石川希理 2020年4月14日(火) 23時20分
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日本はハンチントンの言う「孤立文明」だと考えられる。
日本はハンチントンの言う「孤立文明」だと考えられる。確かに古代から中華文明の影響を受けてきたが、精神的にも極めて独特の文化を築き上げている。いうまでもなく、大陸から200キロも離れた島国である点が大きい。おまけに、対馬海流と黒潮という暖流に挟まれ、東は房総沖までリマン海流という寒流が流れる。雨量は前にも述べたが世界平均の倍もある。四季があり、上空には偏西風が吹く。台風に襲われ、地震は多い。火山は世界の2割が集まる。
「大変な地理的環境の国だなあ…、それが文化の背景か…」
書いていてしみじみそう思った。
前に登場したハンチントンの世界図を見て、島国先進国イギリスと日本の差異を考えると、それがよりよく判る。
1.大陸との間の海は、イギリス40キロ、日本は200キロ。
2.日本は寒流が東に流れ、温帯だが四季の別がはっきりしている。
3.日本は偏西風がイヤでも黄砂を運んでくる。
4.日本は大陸プレートの集合地で、地震・火山は、ほぼ世界最多。
5.日英とも島国。日本は37万平方キロ、イギリスは24万平方キロだ。しかし日本はほぼ山地、イギリスはほぼ平野。
ポツンと離れた島国というイメージは、日本そのものを指している気がする。大陸からの影響を受けず、しかも平地の少ない自然環境は悪く住みにくい。そこにイギリスの倍以上の人口がつましく過ごしているのだから、これは地球人類の奇跡!! であろうか。
この日本、古代、中・韓からは野蛮或いは未開人の「倭」という意味合いで呼ばれてきた。中・韓との地理的距離は、前にこのコラムで述べたように、イギリス-フランス間の距離の5倍ほどもある海だ。しかも九州北西辺りの海は「玄界灘」と呼ばれ、冬の季節風と海の荒れで有名だ。このことが、中国からなどの干渉を防ぐ盾となっている。もちろん古代においては、中国から見れば歯牙にもかけない「楽浪海中の野蛮な国、倭国」である。
ところが、『日本書紀』の任那日本府が、朝鮮半島の占領地であったのか、役人の滞在地であったのかはともかく、後代、中国沿岸を荒らした「倭寇」や秀吉の「朝鮮出兵」と、なかなかにうるさい国であった。歴史的に、大陸から唯一、日本に攻め込もうとしたのは、蒙古民族の「元寇」である。
前に書いたが、我が国は、中国からの制度・文物・文化を貪欲に吸収した。朝鮮のように、中国からの干渉がないので、必要なものだけ、といっても膨大なものを取り入れた。894年の遣唐使廃止以後は、国風文化を発展させた。漢字も使いつつ「かな」文字を生み出した。漢字かなまじり文に、現代では、カタカナで英語表記まで取り入れ、世界的に見てもユニークな言語体系である。
そして、明治維新によって、今度は欧米から知識を貪欲に吸収した。西周が欧米の知識を「理性」「科學」「技術」「心理学」「意識」「知識」「哲学」などと、造語したことに代表されるように、漢字に置き換えてしまった。ドイツ式医学、イギリス式鉄道(狭軌)、ドイツ中心の法律などを整備していく。さらに日清・日露を戦い、アジアで唯一の先進的帝国主義国家となる。「大日本帝国」である。
日清戦争後の1901年には八幡製鉄所も完成している。ただ、1965年からと言われる戦後の高度経済成長期に比較して、明治・大正・昭和前半当時は、極めて跛行的な体制の国であった。この概ね明治維新から100年間近くは、国家の仕組みの基本は封建制度である。つまり農村社会なのだ。近代国家にはなっていくが、国内消費は弱く、経済は繊維品の輸出に頼り、国民は貧しい。
第二次大戦当時、科学技術力の見本として「ゼロ式戦闘機」「戦艦大和」などが取り上げられるが、一方で飢饉の時には娘の身売りを役場が相談に乗っていた。そういう歴史を踏まえておこう。しかしその上で、やはりアジア初の近代国家を成立させたのが我が国であった。「大」日本帝国という国名から、その気概が感じ取れる。
つづく
■筆者プロフィール:石川希理
1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。 ブログはこちら
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