木口 政樹 2020年6月2日(火) 19時0分
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韓国の元慰安婦が記者会見し、支援団体が集めた資金がどこに使われたか分からないと爆弾発言を行い、韓国は大揺れに揺れている。写真は日本大使館前。
5月7日、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)ハルモニ(おばあさん)が大邱市で記者会見し、支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)が集めた資金が「どこに使われたか分からない」、「自分たちは騙されるだけ騙されてきた、利用するだけ利用されてきた」、「義援金や基金などが集まれば被害者に使うべきなのに被害者に使ったことはない」という爆弾発言を行い、韓国は大揺れに揺れている。
しかし、5月29日、張本人の尹美香(ユン・ミヒャン)前理事長が会見で疑惑を全面的に否定し、5月30日、晴れて韓国の第21代国会議員になった。与党の議員である。疑惑の調査は検察が担当し現在も勿論継続中だ。犯罪性が明らかになれば議員バッジ剥奪もありうるだろう。
尹美香氏の悪は、資金運用の不正とかハルモニたちを騙してきたという部分ではなく、慰安婦問題を掲げて日韓関係を麻痺させ、危機に追い込んだこと。ここが一番の核心的悪だ。韓国人が持つ「反日」感情の大きな部分がこの慰安婦問題を通じて形作られてきた。1995年の「アジア女性基金」、2015年の「日韓合意」と二度にわたって日韓政府が苦労して作った合意を「反日」扇動を通じて無効にし、韓国国民に日本が過去の歴史に対して謝罪しないかのような認識を植えつけてきた。正義連は「慰安婦問題の解決」を目指しているのではなく、反対に問題をこじらせ、反日感情をあおり、いつまでも日本に難癖をつけることが存在理由だったのだ。
2015年12月、朴槿恵政権と安倍政権によってもたらされた「日韓合意」。しかし合意後、実務を担う「和解・癒やし財団」を解散させたのは文在寅政権である。破棄の理由は、「当事者の意見が反映されていない」というものだった。それはどういう意味かというと、慰安婦ハルモニたちの意見が反映されていないということなわけだが、ハルモニたちの47人中、34人がお金を受け取っていたのだ。残りのハルモニたちも、日本からのお金をもらうハルモニは自ら進んで出かけた公娼であることを認めることだ、などと尹美香氏の正義連などがあおったため、素直にもらえなかった人もいるのだ。こんなことを言われたら素直に「もらいます」なんて誰だって言えない。90歳前後のハルモニたちだ。周りの「エリート」たちによって簡単に操縦されてしまうのも無理はない。
本人たちに筆者が直接会って話したわけではないから、本当のところはわからないけど、いつまでもぐだぐだと日本に難癖をつけ続けるよりも、ある程度の線で妥協して、気持ちよく余生を送りたいと考えるハルモニは多かったはずだ。今回のイ・ヨンス・ハルモニの爆弾発言をみても、それはうかがえよう。
戦争で男たちが女性の性を蹴散らしてきたのは、どの国も同じで、この点は、男たちが深く反省すべき点だ。だから「少女像」はあっても筆者としては反省の動機にこそすべきてあって、壊したり撤去したりしてはならないと思う。特に日本軍は大々的にやったからこういう問題にもなったのだ。一番反省すべきは日本人(男たち、筆者含む)だろう。
そうしたことを了解した上で言いたい。文在寅政権が「当事者の意見が反映されていない」という理由で破棄した「日韓合意」は実は当事者の意見ではなく「尹美香の正義連」の意見であったわけだ。当事者の意見でなかったわけだから、「日韓合意」の破棄理由は崩れ去ってしまったことになる。今回の尹美香ゲートを通して韓国の人々にもこのあたりのことはわかってほしいところだ。つまり、慰安婦団体の存在理由は、問題の解決ではなく「問題の維持」であること(=永遠に日本に難癖をつける)、2015年の「日韓合意」は国と国との正式の取り決めであるのだから、(破棄理由が崩れ去ったことを鑑みて)粛々と実行すべきであること、こうした部分を尹美香氏に反対する人たちだけではなくて、国全体の世論として醸成されていくことを願う次第だ。
また日本政府には、尹美香ゲートに関して積極的な介入はしないほうがいいと言いたい。あくまで韓国の国内問題なのだ。韓国の世論が正義連の言うことじゃなくてイ・ヨンス・ハルモニらの慰安婦の方々の意見を直接聞こうじゃないかという流れになるのを待つしかない。変にちょっかいを出して上げ足を取られ、また韓国の世論を反日の方向にするよりは、そっと見守りながら韓国の野党らの活躍に期待しつつ、「日韓合意」の履行を期待するというメッセージを出すくらいがいいのではないだろうか。こんな大きな問題が発生しても、水曜集会に参加している韓国人(一般人)は、正義連とイ・ヨンス・ハルモニの間に「なんらかの誤解があるからでしょ」、と問題の重大さを全然認識していない人々が大半だ。日本糾弾と謝罪・賠償の獲得を目指して最後まで戦うべきだと一人の若い女性が言っていた。こんな重大問題が発生しても、市井はそんなに変わらないことに驚くばかりなのだが、これがまた現実なので、こうした面もしっかりと踏まえて動いてゆかなければならないのだろう。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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