<在日中国人のブログ>日本と中国の間にある「遠慮のかたまり」を解消しよう

黄 文葦    2020年4月3日(金) 12時40分

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新型コロナウイルスによる感染症が世界的に猛威を振るっている中、日本と中国の間に「マスクの絆」が伝わってきた。

最近、新型コロナウイルスによる感染症が世界的に猛威を振るっている中、日本と中国の間に「マスクの絆」が伝わってきた。

1月中旬に、私は中国国内の家族と親友にマスクを送った。つい先日、中国の友人から「マスクは足りますか。こちらから送りますよ」と言われて、感銘を受けた。実に、それは多くの在日中国人の体験だと思う。日本と中国の間、国でも個人でも、助け合えることを改めて確認できた。

一つ話題になったことを取り上げよう。2月に、中国では新型コロナの感染状況が深刻の際、愛知県豊川市が友好都市の中国・江蘇省無錫市新呉区に支援物資として医療用マスク4500枚や防護服を送った。その後、日本国内の感染拡大をうけて、3月24日、竹本幸夫豊川市長が会見で江蘇省無錫市新呉区に「マスクを返してほしい」と訴えた。そして、今度は中国側が「返礼」十倍返しで、5万枚のマスクを豊川市に送った。

豊川市長の「マスク返して」について、日本のネット上では「恥ずかしい」「情けない」「迷惑をかける」「やせ我慢の美学がわからんらしい。みっともない」という意見が多かったとみられる。そういう反応から日本人の「人に迷惑をかけてはいけない」「遠慮する」の品格が垣間見えた。しかし、「マスクを返して」と言うことは決して恥ずかしいことではなく、ちゃんと現実に向き合っているだけだと思う。

一方、中国人は、「マスク返して」と言われて、すごく相手に信頼されて、相手から遠慮なく自分を「自己人」(うちの人)と見なされて、たいへんメンツが立つことなので、うれしく受け止めるわけである。というわけで、喜んでマスクを十倍返し。マスクの件で、日本人と中国人の性格の相違がはっきり見えた。日本人には遠慮することは美徳だが、中国人には遠慮しないこそ、いい友達になれる。

中国のネット上でも、江蘇省無錫市新呉区の行動が称賛されている。もう一つマスクを倍返しした例があった。福井県永平寺町と友好交流の協定を結んでいる中国江蘇省の張家港市から3月27日、町へ医療用マスク1万枚が届いた。町からは2月に同市へ5千枚のマスクを贈っており、その返礼として届いた。新型コロナの危機の中、日中両国の友好都市の情を深めた。困難な時期の「恩を倍返し」はたいへんありがたいこと、ウイルス蔓延の不幸中の幸い。「礼尚往来」(礼は往来を重んじる)は、日本と中国の共通の文化である。

困った時はお互いさま。困った時、遠慮せず助けを求めることも大事である。さらに言えば、近隣の日中両国には、お互いに遠慮なく助けを求めるべきである。相手に支援を求めることはイコール信頼関係を築くこと。「日本よ、中国に遠慮しないで」と言いたくなった。

延長線上で言えば、日本人は、律儀である。でも人間関係に対し、遠慮や我慢をし過ぎる傾向がある。飲み会でお皿に1つだけ残った唐揚げをなかなか誰も取らない。しかし、関西人はちょっと違う。「遠慮のかたまり」という言葉がある。関西人がお皿に1つだけ残った唐揚げを箸でつかんで「遠慮のかたまりや!」と叫び、口を大きく開けた。関西人の性格は中国人に似ているとよく言われる。

日本と中国の間の「遠慮のかたまり」を解消しよう。遠慮しない日中関係は健康で力強いと信じる。日中関係が悪かった時期、互いに遠慮がちに相手を見下ろしたではないか。勿論、中国もメンツにこだわらないでいろんな面で謙遜に日本に学ぶべきである。「世界第2の経済大国」の身分であるとはいえ、技術力など日本の後塵を拝するはず。今、ウイルスという見えない敵と戦う最中、日本人と中国人が助け合うことがたくさんある。

■筆者プロフィール:黄 文葦

在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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