黄 文葦 2019年8月13日(火) 23時30分
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7月30日から8月4日まで、会社の社員旅行でアラブ首長国連邦のアブダビとドバイに滞在していた。私には初めての中東の旅であった。
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多くの仲間と一緒に旅に出ることで、つい、人は何のために旅をするのか、と考え始めた。団体旅行だが、フリーの時間もたっぷりあった。皆の趣味や関心事などが違っているので、旅行の体験がさまざまになる。それも面白いこと。ある人は刺激的な体験をしたいので、スカイダイビングをし、また激しい砂漠のドライブを楽しんだり、ラクダに乗ったりしていた。ある人は歴史に関心を抱いているので、博物館と古い町を巡っていた。ショッピングが好きな人はもっぱら壮大なドバイモールを満喫する。
私は、旅で「人」という風景を観察するのは好きである。
ドバイの第一印象と言えば、空港の効率がよかったこと。入国手続きは簡単で、入国カード・税関申告書など書かなかった。パスワードをホワイトカラーのカンドゥーラ衣装の入国審査官に渡して、ハンコを押してもらうだけで入国できた。翌日、現地のガイドさんが面白いエピソードを披露してくれた。ドバイ空港の効率は良かったが、入国審査官がハンコを押す動作がのんきすぎるという。なぜなら、入国審査官が金の指輪とブランド腕時計を人に見せたいから。それは冗談半分だと思うのが、アラブ世界の裕福さとユーモアな個性が示されているようである。
たったの数日で、はじめてアラブ世界のサービスを体験して、面白いところを発見し、日本のサービスとの相違に気づいた。
日本のサービスはマニュアル通りにお客さんに対応する。余計な話をしないらしい。今回の旅で温かい言葉をかけられたことが多い。サービス側とお客さんが親しくなりやすいと感じた。
観光地にはいろんな肌の色のスタッフがいる。彼らは基本的に英語を話す。ただし、中国人観光客が来たら、すぐ笑顔で「你好」「謝謝」「再見」など中国語の言葉を出す。もちろん、日本人観光客が来たら、「こんにちは」と親切に挨拶する。いずれも柔軟な対応が見られる。
ホテルのスタッフが部屋の掃除に来る時、お客さんの私に挨拶した後、「あなたの部屋はきれいですね」とさり気なく褒めてくださった。
タクシーに乗る際、私は年配の運転手とちょっと喋った。「日本からきた」と伝えたら、運転手が「私はフィリピン人です。10年前からドバイで仕事をしています。まだ日本に行ったことがないですが、日本が大好きですよ」と話してくれた。
アブダビのスターバックスでコーヒーを注文したら、スタッフに「どちらからですか」と聞かれた。「日本からです」と伝えたら、相手がペンを持って紙カップに漫画を書いて、「じゃ、これ、あげます」とカップ渡してくれた。気持ちが暖かくなった。
世界一のショッピングセンターであるドバイモールで面白い日本料理と中華料理を発見した。回転寿司のスタッフの「制服」はあたかも「侍」のまとい。すべての寿司には蓋がつけられている。「たぬき」という名の寿司屋さんでは、メニューにホット寿司を見つけ、ちょっとびっくりした。なかなか大胆なアイデアだろう。西洋風のお兄さんが浴衣姿で客を案内する。「新上海」という名の中華料理店にはレトロな「老上海」の雰囲気が漂う。牛肉ラーメンは美味しかった。その店では多くの客が中華料理の麺をフォークで食べる。
ドバイモールでは、物も人も、ファッションを演出している。男性は全身がホワイトカラーになるカンドゥーラを被る。そのカンドゥーラはまるで白い砂丘の皮膚のように純潔で柔らかい。女性は全身がブラックカラーのアバヤを着る。単純な黒と白の衣装だが、ファッションのセンスが垣間見える。女性はハイヒールのお洒落な靴を履く。多くの人のアバヤには刺繡飾りがある。アバヤ姿の女性がブランドバッグを持って、上品な佇まいを見せる。何度かドバイで見たLVバッグは格別にきれい。俗っぽさが全然ない。
ドバイモールでは、日本には珍しいアメリカンブランドであるヴィクトリアズ・シークレットの女性下着専門店にたいへん人気が集まっているらしい。なまめかしいイメージを持たれるブランド。一見、その肌着とアバヤの組み合わせには違和感が生ずるのではないか、と思った。アラブ女性は伝統とアバンギャルドの心を両方持っているのだろう。しかも、ドバイの人々の日常には、ブランド品が浸透しているようである。ドバイの旅で、ブランド品の力を実感した。高貴かつしなやかな感覚を覚えた。
アブダビとドバイでは、いつでもどこでもグローバルな風景が見られる。旅行で私はいつもカフェと本屋を訪れる。今回、アブダビのカフェにてカンドゥーラ姿のアラブ男性が夏のベストを着る西洋風女性と一緒にコーヒーを飲んでいるのを見かけた。街では肌の色それぞれの大勢のカップルが肩をそろえて歩く。日本ではあんまり見られない風景であった。
世界一高い超高層ビルであるブルジュ・ハリファの入口に、建築会社の二枚の巨大な宣伝看板が壁に掛けられている。いろんな肌の色の人がいろんな民族衣装を纏うメンバーの集合写真である。皆が自信満々に笑顔を見せる。その中には女性もいる。いろんな国の人々の知恵を出し合うことで、「世界一」を成し遂げたわけである。砂漠と海の間に生きる人たちには、忍耐力と包容力がなくてはならない。
■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。Facebookはこちら「黄文葦の日中楽話」の登録はこちらから
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