Record China 2013年10月11日(金) 7時30分
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7日、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が首脳会談を開き、両国は「2015年に反ファシスト戦勝70周年記念大会を盛大に行う」ことで合意した。写真は世界反ファシズム戦争ハイラール記念園。
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10月7日、インドネシアのバリで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行った。その席で両国は「2015年に反ファシスト戦勝70周年記念大会を盛大に行う」ことで合意した。中国の中央テレビ局CCTVや中国共産党の機関紙「人民日報」などが大々的に報道した。
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1995年5月7日、モスクワで開催された世界反ファシスト戦勝50周年記念大会に中国が初めて招待され、当時の江沢民国家主席が出席したことがある。江沢民の感激のしようは尋常ではなく、94年から始めた愛国主義教育を、反日の方向に大きく舵を切るきっかけの一つとなったほどだ。
反ファシスト戦勝大会に集まったのは、すべて第二次世界大戦で日本と戦った国である。中国、すなわち中華人民共和国はこの戦争に参戦していない。なぜなら終戦は1945年で、中華人民共和国が誕生したのはその4年後の1949年だからだ。中国はまだこの世に存在していなかった。
日本と戦った国は現在の台湾政府である「中華民国」。その意味で中国(中華人民共和国)は国家としての「戦勝国」ではない。しかし1971年に「中国」の代表として国連に加盟した中華人民共和国は、「第二次世界大戦で勝利した国」として位置づけられるようになったということになる。
▼反日は逆戻りしない
それでも1991年12月にソ連が崩壊するまでは中ソ対立があったため、1985年にモスクワで開催された40周年記念には招待されていない。ところが50周年記念では、当時のエリツィン・ロシア大統領が江沢民をモスクワの記念式典に招待した。自尊心を大いに刺激された江沢民はその後、「日中戦争」勝利の日を、「反ファシスト戦勝の日」として、自らを第二次世界大戦における「連合国側」の国の一つとして位置づけるようになったのである。
そのため愛国主義教育の中で抗日記念館などを数多く設立させたり、抗日関係の読本やドラマなどの推奨に一段と力を入れるようになった。
もちろん江沢民の父親がかつて日本の傀儡政権の官吏であった事実を薄めるために、自分がいかに反日であるかを誇示して護身を計ったという要因もある。
しかし原因が何であれ、中国ではひとたび「反日」の狼煙(のろし)をあげたが最後、それは二度と再び後戻りはしない。少しでも反日を否定すれば「売国奴」と呼ばれる土壌が、もともと中国にあるからだ。なぜなら中国共産党は反日の中から誕生した党だからである。
習近平政権1年目であった今年は、薄熙来事件をきっかけとして表面化した貧富の格差や党幹部の腐敗などがあり、反政府に向かうであろう反日デモを抑えてきた。だからと言って反日が消えたわけではない。いやむしろ、中国から反日が消える日はないと思った方がいい。50年後、100年後ならいざ知らず、ここ10年、20年で消えることは絶対にない。民主化すれば反日がなくなるとも思わない方がいい。それは民主主義国家であるはずの韓国を見れば何を説明しなくとも歴然としているだろう。
▼2015年に向け日本自身の世界戦略を
おまけに今般のAPEC首脳会議に、アメリカのオバマ大統領が欠席したことにより、中ロの存在感を強めてしまった。その中ロが2015年を見据えて反ファシスト70周年記念大会を盛り立てていこうとしている。
崔天凱・駐アメリカ大使も10月8日にワシントンで開かれたフォーラムで日本を非難した。曰く「日本は第2次世界大戦の敗北は原爆だけによるものではないことを自覚し、戦後の世界秩序に挑戦すべきではない。日本は米国さえ敵に回さなければ何の問題もなく、その他の国々が持つ懸念に配慮する必要はないと考えている」と。さらに「日本を打ち負かした側には米国と中国も入っているのは言うまでもない」と述べた。
このように中国は自らを第二次世界大戦の連合国側の一員だと位置づけ、その反日姿勢を強化することはあっても崩すことはない。中国以外の、当時の真の連合国側の国で、今もなお反日を叫び続けている国は世界にあるだろうか。
文化大革命(1966年〜76年)で壊滅的打撃を受けた中国に、資金と技術の支援をし続け、今日の中国の経済発展の基礎を作ってあげたのは日本だ。その日本人の気持ちを裏切り、世界秩序を乱しているのは中国ではないのか。日本の領土である尖閣諸島を、突如中国の領土と言い出したのも中国だ。
今年反日デモが起きなかったのを見て、日中関係が改善すると期待する一部の人たちがいるようだ。たとえ一時的に関係がほぐれたように見えても、中国の政治から反日が消えることは根本的にない。経済的に強くなればなるほど、高飛車な態度と対日強硬策は強化されていく。2015年に向けて、日本は日本自身の世界戦略を立てていくべきだろう。(<遠藤誉が斬る>第4回)
遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』など多数。
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