<羅針盤>コロナウイルスが世界で蔓延=海外邦人の「安全・安心」にも配慮を!―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2020年4月5日(日) 7時20分

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新型コロナウイルスとの闘いが、世界的に深刻な状況に陥っている。イタリアやスペインでは、医療崩壊によって死者が激増、世界中の多くの国で国境封鎖や外出禁止措置がとられている。写真はロンドンの大英博物館。

新型コロナウイルスとの闘いが、世界的に深刻な状況に陥っている。イタリアやスペインでは、医療崩壊によって死者が激増し、世界中の多くの国で国境封鎖や外出禁止措置がとられている。米国でも、感染が急拡大、「国防生産法」による人工呼吸器の製造命令が出された。日本でも感染者が東京をはじめとする大都市を中心に急増しており、日本医師会は緊急事態宣言の発令を政府に提案した。

あまり報道されないが、こうした中で、苦労しているのは現地でビジネスや文化交流で現地に滞在している在留邦人だと思う。海外で日本の駐在員や出張者が交通事故や事件に遭遇し、死傷するケースが後を絶たない。この種のニュースを見聞きするたびにいたたまれなくなる。私もかつて海外の取引先開拓のため諸国を飛び回ったが、今でも生きているのが不思議に思えることも多い。

オムロンの前身の立石電機が米国へ本格的な進出をしたころ、シカゴ・シアーズタワーの53階にオフィスを構え、勤務していた。シアーズタワーは高さ500メートル、113階建ての当時世界一の高さを誇っていたビルで、部屋はちょうどその中間にあたる。 

夜遅くまで仕事をしていると静寂そのもの。こういう時にホールにあるトイレに座っていると、「キリキリキリ。キリキリキリ」とビルの軋む音がする。ミシガン湖からの強烈な風に煽られて一生懸命こらえているのであろう。その音がまるでビルの泣き声に聞こえ、不気味たった。

長年海外を飛び回っていると多くの経験をする。

フランクフルト空港で着地と同時にパンク。ジグザグしながらやっとストップ。滑走路に蛇行したカーブの跡。ロンドンーパリ間では雷に打たれ「ドカン」という凄い音。着陸して機外に出ると先端のカバーが無く、計器類がまる見えだった。

アメリカの大都市では、出迎えの社員の運転で、ハイウェイを逆進入するや否や、前方から大型トレーラーが迫ってくる。ああ運も実力のうちでこの世ともおさらばという瞬間、見事にかわしてくれ、一命をとりとめた。慌てて車を路肩に止め、タイヤから煙をはきながら蛇行して遠ざかる姿に手を合わせて感謝。一瞬垣間見た運転手の凄い形相が今でも瞼に焼き付いている。等々枚挙にいとまがない。

これだけ死に損なうとそろそろ運も尽きるのではと心配になるが、「運も実力のうち」と開き直っている。以上はささやかな個人的な体験だが、長年にわたり私以上に多くの危険な経験をしながら日本のビジネスマンは開拓の努力をし、やっと今日の地歩を固めてきた。

グローバル化が進展する中、企業の海外進出はさらに活発化すると思われるが、各企業は安全・安心には万全を尽くしていただきたい。各企業は海外経験者から彼らが遭遇した、恐ろしく危険な体験談をまとめ教育していくことが必要ではなかろうか。

多忙なスケジュールの合間を縫ってその地の音楽や美術などの文化に触れることは、一服の清涼剤となって疲れを取ってくれる。ニユーヨークではメトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、パリのルーブル美術館、オルセー美術館、ロンドンの大英博物館、ナショナルギャラリーなど何度行っても、いい場所である。

今、テレビ映像で欧米の大都市を観ると、このような場所には人影がなく、ほとんど封鎖状態である。在留邦人の困難は想像しただけで心が痛む。この時期、海外にいる日本人は企業のビジネスマンや国・自治体から派遣された人たちとその家族、留学生などで、海外で奮闘している。欧米では中国、日本などアジア系の人たちへの嫌がらせや暴力も目立つという。一刻も早く平穏な世界が訪れるよう切望したい。

(羅針盤篇54)



■筆者プロフィール:立石信雄 1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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