高野悠介 2020年4月19日(日) 15時10分
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中国では、防疫体制下のテレワーク利用実態が、次々と明らかになってきた。
中国では、防疫体制下のテレワーク利用実態が、次々と明らかになってきた。これは2月29日付けの筆者コラム「新型肺炎後の中国、テレワークの発達、圧倒的なデジタル化でオフィスワーク最先端へ?」の続編になる。この間の出来事はまことにめまぐるしい。すでに分析が盛んになっているのだ。調査機関iiMediaの「疫情期間在線辯公行業発展及趨勢分析」から最新の様子を見ていこう。
■オフィスツールの利用激増
米国のアプリ調査機関App Annieの中国大陸データによれば、2月のオフィスツールダウンロード数は1月比
釘釘(アリババ)356%増
企業微信(テンセント)171%増
飛書(バイトダンス)650%増
釘釘のデイリーアクティブユーザー数は、前年比327.2%となっている。ユーザー数は5億4000万を超えた。ファーウエイの「WeLink」を加え“在線辯公四小龍”と呼ばれるようになった。
■釘釘のポジション上昇
これらは、オンラインオフィスツールと呼ばれ、Eメール、ワード、エクセルなどのOfficeツール、ビデオ会議等の機能が、1つのアプリにまとまっている。それに独自の便利機能をプラスしている。例えば釘釘の場合、企業、組織、業種、人員規模、地域などを入力し、連絡先をグループで編成する。これは人事異動や退職等で業務を引き継ぐとき、非常に便利だ。
こうしたオンラインツールに支えられ、防疫体制下のテレワークは爆発した。iiMediaによれば、テレワークを採用した企業は1800万社、参加者は3億人に上る。この間、会社とのコミュニケーションに使用したツールは
1位 微信(WeChat) 84.2%
2位 電話 46.3%
3位 QQ 35.8%
4位 Eメール 32.6%
5位 釘釘 27.4%
6位 ビデオ会議ソフト 25.3%
7位 飛書 6.3%
8位 その他 1.1%
微信が国民的ネットインフラである状況には変わりない。しかし、もう一つのSNS、QQは釘釘に追い上げられている。テンセントにとってみれば、この部門でアリババに迫られるのは、不快だろう。
■テレワークの評価は?
春節明け、テレワークを開始した企業のうち、新しいオンラインオフィスツールを試したのは、全体の76.8%に及んだ。各社、即決で導入したのだ。テレワークの効率について尋ねたところ
効率が上がった 34.7%
効率が下がった 26.3%
変わらない 39.0%
という結果だった。しかし効率を改善したという人の62.8%は、業務時間が伸びた、と答えていて、評価は難しい。
また従業員のランクによっても回答は異なる。一般社員40.0%は、テレワークの利点を肯定している。中間管理職の40.9%は、テレワークの利点と欠点は同等と考えている。そして幹部社員の42.9%は、テレワークは利点より不都合の方が大きい、と考えている。階層により、まったく逆の答えだ。
■新型肺炎が新しいオフィスワークをけん引
また回答者の54.0%は、新型肺炎が、新しいオンラインオフィスワークを促進する、と考えている。それを否定する答えは12.9%、どちらでもない33.1%だった。
ともかく中国は、今回の防疫体制下、大胆なテレワークにチャレンジした。iiMediaのアナリストは次のように総括している。
1.試行錯誤を繰り返したことで、テレワークの長所、短所を包括的に理解できた。ホームオフィスの必要性が認知され、発展の基盤ができた。
2.技術の進歩。さまざまタスクを処理することで、関連機器まで迄含め、テレワークへのハードルが下がった。
3.オンラインビジネスツールの需要は爆発したが、長期の使用に耐えるには改善点も多い。
■まとめ
とにかくテレワーク需要は爆発し、今や使い勝手の問題になっている。これはアリババ、テンセント、バイトダンスなど、大企業の信用力が大きい。記事には、巨頭決戦とサブタイトルが付いている。正しくその通りだ。今や海外版をリリースし世界展開を目指している。
日本でテレワーク銘柄を検索してみると、ブイキューブ、アセンテック、サイボウズ、ソリトンシステムズなどがヒットする。いずれも新興市場上場クラスで、知る人ぞ知るといった存在だ。しかし一般の知名度は低く、どれを選んでよいか、すぐにはわからない。さらに、ハンコ文化だの、紙文化といった、特殊な障壁もある。
かくして、またも日本のデジタル化は進まない。周回遅れくらいで済むのだろうか。
■筆者プロフィール:高野悠介
1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。
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