<コラム>中国-裸足の医者、我が国でも活用してみる?

石川希理    2020年2月27日(木) 23時10分

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簡単な医療知識、救急医療の知識を持った人材を、主に農村部に医師として配置する。これを「裸足の医者」という。この制度は発展途上国ならではのアイディアだが、現在の我が国にも必要ではないかと思う。資料写真。

簡単な医療知識、救急医療の知識を持った人材を、主に農村部に医師として配置する。これを「裸足の医者」という。

1960-80年代にかけて中国で行われた制度である。農村部の衛生医療体制の不備から設けられたものだ。

この制度は発展途上国ならではのアイディアだが、現在の我が国にも必要ではないかと、このごろ壊れていく自己の肉体を感じつつ思う。

医師になるには、大変なお金がかかる。

額は公私の別、またそれ以前の高校や塾の費用も入れるかどうかによってバラバラだ。

おおよそ大学だけで 国立の学費は年間約54万円。私立大学は400万から500万円前後、1000万を超えるところもある。

国立はさすがに安い。そのかわり受験競争は凄い。そして授業はシビアでアルバイトはしにくいから、その間の書籍、交通費、昼飯代、小遣いとなると、平均的なサラリーマンでは、しんどい。

下宿(いまはワンルームマンションか)すると、父親の小遣いは昼食込みで一日、500円になるだろうか?

私学となると、学費だけで父親の稼ぎは総て注ぎ込まねばならない。非現実的である。

つまり私学だと、まあ先祖からの財産でもないと無理である。それも「億」というような相当な額でないと持ちこたえられない。なにせ、「寄付金」という別のお金も必要になる。

医師の子が医師になるというのは、ここから来ている。

「人を救う」やりがいのある仕事だ。それが第一の理由と思いたいが、金と名誉と地位が手に入るという事でもある。

医師の数は、日本医師会の強い政治力もあって、大幅には増やせない。

「医師が多くなると医師の資質が落ちる」こともあるし「医学部がすぐには増やせない」こともある。それは事実だろう。そして「医師が多くなると医師の収入が減る」ことにもなる。

だが、高齢化が目の前では、医療費を減らさねば国が持たない。考えを180度転換してはどうか。

「裸足の医者」を設けるのである。

名称は「裸足の医者」ではなくていま使われている「ホームドクター」にすればいい。大学卒業程度の学力のある人に、安く2年程度の教育を受けさせる。その教育機関のレベルは中堅大学程度でいいと思う。

知識レベルは、私の経験的判断だ。(笑)あてにはならないが、そのくらいで、いいのではと思う。そして「総合医」にする。

風邪や腹痛、打ち身や単純骨折といった軽微なものの判断知識、薬の知識を持たせればいい。血圧や血液検査でたいていの疾患は、基準と比較して素人でも分かる時代だ。

さらに、研修を強化して、10年程度で免許の更新を義務づける。これも形式化させない。日常の業務態度は患者に採点させ、更新試験も行う。

日常、勉強していれば、国際的な疾患の基準の変更、新しい医薬品・治療機器の知識、流行などへの対処には十分対応できるだろう。

知識・技量外の症状には、以前からの「医師」が対応する。インターネットで、「医師」に遠隔診断をしてもらうことも出来る。

もちろん、このホームドクターも、正規の医学部出身の「医師」も「レベルアップ」しないといけない。医師は生涯勉強である。そうしていると思われるからこそ、医師は信頼されている。勉強しない医師はないと信じたい…。

けれど、「どうもなあ」と感じる方もおられるようである。また、コンピュータの画面ばかりを覗き込んで、患者と対面・会話しない方もいる気がする。

このホームドクターも「医師」も、免許を取れば3年間の救急病棟勤務を義務づける。内科専攻でなく、外科もできるオールウンドの力をつけてもらう。「医師」の診療科目選択はそれからである。

「ホームドクター」は、初期治療にだけ対応する。収入は平均的サラリーマンの2倍程度にすれば、希望者も多く、十分な数が確保できると思う。

以前からの「医師」も、「ホームドクター」から来る患者、また初めから少し高い治療費を覚悟する患者だけで、収入は減らないだろう。

このあたりは、老人の勝手な妄想である。誤解はお許し願いたい。

しかし「医師」に競争という危機感が生まれる。ホームドクターより高い知識と技量、そして人間性が求められる。常に勉強しないといけない。

現在のように免許を取ったらそれでオワリではなくなる。

収入を確保しつつ、しかも自由競争で、しっかり勉強しないと患者から見放されるという、当たり前の「裸足の医者」を、人口が減ってくる我が国も取り入れてはどうだろうか。

もちろん、ホームドクターも、レベルアップして「医師」になる道も作っておく。

結果として人々の健康度が上がり、医療費の節約にもなり、幸せにつながると思うのだが。

■筆者プロフィール:石川希理

1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。

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