Record China 2013年10月29日(火) 19時3分
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前代未聞の濃度のスモッグにより視界を奪われるなか、文字通り五里霧中で途方に暮れる現地の人民のみなさん。だが、この空前の珍現象を前に発想のコペルニクス的転回を成し遂げた男たちがいた。
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2013年10月、中国東北部で高濃度のPM2.5が観測された。ハルビン市では「犬の散歩をしていたら、ひもの先の犬が見えない」とのジョークが生まれるほどの濃いスモッグに覆われている。日本では70マイクログラム/立方メートル以上のPM2.5が観測された場合に外出禁止が勧告されることが決まっているが、なんと1000マイクログラム/立方メートル以上を記録している。
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だが、この猛烈な大気汚染の中で生きる人々すべてがただひたすら怒ったり、嘆くだけの日々を送っているだけではない。ちょっと思いもしなかったやり方で開き直っている人もいる。そうした事例について作家の安田峰俊さんが紹介してくれた。
以前、中国のネット上の書き込みを2ちゃんねるの「まとめサイト」っぽく翻訳して紹介するブログ「大陸浪人のススメ」を運営していた安田さん。今後、不定期連載で安田さんによる中国のネット翻訳を掲載していく。
ご本人いわく「読者が読みやすいように、翻訳文は逐語訳よりもニュアンスの意訳を重視している」とのことである。(以上は高口康太)
▼はじめに
冬の足音が聞こえてきたことで、日本のテレビでも再び盛んに報じられている中国の大気汚染。特に中国東北部の黒龍江省省都・ハルビン市では、10月20日から計器の針が振り切れるほどのスモッグが観測され、市内の小中学校が休校になったり視界を失った路線バスが道に迷ってしまったりと、いろいろ困ったことになっているらしい。
前代未聞の濃度のスモッグにより視界を奪われるなか、文字通り五里霧中で途方に暮れる現地の人民のみなさん。だが、この空前の珍現象を前に発想のコペルニクス的転回を成し遂げた男たちがいた。市内在住の写真家・房凱MrF氏の微博(中国版ツイッター)上の書き込みと、ネット民の反応をご紹介しよう。
▼中国ネット民の反応
「ハルビンの大気汚染がひどすぎるのでイケメンを配置した結果」
※以下は読者の利便を考慮して、翻訳文は逐語訳よりもテクスト全体を見た上での意訳としている。
房凱MrF 黒龍江省ハルビン♂10月22日 (17:58)
10月21〜22日のハルビン。
凄まじいスモッグで10メートル先も見えない。怨嗟の声が世に満ちている。
だが、ここは思い切って開き直って霧の美しさを楽しんでみることにしようじゃないか。
気分も違ってくるってもんだぜ?
--
広東省♀(10月22日 18:03)
これはいい霧w いいね
黒龍江省チチハル♀(10月22日 18:16)
こんなひどい天気でもキレイに見る方法はあるわけか。霧の都・ハルビン!!
黒龍江省ハルビン♀(10月22日 18:21)
モデルがイケメンすぎた。
黒龍江省ハルビン♀(10月23日 18:56)
命がけで美を追求する人たちがここに。
黒龍江省ハルビン♀(10月23日 23:02)
粋な人もいるものね。スモッグでアートするなんて。
北京市♀(10月25日 08:27)
カメラじゃなくて肺を使って撮った写真か……。
北京市♀(10月26日 18:10)
きれいだ!ハルビン出身者としてこの試みは応援する!!
広西チワン族自治区南寧♀(10月26日 18:31)
あのー、私が結婚するときのウエディングフォトも撮ってもらえませんか?
♂(10月26日 18:09)
発想の転換ってやつだな。
最悪の天候をアートの道具にするなんて最高じゃないか。
浙江省杭州♂(10月26日 18:11)
こいつら毒を吸ってイカれちまったんじゃねえのか……、おい。
♀(10月26日 18:12)
通りすがりで写真を見たけど、ここ数日の私たちの地元もこんな感じ。
でも、この状況でハッスルする人ってのもいるわけね。
重慶市♀(10月26日 18:12)
で、この霧の中の大気汚染指数ってどんだけよ?
広東省恵州♀(10月26日 18:18)
このモデル、横顔はカッコいいけど正面から見たら微妙だと思うんだけど?
上海市♀(10月26日 18:20)
ここまで不健康な天候をエンジョイできるなんて。
でも、これって生命を犠牲にしたアートってやつよね?
北京市♂(10月26日 18:29)
濃霧を使ってここまで詩情あふれる写真を撮影できるのはハルビンだけ!
より深くムードを味わうために、ここでひとつ深呼吸ーー。
河南省洛陽♀(10月26日 18:38)
汚染物質の中毒を恐れない。真の漢の姿を見た。
日本在住♂(10月26日 20:07)
おまえら楽観的すぎるだろ。
▼一言
近年の中国における大気汚染。
もちろん中国人の間からも「PM2.5が怖い」「政府の環境対策はどうなってるんだ!」といった声も数多く上がってはいるのだが、すでに諸報道で散々伝えられているように、即時に改善できるような性質のものではないことも事実。どうしようもない現実を前に、むしろ開き直ってネタにするような人々も割といたりする。
それもまた、現代中国の日常なのであった。
●安田峰俊(やすだみねとし)
1982年滋賀県生まれ。ノンフィクション作家。多摩大学経営情報学部講師。2008〜2012年に「迷路人」のハンドルネームで中国のネット掲示板翻訳ブログ「大陸浪人のススメ」を運営、2010年に中国のネット事情に取材した「中国人の本音」(講談社)で書籍デビュー。ほか「独裁者の教養」(星海社新書)、「中国・電脳大国の嘘」(文藝春秋)など。近著に「和僑」(角川書店)。
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