木口 政樹 2020年5月20日(水) 23時20分
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今韓国は、新型コロナよりも元慰安婦の李容洙ハルモニの爆弾発言で大騒ぎだ。写真は日本大使館前の慰安婦像。
今韓国は、コロナよりも李容洙(イ・ヨンス)ハルモニの爆弾発言で大騒ぎだ。ハルモニはご存じの通り、韓国語で「おばあさん」の意。
韓国メディアによると、元慰安婦の李容洙ハルモニは5月7日、韓国南東部の大邱市で記者会見し、支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)が集めた資金が「どこに使われたか分からない」、「自分たちは騙されるだけ騙されてきた、利用するだけ利用されてきた」、「義援金や基金などが集まれば被害者に使うべきなのに被害者に使ったことはない」と述べ、不透明な会計処理を指摘。ソウルの日本大使館付近で毎週水曜に開かれている同団体主催の抗議集会について、「憎悪だけを教えている。なくすべきだ」と訴え波紋を広げている。抗議集会には今後参加しない考えだ。
正義連代表を務め、4月15日の総選挙で与党の比例代表として当選した尹美香(ユン・ミヒャン)氏に関しても、「国会議員になってはならない人だ。慰安婦問題を解決すべきだ」と批判した。
尹氏は8日、自身のフェイスブックで「正義連の活動と会計は徹底して管理し、監査も受け報告している」と反論。抗議集会は「平和、人権教育を体験する現場になっている」と重要性を強調しているが、尹氏の不正はこれからまだまだ出てきそうだ。「正義記憶連帯」という名前をもつ団体の代表なら、本人がまず正義漢であってほしいところだが。
すでに報道されている内容の中で主なものを紹介すると、「正義連は、国税庁に極めて杜撰な会計報告を行い、その内容には数々の疑問があるが支出の詳細を明らかにしようとしていない」「国庫補助金を受け取りながら、そのうちの多くの金額を申告せず隠している」「受け取った寄付金のうち慰安婦に支給されたのはごく一部分に過ぎない」「正義連前理事長の尹美香氏は、個人口座で寄付を受け取り、それを娘の米国留学資金に使った疑いがある」「現代重工業から受けた寄付金で住居を購入し、慰安婦に提供することなく正義連の活動家がペンション代わりに使っており、尹元理事長の父親を管理人として住まわせ、管理費まで支払っていたが李氏の告発後、買値より大幅に安い金額で売却した」などなどだ。
尹美香の不正がこれから検察の手で白日のもとに晒されることになると思う。それはゆっくり、検察にまかせることにして、今回ここで筆者は、李容洙ハルモニの発言を受けて考えさせられたことをいくつかご紹介しようと思う。
日本もそうかと思うけど、何かを支援する団体というものがいくつも存在する。こちらでは慰安婦を支援する団体というものが数十、数百も存在するという記事を見たことがある(実際何個あるか筆者は掴んでいないけど)。そうした団体の中で超有名なのが上に出てきている「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」である。以前は、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)と言っていた。
その名も「正義記憶連帯」である。凄まじい名前だ。もちろんその意味するところは、日本軍による性奴隷という卑怯な歴史を解決するために自分たちは正義の名のもとに断罪するそういう団体なのだ、という意味だ。この団体の親分(尹美香)が、今回慰安婦のおばあちゃんたちを騙すような格好で不正をやっていたということだから、あきれて開いた口が塞がらないとは、こういう時のために用意されている慣用句であろう。
問題は、ユン代表が慰安婦ハルモニらに送られてくる支援金などを自分のために使っていたという部分ではなく(そんなのはどうでもよい。検察がこれからじっくり調べてくれるであろう)、こういう団体というのは、そもそも、慰安婦問題がなくなってしまえば存在理由(レーゾンデートル)がなくなり、解散に追い込まれ、メシのタネがなくなってしまうため、いつまでも問題の解決を遅らせようとする意志を、本来的に持つ団体だという点。つまりこういう団体があるからこそ、慰安婦ハルモニらをそそのかして「10億円なんていらない」と言うようにさせたりする。すると政府は、慰安婦ハルモニたち(当事者)の意見が「10億円なんていらない」というのだから、2015年の合意は御破算にせざるをえないと、なにか政府の責任ではなく、当事者(慰安婦ハルモニ)の意見を尊重してそうせざるをえないんです、みたいな態度で出てくることになり、そうすると国民も政府が言っていることだからそうなんだろうと思いこみ、慰安婦問題の解決を妨げることになる。つまり反日を延々とあおっているのは、国民ではなくてこうしたある種の「団体」だということを認識しておくべきだという話である。この点は日本の皆さんに大いに強調しておきたい部分だ。一般国民の中にも「骨髄まで」反日っていう人もいるけど、90%以上というか、大部分の韓国の一般の人はそんなに反日ではないのだ。筆者がつきあっている韓国人の100%は反日ではない。もっとも「類は友を呼ぶ」のたとえ通り、筆者の周りに集まってくる人間たちは自動的に日本が好きのタイプになってしまうのかもしれないけれど。
また、李容洙ハルモニの発言の中で筆者が一番印象的なのは、ソウルの日本大使館付近で毎週水曜に開かれている同団体主催の抗議集会、これをこちらでは「水曜集会」といっているが、これについてハルモニが「憎悪だけを教えている。なくすべきだ」と発言した点である。
日本軍は韓国の若い女性を強制か半強制かはわからないけど、とにかく韓国から女性を集めて慰安所で働かせたのは事実だ。事実は事実として認めないと、国際社会では誰も信用しなくなる。認めよう。日本軍は悪いことをしたのだ。だからこそ、2015年12月の安倍・朴槿恵合意があったわけであり、安倍首相は一時頭を下げて「謝罪」までしたじゃないか。しかし数日後にはそのせっかくの謝罪を、まるでそんなこと「しなかったよ」とでもいいたそうな発言をした。これで韓国の民は皆怒った。あのとき安倍首相がもう少し、あの合意の線に沿って最後まで慰安婦のハルモニたちのことを配慮して「もうしわけなかった」という態度および言葉を発していたなら、慰安婦問題もここまでこじれなかったものと筆者は考えている。
安倍談義をするために書いたのではなかった。慰安婦像をつくり、水曜集会を開いて「日本の野蛮人野郎ども」と声を上げるのは、しかたないと思う。そうでもしないと、彼らの気持ちが収まらないはずだ。
しかし、いつまでそんなことをやっているのかということである。
慰安婦ハルモニたちも、その大部分は、永遠に声を張り上げ日本を責めることを望んでいるのではないことが今回の李容洙ハルモニの発言で、はっきりとわかったんじゃないのか。
そうなのだ。「憎悪だけを教える」のだ。この部分は、本当に筆者の心の琴線に完全に触れた。当事者のハルモニが言ってくれているというのは、説得力がある。「被害者」としては「気が済むまで」やるのが原則だけど、当事者のハルモニさえ、「憎悪だけを教える。集会はやめよ」と言ってるじゃないか。多くの韓国の国民のみなさんも、この李容洙ハルモニの発言を魂で受け止めてほしい。
反対に、日本でやられているヘイトスピーチも、憎悪だけを生み出しなんの解決策も生み出さない。どんな運動であれ、憎悪モードでやるのは百害あって一利なしであることを銘記してほしいところだ。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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