Record China 2020年2月18日(火) 8時30分
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小笠原欣幸・東京外国語大准教授が「台湾総統選挙の分析と今後の台湾政局」と題して講演。蔡英文氏の総統選圧勝について、台湾アイデンティティーが広がり、国民党と中国政権の苦境が鮮明になったと分析した。
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台湾問題に詳しい小笠原欣幸・東京外国語大准教授が「台湾総統選挙の分析と今後の台湾政局」と題して、このほど日本記者クラブで講演した。蔡英文氏の総統選圧勝について「台湾アイデンティティーが広がったため」とし、最大野党・国民党と習近平・中国政権の苦境が改めて浮き彫りになったと指摘。「中国政府がすぐに台湾に向け大きな行動に出る状況ではなくなった」と述べ、今後も「膠着状況が続く」と結論付けた。
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1月の台湾総統選挙では、独立志向の与党・民主進歩党が再び勝利し、立法院でも過半数を獲得。蔡英文政権は次の4年間も安定した政権運営基盤を確保した。
小笠原准教授は1996年の第1回台湾民主選挙以来、総統選を研究し続けている。今回の選挙について、民進党が前回得た「安定したリードを固めた」と振り返った。蔡氏は前回2016年よりも高い57%の得票率を得て、過去最多の817万票を集めた。
その主因について「台湾アイデンティティーが広がったため」と指摘。中国の習近平主席が2019年1月の演説で提起した“一国二制度”による台湾統一“を明確に拒否し、その枠組みの下で中国への反発を強める香港民主派との連帯を示した蔡氏や民進党が、支持を勝ち取ったという。台湾アイデンティティーとは、台湾住民が自身を「中国人」ではなく「台湾人」であると認識することで、このトレンドがより鮮明になったと分析した。
一方、国民党は、中国共産党との提携関係による「親中」路線から抜け出せず、台湾アイデンティティーの潮流に乗れなかった。同党は2018年11月の統一地方選では大勝したが、小笠原准教授は「地方選挙と国政選挙ではイシュー(争点)が違う」とし、目先の政策が影響する地方選とは異なり、総統選は「台湾の大きな方向や在り方を決める選挙」と位置づけた。
2年後の次の統一地方選でも、立法院選挙で勢力を伸ばした民進党でも国民党でもない「第3勢力」への期待は確実にあると指摘。県市の議会選挙では、民衆党、時代力量、貴進党などが議席を獲得すると予測した。ただ第三勢力が2022年に気勢を上げたとしても、2024年の国政レベルの選挙戦が始まると、「立法委員選挙で有力な候補者を擁立できないという、今回選挙と同じ問題に直面する」と見通した。
こうした情勢の下、4年後の総統選も民進党の優位は動かないと明言。蔡英文総統の後継候補としては、頼清徳・行政院長(首相に相当)と鄭文燦・桃園市長の2人が有力で、柯文哲・民衆党党首・台北市長も出馬の可能性が高いが、路線・政策を固めることができるかがカギとなるという。
これに対し、習指導部はどう出るのか。盟友・国民党が国政選挙で連敗し、台湾政策は成果を挙げていない。小笠原准教授によると、台湾の民意をフォローしておらず、抜本的な政策見直しを迫られるが、「手詰まり状態」が続く。習近平政権の台湾政策は「ハードパワーを使った台湾抑え込み政策とソフトパワーを使った台湾取り込み工作の同時進行だが、効果を上げていない」と分析した。その上で「米中対立の構造の上に貿易戦争があり、中東、香港情勢も不安定。さらに新型肺炎の緊急課題が加わった」とし、中国政府がすぐに台湾に向け大きな行動に出る状況ではなくなった」強調。「膠着状況が続く」と結論付けた。
2021年の共産党創設100年や2022年の党大会を控え「強国」ぶりを演出する必要がある習氏が、今の硬直的な台湾政策を柔軟路線に修正することは考えにくいと見る。
同准教授は2016年2月、台湾総統選で蔡英文氏が初当選後の講演で、台湾を統治してきた「1強政党」としての国民党は、役割が終了、「3分の1」政党となる、と指摘。台湾社会で高まる「台湾アイデンティティー」を重視する民進党をはじめとする勢力が今後も多数の支持を獲得すると予想していたが、この傾向は4年後の今、さらに強まったという。
小笠原氏によると、国民党の馬英九前政権は2008年以降、台湾重視を強調しつつ、中国との関係改善を進める対中政策を進めてきた。これは台湾社会で高まる「台湾アイデンティティー」と大国化する中国との間で微妙なバランスを意識した路線だった。馬氏も「台湾化」を唱えたものの、習近平国家主席との駆け引きの果てに、「台湾化」も「中華民国擁護」も後退したという。
同氏は、今回の選挙の結果、国民党と習政権の苦境が改めて浮き彫りになったと指摘。台湾政治の行方は経済動向にも左右されるとした上で、「日本と台湾の活発な民間交流は台湾の現状維持に貢献している」と評価した。(八牧浩行)
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