木口 政樹 2020年3月10日(火) 15時30分
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今回は3月3日に北朝鮮の党機関紙で「青瓦台の低能な思考方式に驚愕する」というタイトルの金与正の談話として掲載された内容をそのまま日本語に翻訳してお送りする。写真はマスクを求めて列を作るソウル市民。
今回は3月3日に北朝鮮の「ウリミンジョクキリ」=「わが民族同士」という党の機関紙で「青瓦台の低能な思考方式に驚愕する」というタイトルの金与正(キム・ヨジョン)の談話として掲載された内容をそのまま日本語に翻訳してお送りする。
金与正は最近、党の宣伝先導部から「組織指導部」という党一番の中枢部に人事になり、そこの第1副部長の地位についた。第1副部長とはいうけれど実質上はその部署のトップである。部長は金正恩でその次という位置だから。
北朝鮮は今内部で大きく何かが動いているようだ。具体的にはわからないけれども、大きな変化のあることは確かのようだ。そんなことも含めて、わかる範囲でのコメントを、また別の号でお送りしたい。
「青瓦台の低能な思考方式に驚愕する」
火におどろくと焚き火を見るだけで驚くということばがある。7日(北で)行われた人民軍前線砲兵たちの火力戦闘訓練に対する南朝鮮大統領府(青瓦台)の反応がそうだ。我々は誰かを脅すための訓練をしたのではない。国の防衛のために存在する軍隊が訓練するというのは当然の業であり自衛的行動である。
ところが韓国の青瓦台から「強い遺憾」だの「中断要求」だのといった声が聞こえてくるのは、我々としては実に不可思議である。あまりにも僭越なる振る舞いだ。もっとも、大統領府や国防部が留守番電話のようにいつも暗記し繰り返される声ではあるけれど。他人の家で、訓練しようが休息しようが何の関係があるというのか。なんで言うべき言葉と言ってはいけない言葉を区別することなく吐きすてるように言うのか。
私(金与正)は、韓国側も合同軍事演習をかなり楽しむ方だと承知しており、先端軍事装備の購入にも熱を上げるなど見苦しい遊びをしていると聞いている。隠れかくれ密かに引きまわしている先端戦闘機が、いつでも我々(=北)を攻撃しようという目的があるのだろうし、まさかそれらで農薬をまこうと準備してるわけではないだろう。
3月に強行しようとした合同軍事演習も南朝鮮に蔓延している新型コロナウイルスが延期させたものであり、平和とか和解とか協力といったことになんの関心もない大統領府の住人たちの決心によるものでないということは、世の中のみんなが知っている事実だ。
我々が韓国側に、そんなにやりたい合同軍事演習遊びを朝鮮半島の緊張緩和の努力に役立たないからとして中止するよう要求するなら、大統領府はどう答えるというのか。戦争練習遊びにあれほど熱中する人々が、他人の家で軍事訓練をすることに対してあれこれ言うのはそれこそ「盗人猛々しい」にもほどがある。
要するに、南は軍事的に準備されなければならず、私たち(北)は軍事訓練をするなという話だが、このような強引な主張をする人を誰が正常な相手と言うだろうか。大統領府のこのような非論理的な主張と言動は、個別的な誰かはさておき、韓国側全体に対する我々の不信と憎悪、軽蔑だけを増幅させるだけだ。我々は軍事演習をしなければならず「お前たちはしてはならない」という論理に帰着する大統領府の非論理的で低能な思考に、強い遺憾を表明するものである。
心はひどく傷つくかもしれないが我々(北)としては大統領府の行動が、3歳の赤ちゃんとたいして違っては見えない。強引で意地を張ることが好きなところを見ると、まるで米国にそっくりだ。「同族」よりも「同盟」を重視してくっついてきているのだから、似ていくのは当然のことだが。我々と対立するなら、強引な姿勢ではなくもっと勇敢で正々堂々と立ち向かうことはできないのか。本当に遺憾で失望させられるが、大統領の直接的な立場表明でなかったことだけは幸いなことと思ってはいる。どうして吐き出す一言一言、言い草の一つ一つがそんなにも具体的かつ完璧に馬鹿なのか。本当にすまない比喩だが、「怯える犬がもっと吠える」という話がある。ちょうど誰かさんのようにね…。
ここまでの内容。2018年2月の平昌オリンピックの時の金与正がこんな激烈なことを言うのか。そう思われた方も多いだろう。あのときの金与正は、女らしい優しささえ放射していたのに。しかし事実はそうなのだ。
いろいろの部分でおもしろいというか、笑わせる文章があるけれど、たとえば「どうして吐き出す一言一言、言い草の一つ一つがそんなにも具体的かつ完璧に馬鹿なのか」なんていう部分はどうだろう。すごいというしかない。
最後の「『怯える犬がもっと吠える』という話がある。ちょうど誰かさんのようにね…」という部分も笑わせる。誰かさんって、誰なの?トランプ?それとも文在寅(ムンジェイン)?わからない。歴史にも残るだろうこういった談話文に、「誰かさんのようにね」なんていう表現を使うのか。内容は過激だけれど、表現は随所随所、稚拙さが目立つ。
この談話の翌日、金正恩から「心のこもった暖かい親書」が韓国・青瓦台に送られてきたという。いったいどうなっているのか。わかる範囲になるけれどこのあたりについては、また別の号で書いてみたい。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県・米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大学校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓国』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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