Record China 2013年8月27日(火) 15時10分
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26日、華字紙・中文導報の楊文凱編集長は「中日対立の長期化:企業はどこへ進むのか?」と題した記事を中国のブログサイトに掲載した。写真は北京の日本車に貼られた尖閣防衛ステッカー。
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2013年8月26日、華字紙・中文導報の楊文凱(ヤン・ウェンカイ)編集長は「中日対立の長期化:企業はどこへ進むのか?」と題した記事を中国のブログサイトに掲載した。以下はその概要。
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昨年9月11日の日本政府による尖閣諸島国有化以来、日中関係は重症を負い、回復の兆しはいまだ見られない。この1年余り、両国の政治的関係は氷河期へと落ち込み、経済協力、貿易、観光など各分野が後退し、活力を失っている。
尖閣諸島の国有化は両国民の感情を傷つけただけでなく、両国の経済関係により深い影響を与えている。日中対立の長期化は、中国を戦略拠点に位置づける日本企業およびその経営活動にとって致命傷となり、日本企業の中国撤退を促し、思いを事実に変え、議事日程にのせるものとなっている。
1.調査からわかった日本企業が感じる恐れ
調査によると、中国進出企業の8割近くが反日ムードによる影響を今でも受けていると答えている。業績が昨年9月11日以前の水準まで回復していない企業は3割強に上る。とはいえ企業の国際戦略において中国市場は日々重要度を増しており、8割以上の企業が今後も引き続き中国市場を重視すると答えている。
尖閣諸島の国有化以後、中国各地では激しい反日運動が起き、日本製品ボイコットがその重要な手段となった。同調査によると、中国での企業活動に影響があったと答えた企業は7割近くに上る。具体的に見ると、最も多い回答が「売上高減少」で全体の72%、「市場開拓の停滞」が41%、「国家機関や国有企業とのビジネスの難しさ」が24%となっている。
中国進出企業の最近の売上状況を見ると、国有化問題発生前の水準まで回復した企業は41.9%で、当時の水準を上回った企業も18.6%に上る。しかしながら、以前の水準まで回復していない企業も24.4%あり、とりわけ自動車、観光、小売業などの回復のスピードは鈍いものとなっている。昨年9、10月の中国における日本車の販売額は前年同期比30〜50%減であり、今春以降も上下動を繰り返す不安定なものとなっている。
調査に協力した中国進出企業の大多数が尖閣諸島問題の解決について慎重な態度を示している。「問題発生以上の状態まで回復する」と答えたのはわずか11%に過ぎず、「一時的に緩和する」と答えた企業が65%と多数を占め、「厳しい状況が続く」と答えた企業も約2割に上る。
中国は13億の人口を抱える戦略的市場であり、最大の販売拠点として、日本企業は依然として重視している。「中国での業務を拡大する」と答えた企業は3.2%、「業務拡大を検討中」が25.6%、「当初の計画通り業務展開し、変更はない」が59.2%。「中国事業縮小化に着手している」と答えた企業は1.6%にとどまり、「他の方針を検討中」が10.4%となっている。例を挙げると、新日鉄住金は自動車用鋼板の生産を主とする合弁企業を中国に設立する計画で、三井不動産も上海に大型ショッピング施設建設を計画中だ。日本企業が政治面やビジネス上のさまざまなリスクを乗り越え、中国での経営基盤強化に力を入れていることが見て取れる。
2013年上半期、日本企業による中国への直接投資額は前年同期比14.4%増えた。このことは、日本企業が中国市場を重視していることの現れだということができる。しかし、一方では「投資行為の停滞によるもの」との意見もある。尖閣問題による影響により中国への新規投資を控える動きがあるが、自動車関連産業においては中長期の投資プロジェクトの実施が求められている。
2.日本の対中貿易額が5年ぶりに減少
日本貿易振興機構(ジェトロ)が公表しているデータによれば、2013年上半期の日中間の貿易額は1472億7000万ドルで前年同期比10.8%減、2009年以来初の減少となった。日本の対中貿易赤字は約244億ドル、前年同期比1.4倍増で過去最高となった。
2013年上半期の中国向け輸出額は前年同期比16.7%減の614億3000万ドルで2年連続の減少。日本の対中輸出が低迷したことにより、この5年間で初めて米国が日本の最大の輸出相手国となった。日本の輸出総額に占める対中輸出額の割合は0.8ポイント減の17.2%。同18.3%の米国に追い抜かれた格好だ。
