<直言!日本と世界の未来>新型肺炎、世界経済に大打撃=訪日中国人の減少不可避―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年2月2日(日) 7時0分

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新型肺炎の感染は世界的に勢いを増しており、中国だけでなく、日本を含む世界の経済への影響が懸念される。2002~2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)騒動の時よりも甚大になるのは不可避のようだ。

新型肺炎の感染は世界的に勢いを増しており、中国だけでなく、日本を含む世界の経済への影響が懸念される。中国の世界経済に占めるウエイトが格段に増大しているためで、総じて2002~2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)騒動の時よりも甚大になるのは避けられないようだ。

経済面での対中依存度が増大している日本への波及は不可避である。特に訪日中国人の減少が憂慮される。2019年の訪日中国人は前年比14.5%増の959万人に上り、全体の3分の1を占め、国・地域別で断トツの1位。中国からの訪日客は2003年には44万人に過ぎなかったが、なんと20倍に急増している。

ところが、新型肺炎の蔓延を抑えるため、中国からの海外航空便を制限する動きが広がりつつあり、インバウンド需要に依存している小売業や宿泊・飲食サービス業への打撃は大きい。アジア近隣諸国や米国や欧州などへの影響も甚大だろう。

日本政府観光局の発表によると、2019年の訪日外国人客数は、前年比 2.2%増の3188 万2000千人となった。微増にとどまったのは、韓国人客が日韓関係悪化から同年 8 月以降に半減する状況が続いたことが主因とされる。19年の韓国人客は558万4600人と前年の 753万9000 人から26%も減少した。韓国では、日本が輸出管理の厳格化を発動した7月以降、日本製品の不買運動が拡大、日本製の衣料品やビールなどに加えて日本旅行もその対象となったという。

19年の訪日外国人客数は、国・地域別では中国、韓国に続いて台湾489万600人(前年比2.8%増)、香港229万700人(3.8%)の順だが、ともに一けた台の伸びにとどまった。

海外からの訪日客は日本経済にとって主要な成長戦略であり、政府は2020年に訪日外国人客目標を4000万人と設定している。韓国に続いて頼みの中国からの訪日客が新型肺炎問題の拡大により激減する事態になれば大打撃。この目標達成は絶望的との見方も出ているようだ。

中国に進出している日本企業は2万社以上に上り、大規模な生産工場や事業所、商業流通施設を運営している。影響は電子部品や外食チェーンなど幅広い業種に及んできた。中国経済が冷え込む可能性が強まり、世界の株式市場も下落している。最大の輸出相手国でもある中国の動向から目を離せない。一刻も早い終息を望みたい。

<直言篇109>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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