日本の伝統と現代を融合させた「宮崎駿」という巨匠―中国メディア

Record China    2013年9月6日(金) 14時10分

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5日、イタリア現地時間9月1日、ベネチアで現在上映中の作品「風立ちぬ」を最後に、宮崎駿監督の引退が発表された。写真は宮崎駿監督。

2013年9月5日、イタリア現地時間9月1日、ベネチアで現在上映中の作品「風立ちぬ」を最後に、宮崎駿監督(72歳)の引退が発表された。このニュースを聞いた映画ファンからは惜しむ声が上がっている。宮崎駿監督は、世界的に著名なアニメの巨匠であり、その作品の芸術性は日本の民族的な伝統文化と現代文明が絶妙に融合しており、ストーリーは美しい情感、希望や人間性を描きだし、世界中のアニメファンから賞賛されている。中国新聞社が伝えた。

■独特な主題表現と人物描写

宮崎駿監督の作品はお決まりのパターンで、困難な中での努力や不屈の闘志がテーマとして描かれているようにみえるが、宮崎作品の独特なところはすべての作品が描かれているストーリーの次元にとどまらず、夢、生きること、成長など深く考えさせられるなにかが含まれているところにある。

日本のほかの有名監督と比較すると、宮崎作品の最も顕著な特徴はさまざまな「精霊」のキャラクターだ。これらのキャラクターが一緒になって宮崎アニメの大きな特徴となっている。「精霊」キャラクターたちは人類と大自然のつながりであり、寡黙で、孤独で、センチメンタルな感じが画面を通して伝わってくる。たとえば「となりのトトロ」における「まっくろくろすけ」、「もののけ姫」の「木霊」は、臆病でいくじがなくびくびくしながら人に群がり、静かに欲望に満ちた現実世界を見つめるのだ。

実際、アジア諸国の多くの伝統文化には自然の精霊を崇拝し、万物の調和を追求する価値観が存在している。だが、現代文明が力を持つにつれ、こうした価値観を持つ人々も次第に現実に同化していった。宮崎監督はもしかしたら、こころから「自然」を信奉する最後のアニメ監督だったのかもしれない。こうした自然な発露の生きとし生けるものへの「平等な尊敬」が、宮崎作品全体の美しいフレームワークを構築し、異なる国や民族をも強くひきつけたのかもしれない。

独特な主題の表現以外に、宮崎アニメのキャラクターは米国式のスーパーヒーローではなく、どこにでもいるような普通の少年少女だ。こうした「普通のキャラクター」は性格が善良で単純、心がきれいで、多くの人の共感を引き出しやすい。「天空の城ラピュタ」の「シータ」や「となりのトトロ」にでてくる「メイ」と「サツキ」、「千と千尋の神隠し」の「千尋」などがこれにあたる。

■日本の伝統と現代が融合した宮崎作品

宮崎監督がこのような成功を収められたのは、独特な芸術性による所が大きいだろう。彼の作品には、グローバルな精神性があふれているだけでなく、独自の東洋的な視点が備わっている。もしかしたら、日本の伝統と現代文化が共存していることに影響されているのかもしれないが、宮崎作品のテーマの由来はバラエティーに富み、アニメキャラクターの設定も非常にこまやかだ。

宮崎アニメが表現する日本の「民族化」を美化している傾向を指摘する人がいる。確かに、彼は非常に日本の伝統的な民族モチーフのアニメカラーを使うことに長けている。ストーリー転換を通して、主人公の心理を表現する。たとえば、「千と千尋の神隠し」では千とほかの女の子が働くときに着ているのは赤い伝統的な民族衣装で、侍女たちも和服を着ており、観衆はストーリーの中に出てくる服装の色彩やシーン、小道具に日本の民俗や民族文化の特徴をはっきりと見出すだろう。

宮崎作品はアジア人の静かな生活にある美しい瞬間を正確にとらえ続けてきた。「となりのトトロ」のストーリーの背景には大自然の息吹にあふれた日本の田舎の風景が描かれている。みずみずしい青い空、そこが見通せるほど透き通った小川、その美しさは人々が理想に描くこの世のものとは思えない桃源郷だ。しかも「トトロ」のストーリーが見る人の心に親しみを感じさせるのは、子どものころに必ず経験したことだからだ。宮崎監督はこうしたおぼろげな記憶を「トトロ」と出合うものがたりとすることで、詩のような言葉、情景で生き生きとした夢のような精神世界を描き出した。

宮崎アニメには、民族と多様な文化の融合が満ちている。作品によく出てくる島国の地形、樹木が生い茂る山々、様式がはっきりしている木造建築などは、すべて日本的なものだ。

まねできないといわれる宮崎アニメの造形美の理由には、作品に出てくる建築の多くが純粋な日本風ではないことがあるだろう。作品に出てくる建築物の多くは純粋な日本風の建築物ではない。「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋、「ハウルの動く城」で描かれた城もほとんどが日本特有の民族文化と世界の著名な建築物が融合した産物だ。

宮崎駿監督はイタリア文化をこよなく愛していて、若いころには何度もヨーロッパを訪れ、興味を感じた現地の建築物をデッサンして記録していたものが素材になっているといわれている。

自然を崇拝しているといえども、現代文明の美しさも宮崎作品には不可欠の要素だ。「千と千尋の神隠し」で描かれる美しく幻想的な列車は現実に、実際存在するものだ。

また、宮崎アニメは日本だけをストーリーの背景にしているのではない。物語自体やストーリーの中に描かれている民俗や習慣はよくどこの国や民族を描いているのかわからないことがある。もしかしたら宮崎監督の多元的な審美眼を表現したものなのかもしれない。

■真善美に対する発揚

宮崎監督には多くのファンがついているがその大きな原因の一つは彼が作品一つ一つに「真善美」を発揚していることにあるだろう。宮崎作品に中の世界は非常に単純だ。キャラクターからみると、最も重要なことは「金や名誉ではなく、真摯に愛に生きる人」だ。もしくは宮崎作品の審美眼が求めるのは「愛だけ」で、アニメ作品に描かれている背景の環境から民族の習慣までもが終始美を展開しているシーンになっている。だが、彼が追求しているより大きなものは心の中の「真」と「美」で、作品に描かれる醜い老婆、巫女はその善良さによって美しく見え、男装した村娘には素朴な美しさが宿っている。

宮崎アニメ成功の理由は多面的で、精緻なアニメカラー、広範なテーマ、美しく思いがけない着想、そして作者は巧妙なやり方で作品に文化精神への反省、婉曲的に美しく幻想的なシーンを観客に提供する。

宮崎作品はアニメ映画に対する狭隘な認識を変革し、アニメ映画という特性を十分に生かして不思議な創造空間を生み出した。そして同時に作品に深い思想テーマを与えた。これは彼の作品に鑑賞だけでなく、人間的な深みも備えさせた。新世紀の中国のアニメ関係者は、宮崎監督から学び、インスピレーションを得ることもできるだろう。(提供/人民網日本語版・翻訳/EW・編集/武藤)

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