<直言!日本と世界の未来>米・イランの衝突を憂う=双方は自制を!―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年1月5日(日) 6時30分

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米軍がイラクのバグダッドで、イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官らを空爆によって殺害したという。偶発的な衝突によってリスクが高まる恐れがある。写真は米トランプ大統領とイラン・ロウハニ大統領。

新年早々衝撃的なニュースが飛び込んできた。米軍がイラクの首都バグダッドで、イランの精鋭部隊・革命防衛隊の実力者ソレイマニ司令官らを空爆によって殺害したという。米国は「防衛措置」だと主張するが、イラン側は報復を予告。両国間の緊張がさらに高まり、偶発的な衝突によって制御不能の混乱に陥る恐れがある。

2018年5月にイラン核合意から離脱したのに続く、トランプ大統領による単独行動主義的な動きといえる。「米国民を守るため」と説明する今回の攻撃の結果、米イラン間の仲介を模索する欧州や日本の外交は一段と難しくなろう。

イラクでは数カ月前から、米軍がロケット弾などによる攻撃を受けてきた。米国は「イランが主導している」として抗議していたが、昨年12月27日にイラク北部のキルクーク近郊であった攻撃で米国の民間人1人が死亡し、米軍兵士4人が負傷したことで、一気に緊張が高まったようだ。米側はイスラム教シーア派の武装組織に報復の空爆を行い、31日にはこの組織のメンバーらがバグダッドの米大使館の壁に放火したり、投石したりした。ソレイマニ司令官の殺害も、この延長線上にあるとみられる。

元々、米国とイランの緊張を高めたのは、国際的な核合意から一方的に離脱したトランプ米大統領だと考える。イラン産原油の禁輸などの制裁を復活させ、軍事的な圧力も強めてきた。11月の大統領選を控え「成果」を示したい狙いもあるかもしれない。

イランの指導部は司令官殺害を受け、米国に報復措置をとる構えだ。トランプ政権は米兵3500人程度を中東地域に追加派遣する方針だと米メディアが伝えたが、双方とも自制してもらいたい。国連のグテレス事務総長は米軍によるソレイマニ司令官殺害に関して「新たな湾岸戦争に世界は耐えられない」との声明を発表。米国とイランに平和的な解決を呼びかけ、「指導者は最大限の自制が必要」と訴えた。

各種市場への悪影響も広がっている。原油価格や金相場が急騰、米国ダウ平均株価が大幅に下落した。中東情勢悪化への警戒感から、投資家心理が弱気に転じており、週明けの東証株価にも波及しそうだ。

理由はともあれ軍事衝突だけは回避すべきである。米国、イラン双方に精通する日本がこういう時こそ仲介役を果たせないだろうか。今こそ安倍晋三首相の出番と考える。

<直言篇107>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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