40分

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何かおもしろそうな新作抗日ドラマはないかな?と中国の動画サイトを漁っていたら、『一碗滄桑』なるドラマが急上昇中であった。

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●みんな大好き蘭州牛肉麺

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中国バックパッカー、駐在者にはおなじみであった蘭州牛肉面。基本、清真菜(イスラム食)なので、さっぱりとした口当たりで胸やけもしないため、中国旅行の際は筆者もよく利用する。ここ数年、日本へも中国から数多くの本格的専門店が進出、西川口、池袋駅北口といったエスニックタウンはもちろん、神田書店街の一角にも蘭州ラーメン専門店がオープンするなど、一般のグルメ好きにも認知されてきている。筆者の居住エリアから近い名古屋市中区新栄のエスニックタウンにも専門店が登場。また、新栄エリアの中国東北料理店でも多くの店が牛肉麺をメニューに掲載している。(画像1、2)

ついには、期間限定ではあったが、「麺職人」、「カップヌードル」といった有名ブランドからも蘭州牛肉麺味が登場ということで、ここへきて、一気にブレイクした印象がある。

●なぜ蘭州牛肉麺!?

何かおもしろそうな新作抗日ドラマはないかな?と中国の動画サイトを漁っていたら、『一碗滄桑』なるドラマが急上昇中であった。あまり抗日ドラマらしくないタイトルだが、説明文に「抗戦」とあるので早速第1話を鑑賞してみたのだ。ところが、オープニング映像を観て思い切りズッコケた(笑)。蘭州ラーメンを巡る戦争ドラマのようだ、クレジットには蘭州市政府の名前まである。(画像3)

たしかに、蘭州からスタートした牛肉麺は、いまや中国全土に広がる勢いの人気食。それに目をつけ、さらなるビジネスを生み出すことは素晴らしいことなのだが、よりによって抗日ドラマに仕立てなくても、と思ってしまう、いったい制作陣やスポンサーにはどのような思惑があったのだろうか?

2016年には『新牛肉麺的故事』というタイトルの現代ドラマが地元蘭州で放映。こちらはシットコム形式で1話20分ほどのミニドラマ。上海から蘭州にUターンした若者が起業する話をベースとしたコメディだ。もちろん起業のネタは蘭州ラーメン。(画像4)

●辛亥革命からスタート

ネタバレになりそうなので、あまり多くは書かないが、この『一碗滄桑』、スタートは辛亥革命で荒れる清代末期からスタート。孫文の同盟会蘭州支部と清国政府蘭州総督との戦いを描く。戦いといっても同盟会側は逃げ回っているばかりで、同盟会の息のかかった蘭州陸軍も総督により解散させられてしまい、何の盛り上がりもなく辛亥編が終わる。(画像5)

肝心の蘭州ラーメンはというと、主人公が総督府お抱えの蘭州ラーメン職人ということだけ。なので偉い総督も毎回ラーメン、ついでに同盟会も匪賊も蘭州ラーメンばかり食べているという、藤子不二雄のマンガに出てくる小池さんをしのぐラーメン好きばかり登場するドラマだ。

後半は抗日編、蘭州を逃れた辛亥編主人公の子が大人になり、上海とおぼしき架空の都市で、これまた蘭州ラーメン職人となり、共産党、軍統、汪精衛政府、日本軍が絡んでくるという話。後半の抗日編でも主人公は戦いの蚊帳の外、ラーメン職人に徹するが、最後は唐突に新四軍に入隊するという、これまた、盛り上がりも勝利もなきエンディングとなる。残念なのは日本軍が寿司ロールばかり食べていることだ。せっかくなので日本軍が蘭州ラーメンの味に唸るシーンを観たかった。(画像6)

●久々の脱力系作品

この『一碗滄桑』、今は亡き南京軍区文工団でメガホンをとっていた人が監督しているが、この監督、文工団に所属していたころから意味不明のトンデモ作品をリリースしている要注意人物。いちばんヒドかったのは、宋代以来隔絶された山奥の村が舞台の抗日ドラマ『玉海棠』、三国志の古代兵士VS日本軍という狂ったバトルが観られるという伝説の抗日ドラマだ。(画像7)

こういったトンデモ作品でも、最後主人公たちが勝利すればカタルシスを得られ、途中,ズッコケまくっても、ある程度満足するのだが、この『一碗滄桑』には何もない、ほんとうに何もない(笑)。トンデモ作品とは別の意味の脱力感しか得られなかった。筆者は多数の抗日ドラマを鑑賞してきたが、ここまで潔いドラマはなかなかないため、正直どうやってオススメしようか、言葉を選ぶのに考え込んでしまう超カルト作品である。

しかしながら、読者のあなたがB級中国マニアならば、是非押さえておく作品であるのは確実だ。新栄で蘭州ラーメンを食べつつ、そんなことを思った。

■筆者プロフィール:岩田宇伯

1963年生まれ。景徳鎮と姉妹都市の愛知県瀬戸市在住。前職は社内SE、IT企画、IT基盤の整備を長年にわたり担当。中国出張中に出会った抗日ドラマの魅力にハマり、我流の中国語学習の教材として抗日作品をはじめとする中国ドラマを鑑賞。趣味としてブログを数年書き溜めた結果、出版社の目に留まり『中国抗日ドラマ読本』を上梓。なぜか日本よりも中国で話題となり本人も困惑。ブログ、ツイッターで中国ドラマやその周辺に関する情報を発信中。

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