<コラム>新型肺炎後の中国、ネット通販と動画アプリが融合、5G時代はすべてのアプリがネット通販化?

高野悠介    2020年4月2日(木) 22時30分

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新型肺炎のもたらした「宅経済化」は、中国人のオンライン依存をより一層深めた。これまでの傾向に拍車がかかっている。写真は中国のインフルエンサー。

新型肺炎のもたらした「宅経済化」は、中国人のオンライン依存をより一層深めた。これまでの傾向に拍車がかかっている。テレワーク、オンライン教育、オンライン問診、無人オペレーション等が、新たな突破口から普及を加速させている。そしてネット通販も変貌を遂げつつある。

■もう1つのネット通販

中国のネット通販は、日本とは異なる進化の道を歩んでいる。1.共同購入化、2.生鮮(買菜)化、3.直播(ライブ)化である。防疫体制は、2と3を爆発させた。2は、店舗の有無などさまざまなタイプがあるが、スタイルはどうあれ、この生鮮デリバリーの力により、防疫体制下、都市の秩序は保たれたといってよい。ここでは3のライブ化、中国語で言う「直播電商」を取り上げる。

中国のテレビ番組は基本的につまらない。そのためスマホ時代となって、ネット動画視聴アプリが急速に発達した。彼らは正規の版権を取得し、偽DVDの放逐にも貢献した。しかし版権には莫大な資金が必要なため、現在はIT巨頭系の「愛奇芸」「騰訊視頻」「優酷」に集約されている。

もう1つの主役は、投稿シェア型ショートビデオである。「抖音(海外名TikTok)」「快手」、それに複合アプリ「小紅書」等だ。これら投稿型は、若者の創作意欲を刺激した。

こうしたネット動画視聴と、ショートビデオ投稿の拡がりを背景として、網紅(インフルエンサーまたはKOL「Key Opinion Leader」)にビジネスが開花した。

■網紅の影響力

化粧品メディアの「聚美麗」は、昨年「中国化粧品KOL社交内容営業調査報告」というレポートを提出した。その中に、化粧品会社がKOL(網紅)を使う場合、どのアプリを利用?という調査項目がある。それによれば

小紅書…24.1%、Tik Tok…18.3%、微信(Wechat)…14.8%

淘宝直播…13.0%、微博…11.9%、B站…7.8%、快手…7.5%

という順になった。これはそのまま中国ネット界の主役たちである。出自は以下の通り。

小紅書…越境Eコマースと口コミの複合アプリ、女性から圧倒的支持。

Tik Tok…短視頻(ショートビデオ)首位、ユーザー数4億突破。

微信(Wechat)…テンセントの国民的SNS、ユーザー数11億以上。

淘宝直播…ネット通販首位、アリババのライブプラットフォーム。

微博…ミニブログまたは中国版ツイッターと呼ばれるSNS。

B站…若者に人気の動画共有サイト

快手…短視頻2位、ユーザー数3億突破。

出自の異なるさまざまなアプリで、網紅たちのパフォーマンスが繰り広げられている。どこもやることが同じになってきたのだ。

■網紅の影響力

「淘宝直播達人総合影響力ランキング」という網紅の分析データがある。

1位 薇婭 viya 1430.8万(ファン数以下同じ)

2位 李佳[王奇] Austin 1686.8万

3位 張大奕 eve 1157.2万

4位 雪梨 Cherie 1317.6万

5位 列儿宝貝 350.7万

6位 林珊珊 Sunny 924.7万

7位 陳潔 kiki 271.7万

8位 恩佳N 134.5万

9位 柯柯 baby 169.9万

10位 小僑 Jofay 188.3万

ファンの数だけでなく、サービス評価、内容消費指数、商業転化指数などを、総合化している。上位の4人は、全国的な知名度を誇るスターだ。

第2位の李佳[王奇]は、化粧品に強く、“口紅キング”という異名をとる、最も有名な男性インフルエンサーだ。2019年10月、いつも彼の製品紹介ライブ中にトラブルが発生した。商品は、焦げ付き防止機能付きの鍋だったが、パフォーマンスの過程で、卵が何度もこびりついてしまった。たったこれだけのことが、1カ月以上もネット空間を騒がせた。某ネットメディアの“2019年ネット界10大事件”にも選ばれている。

■まとめ

こうした彼らの強い影響力と、生来の商売好きという中国人の持つ属性が、すべての有力アプリをネット通販に変えつつある、ともいえるだろう。

例えば、ショートビデオの雄、快手は、2011年の設立、GIF画像のシェアから始まり、ショート動画シェアへ移行、さらにライブ放送の「快手直播」ネット通販の「快手電商」「快手小店」の展開と、次々にプラットフォームを拡充していった。

一方ネット通販大手は、アリババの「淘宝直播」、京東の「京東直播」に加え、拼多多も「多多直播」をスタートさせた。高速大容量の5Gは、動画の世界といって間違いない。今後あらゆるプラットフォームが動画を配信し、セールスに励むのだろう。日本の通販サイトは旧態依然に見えてしまうが、多少は変わるのだろうか。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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