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<日本人が見た中国>苦汁をなめた経営者が語る「中国ビジネス成功」のカギとは?

Record China    2013年10月3日(木) 9時44分

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私は以前、北京で倉庫業をしていたことがある。土地のオーナーから土地と建物を借り、建物を倉庫に改造して、様々な業種の企業に貸し出す、という仕事だ。写真は不動産の看板。

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私は以前、北京で倉庫業をしていたことがある。土地のオーナーから土地と建物を借り、建物を倉庫に改造して、様々な業種の企業に貸し出す、という仕事だ。

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元々、当社では海外引越の仕事のために800平方メートルの倉庫を借りていた。その後、ありがたいことに仕事が増え、この面積では手狭になり、2倍の1600平方メートル前後の別の倉庫を探していた。しかし、当時の中国の景気は絶好調、そんなまとまった面積の倉庫を貸してくれる会社はなく、800平方メートルの倉庫はパンク寸前になっていた。

そこで、発想を転換した。「そんなに倉庫が足りないなら、貸す側に回ればいいじゃないか」。探す対象を倉庫ではなく、空き工場にしたところ、すぐに8300平方メートルの旧木工工場が見つかった。当社はこの旧木工工場の建物を倉庫に改装し、1600平方メートルを自社で使用、残りの6700平方メートルを貸し出すことにした。

しかし、時はおりしも北京オリンピック開催直前。北京市内には厳しい交通規制がしかれ、北京の物流はほぼストップした。物流がストップしているときに、倉庫を借りる人はいない。改装を終えた倉庫は、何カ月もの間開店休業状態となり、土地と建物のオーナーに支払う家賃だけが流出していった。

その後もリーマンショックを発端とする金融危機などで物流の量が減少したが、倉庫は徐々に埋まり始め、3年後、ようやく満室となった。「さぁ、これから倉庫の改装費用と、開店休業状態のときに出した赤字を取り戻すぞ」というときに、土地と建物のオーナーから賃料の大幅な値上げ通告があった。

そんな値上げを受ければ全く利益が出なくなってしまうし、契約書にも書いていない値上げだったので、当社は当然のように断り続けた。しかし、何度目かのお断りの翌日、倉庫に地元の役人が来て、重箱の隅をつつくような査察を行い、巨額の罰金を言い渡していった。

偶然か、とも思ったが、北京市内でも郊外では中国の田舎と同じで、政府の役人も企業オーナーも警察もヤクザもみんなグルになっておいしい汁を吸っていると聞く。今回は役人だったが、地元のヤクザが来て、倉庫に放火されたり、当社の社員に危害を加えたりされたらたまらない。

この完全にアウェーの地で、何をされるかわからない強烈な恐怖感から、悔しいながらも当社は土地と建物をオーナーに返却、後には取り戻せなかった巨額の赤字だけが残った。

完全に向こうの契約違反なので、裁判に訴える手もあったと思うが、彼らが裁判官に後ろから手を回して、公正な裁判が行われない可能性もあったし、たとえ勝訴して値上げ撤回を勝ち取っても、アウェーの地で何をされるかわからない恐怖は続いたであろう。

この事件から学んだのは、中国でビジネスをする場合には、なるべく田舎ではなく、都会でやった方が良いということだ。中国は法治国家化が進んでいると言われているが、田舎にはまだまだ既得権益層である政府の役人、企業オーナー、警察、ヤクザなどがみんなでグルになっておいしい汁を吸っている無法地帯のようなところがあるように思う。

今後、中国に進出する日本企業が、彼らの餌食にならないことを祈るばかりである。

■柳田洋

永豊有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、丸紅で石炭貿易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務所代行サービス会社を設立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業を立ち上げる。現在は中国での会社経営経験を生かし、中国に積極展開しようとしている日本企業の社員を対象に、講演、助言などのサポート活動を行う。著書に「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)。

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