黄 文葦 2019年11月19日(火) 23時20分
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10月下旬に、中国上海にある華東理工大学の招待で、私は「思い出の地」上海へ行った。また、上海の友人の案内で、上海アートスポットの新定番「M50」のギャラリーを見学した。
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子供の時、私は上海に行ったことがない。しかし、幼い頃の記憶には「上海」があった。昔、父が仕事の関係で頻繁に上海へ行っていた。父が家に戻る際、いつも上海のお土産を持ち帰ってきた。例えば有名な飴である「大白兎奶糖」。1918年創業の冠生園が1959年から発売する中国を代表するキャンディーで、正真正銘の中華ブランド、今でも売られている。また、親のおかげで、子供の頃私はよく上海製のワンピースを着ていた。周りの人にうらやましがられて自信がついた。そして、今でも私の服はほとんどワンピース。70年代・80年代、中国人にとって「上海製」は一番信頼できる中国製であった。中国の多くの地域がずっと上海の後塵を拝する。
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10月下旬に、中国上海にある華東理工大学の招待で、私は「思い出の地」上海へ行った。25日、華東理工大学人文科学研究院にて開催された座談会に参加。大学院の博士課程の学生たち及び日中両国マスコミの関係者と「日中関係とマスコミ・SNS」など課題を議論し合った。とても有意義な時間であった。
私は現在中国のネットでたいへん活躍されている「綱紅」(ワンホン)について学生たちと意見交換した。「綱紅」とは「ネット有名人」である。「綱」とは、ネット。この「紅」は色の意味ではなく人気が高くときめく様子を示すもの。現在中国の「綱紅」は、大体インターネットの消費者発信型メディア、インフルエンサーである。つまり、商品宣伝の役割を果たす。企業に利用される場合は多く、消費者に大きな影響を与える。私はそれを「ビジネス綱紅」と名付けたい。彼らは主に動画を通して、みずからの経験・体験を例に商品をアピールする。インフルエンサーたちがネット上で多くのフォロワーを集めて有名になり、影響力がふくらんでいく。「綱紅経済力」とも言える。
私は「ビジネス綱紅」のほかに、「文化綱紅」「思想綱紅」が中国で誕生してほしいと主張した。商品情報を提供するだけではなく、文化・思想・アイデアを通俗的なカタチでユーザーに発信できたらいい。現在中国では、誰でもビジネスに興味津々らしい。WeChatの「モーメンツ」でも、大勢の人がセールスマンのように毎日、いろんな商品を紹介することによって、利益を得る。だが、文化・思想を「売る」オピニオンリーダーが不在である。経済力は活発化に見えるが、文化力はまだまだ弱そうだ。経済成長の後、文化成長を遂げてほしい。この話に、学生たちが賛成してくれた。
因みに、日本では、「綱紅」という概念がなさそうだが、「ネット有名人」が確かに存在する。私は日本の有料メルマガを紹介した。実業家・堀江貴文さんのメルマガを例として話した。堀江さんは先端的なアイデアの持ち主で、主張することがしばしば世の中で議論されるとは言え、世の中の最新動態に関して、鋭く理性的に独特な見解を発信続けている。しかも有料メルマガでは質問コーナーが設けられ、読者たちとコミュニケーションをとっている。読者たちの質問に簡潔かつユーモアに答えている。
思想には大きな価値がある。これから物を消費する時代から思想・芸術を消費する時代へ進むはず。大衆がマスコミの言う通りあるいは人の話を単に受け売りするのではなく、個々の誇りと価値観を持って、物事に対して自ら判断を出す。かつて冗談半分で私は中国の友人たちに話したことだが、「30年間、中国では何でも変わったというイメージだが、確かに変わらないものが一つだけ、それは『新聞聯播』というテレビニュース番組です」。中国中央テレビが、毎日19時00分から19時30分に、数十年間にわたって、似ているようなカタチで似ているような内容を放送している。
話を座談会に戻す。華東理工大学のエリート学生たちが日本について、質問を出したり、見解を述べたりしていた。ある学生が日本のマルクス研究の実態を把握しているらしい。「資本論」が日本で売られていること、社会福祉制度からみる日本社会の「社会主義特性」などにたいへん興味を抱いているようである。こんなところまで日本を研究するのか、私は感銘を受けた。彼らがこれから中国の「思想綱紅」になることを期待せずにいられない。「思想」という言葉は昔、中国では偉い人物のためのみ使われるもので、例えば、「毛沢東思想」。現在、ネットとSNSの活発化につれて、私たちが自分の思想を創り出すことは珍しくはないだろう。
また、上海の友人の案内で、上海アートスポットの新定番「M50」のギャラリーを見学した。国内外のギャラリーやアーティストのアトリエが集結している。ほとんどのギャラリーが無料開放。ファションブランドの店も並んでいる。目と心でごちそうした。日本の友達に勧めたい。相変わらず、文化の「上海製」でも中国の先頭に立つだろう、さすが上海!と感服した。上海の「日本人街」である古北新区も見学した。高層ビルの中、多くの日系企業が活躍している。商店街では、日本食品が目立つ。ブランド品の店も多数ある。広い公園には緑があふれる。洋風の高層マンションはとても素敵に見える。値段は日本のマンションより高いだろう。「日本人街」で、日本語をしゃべっている家族連れの日本人をよく見かけた。日本人が上海の国際化に貢献している、と思った。
野望であるかもしれないが、私は自分の日本語の有料メルマガを計画したいと思っている。勿論、もっと思想と日本語を磨かなければならない。幸いなことに、中国と日本、二つの国は私の思想の源である。
■筆者プロフィール:黄 文葦
在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。Facebookはこちら「黄文葦の日中楽話」の登録はこちらから
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