ジェトロの分析によれば、中国の内需停滞やインフラ設備投資の減少により、建設機械や半導体、自動車といった日本の主な輸出製品の中国向け輸出が低迷したことが、日中間の貿易額が減少した主な理由だ。中国経済を牽引してきた対外輸出が6月にマイナス成長となり、7月に貿易統計が公表されるや、読売新聞は「中国経済の減速が強まる」と報じ、朝日新聞が「中国の対外輸出が軟調」、毎日新聞も「中国の対外輸出減少は改革を阻むだろう」と報じている。日本経済新聞も「中国の景気はソフトランディングできるか微妙」、産経新聞も「中国経済の先行きに暗雲」と報じた。
このほか、日本の対中輸出が減少した理由として、中国における労働コストの上昇と日本円の下落という2つの要素が中国製品の日本における競争力を低下させ、労働密集型の産業に影響を及ぼし、日本の繊維メーカーの中には中国工場を撤退しベトナムやインドネシア進出を図る動きも出てきている。「中国紡績報」が報じたところによると、今年上半期、中国製繊維製品全体に占める日本への輸出品の割合は71.4%まで減少した。ちなみに割合が最も高かったのは2005年で、81.1%を占めていた。
3.「中国撤退」セミナーが日本企業に人気
日中両国の対立の長期化と中国経済の見通しの不透明さを見越して、日本の中小企業の中には事業の発展戦略を見直し、中国からの撤退を選択するものも少なくない。そうしたことから、中国から撤退するための手続きや税収などを解説するセミナーが人気を得ている。
神戸商工会議所は7月、「中国ビジネスリスクのとらえ方」「中国ビジネス戦略の見直し〜継続か撤退か」をテーマとしたセミナーを開催。70人超の受講者を集めた。中国の法制度に詳しい税理士の近藤充氏が講師を務め、昨秋以降、毎月セミナーを開催している。
昨年9月に尖閣問題が激化して以降、日本の経済団体や地方自治体は相次いで中国ビジネスリスクをテーマとしたセミナーを開いてきた。東京商工会議所が11月に行ったセミナーには100人もの企業経営者が出席。今年1月に大阪商工会議所が開いた同種のセミナーにも80人が参加した。神戸商工会議所が7月に行ったセミナーでアンケートをとったところ、中国での新事業を計画している企業は10%に満たなかった。日本の国際協力銀行が昨年11月に製造業を対象に行った海外事業に関する調査でも、6割の企業が「中国事業に対し、慎重な対応や再調整が求められる」と答えている。うち75%の企業が、事業を中国以外の国や地域に分散させる、いわゆる「チャイナプラスワン」が必要と回答した。
「中国への進出は難しく、撤退はなお難しい」は共通認識となっている。中小企業は舵取りの変更も容易だが、中国において戦略的な投資を行っている大企業にとっては細心な意思決定のもとに市場を守らねばならない。近年、日本企業のローカライズが注目を集めている。2011年4月にトヨタ中国法人の執行副総経理に董長征(ドン・チャンジョン)氏が中国人として初めて就任して以来、トヨタの中国における二大合弁会社の一つ、一汽トヨタは今年8月から、田聰明(ティエン・ツォンミン)氏を一汽トヨタ自動車販売有限公司の総経理に任命した。設立10年目にして初めて中国人がトップに就任したことになるこの人事は、トヨタが中国市場を最重要視し、ローカライズ戦略を進めてきたことによるものであり、トヨタによる人材ローカライズ戦略の典型例だ。
4.日本企業はいかにして中国市場で勝利をつかむか
あるマーケットアナリストによれば、両国関係が不穏で長期間にわたり対立する状況下では、中国進出企業の「勝ち組」と「負け組」の二極化がより加速するという。いかにして「勝ち組」を増やすのか?トヨタのように、生産から販売、管理、そして人事に至るまでローカライズすることが、越えなければならない高いハードルとなっている。
1980年代なかばからの20年間は、日本企業による中国進出は「製造」が主な事業であった。しかし2005年からは、人件費の高騰や人民元為替レートの上昇、輸出優遇政策の減少などにより、中国における生産コストは急激に上昇した。2010年以降になると、中国人の給与水準が大幅に増加し、国内市場が急速に拡大。中国は「製造工場」から「消費市場」へと変化し、日本企業の中国ビジネスの主軸は「販路拡大」へと方向転換した。
製造業が主流の時代には、日本企業はその技術と生産管理方式を中国での経営に導入し、中国人幹部や従業員は日本人の指導のもとで優秀な人材へと成長した。しかし今日のような販売が主流の時代では、中国市場で成功を収めるには、中国の市場を把握し販路に精通した現地の優秀なスタッフが欠かせない。中国進出企業がローカライズを進める過程においては改革の苦しみを伴うが、これは大事な一歩を踏み出すためには欠かせないことでもある。ユニクロや日産、ホンダなどの中国における発展の軌道を見れば、ローカライズこそが政治的リスクを避け、マーケットに身を投じるための最良の選択であることがわかるだろう。(翻訳・編集/NY)
●楊文凱(ヤン・ウェンカイ)
日本華字紙・中文導報編集長。上海の復旦大学中国語学科卒業。95年に来日。98年に中文導報入社。著書にコラム集「卒業10年」、社説集「天涯時論」、インタビュー集「人在旅途」など。
※本記事は著者の承諾を得て掲載したものです。
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