武 小燕 2019年7月20日(土) 12時20分
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中国の学校は基本的に知育中心だが、日本の学校は生活共同体の機能が働いています。向上心を重んじ、優秀さを奨励する中国の学校教育、平等を重んじ、協調性を奨励する日本の学校教育、それぞれの課題があります。写真は日本の小学校の運動会(資料写真)。
先日、小学校1年生になった娘の授業見学をした際に、教室の壁に貼られていた担当係の写真から、娘が「全員あそびががり」を担当していることを知りました。そのことをSNSで書いたら、中国の友達から「偉いね。担当係になったなんて、見込まれているだろう!」と褒められました。私は慌てて解釈しました。「違うの。日本の小学校では誰でも何かを担当するのよ」と。
そういえば、確かに中国の学校では、「〇〇係」というのは、全員ではなく、選ばれた子が担当することがほとんどです。勉強のできる人は「学習係」となって、宿題集めや配布を担当します。運動のできる人は「体育係」となって、運動会のひっぱり役になります。歌や絵の得意な人は「文芸係」となって、合唱を仕切ったり学芸祭の主役を務めたりします。考えてみれば、中国の学校教育はいたるところに選抜が潜んでいます。成績はもちろん、様々な教科外活動においても、その分野の得意な子が褒められ、認められ、リーダー格に指名され、他の子の模範となります。
それと違って、日本の学校教育は集団教育の趣旨が色濃く反映されています。学校で大事にされているのは「みんな」で仲良し、壁に掲示されているのは「みんな」の作品、係担当は「みんな」で分担する。日本の小学校は生活共同体であり、競う場ではない。
娘が通う小学校の運動会を見学した際の衝撃が忘れられません。この小学校は学年ごとに1学級しかない小規模の学校です。全校の児童が紅白の2組に分けられ、リレー、棒の奪取、玉入れ、大玉送りなどの競技に取り組んでいました。個人の力を発揮する場面がいっぱいありましたが、それは最終的にすべて集団の成績となり、各項目では白組または赤組の判定しかありませんでした。個人の成績を評価する競技が一つもなかったのです!日本の学校では集団教育を重んずることをある程度知っているつもりだったが、ここまで徹底され、個人の表彰が一つもないとは思いませんでした。また、競技というよりは遊戯の要素がたくさんあって、突然流れてきた「ウィー・ウィル・ロック・ユー」の音楽に小1小2の子どもたちがいっせいにおしりをふり回しながら踊り出したところは、保護者の笑いを誘いました。
学校や教室の掲示物も異なります。日本では「みんなで仲良く」の合言葉や学級全員の似顔絵、育てている植物や飼っている虫が教室を飾ります。それに対して中国では「日々よく勉強せよ」「失敗が成功の母」などの格言や有名人の紹介、よくできる子の作品、歴史や地理に関する豆知識が教室や廊下を飾ります。
中国の学校は基本的に知育中心ですが、日本の学校は生活共同体の機能が働いています。向上心を重んじ、優秀さを奨励する中国の学校教育、平等を重んじ、協調性を奨励する日本の学校教育、それぞれの課題があります。中国の学校では落ちこぼれの子どもに対してどうフォローしているのでしょうか。日本の学校では個性の強い子どもに対してどのように集団との調和を図ろうとしているのでしょうか。国民教育の基本をなす学校教育の違いは、日中両国の社会の違いを反映しているように見えます。
■筆者プロフィール:武 小燕
中国出身、愛知県在住。中国の大学で日本語を学んだ後、日系企業に入社。2002年に日本留学し、2011年に名古屋大学で博士号(教育学)を取得。単著『改革開放後中国の愛国主義教育:社会の近代化と徳育の機能をめぐって』、共著『変容する中華世界の教育とアイデンティティ』、『歴史教育の比較史』、研究報告書『多文化世帯に生きる子どもたちの言語習得に関する実証研究:愛知県における中国系世帯とブラジル系世帯の比較を通して』などがある。現在名古屋付近の大学で研究と教育に取り組んでいる。一児の母として多文化教育を実践中。教育、子育て、社会文化について幅広く関心をもっている。
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