中国で外国人が親切心を見せたらなぜか金をゆすられた?!炎上事件の意外な結末と道徳崩壊

Record China    2013年12月5日(木) 0時0分

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3日、「転んだおばさんを親切にも助け起こしてくれた外国人、おばさんは“外国人がぶつかってきた”と金をゆする」というニュースがネットを騒がしました。(文:高口康太)

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2013年12月3日、「転んだおばさんを親切にも助け起こしてくれた外国人、おばさんは“外国人がぶつかってきた”と金をゆする」というニュースがネットを騒がしました。(文:高口康太)

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野次馬が撮影した写真がネットにアップされていますが、おばさんはなかなか強烈。外国人のあんちゃんが乗っていたスクーターにしがみついたかと思えば、あんちゃんの体につかみかかりダウンジャケットを引き裂くほどの元気っぷり。「おまえ治療費いらないやろ!」と誰もがツッコミたくなる力を発揮します。またおばさんは倒れて動けないふりをしたり、けいれんを起こしたふりをしたりとさまざまなテクを駆使していたとの報告も。病院で検査を受けた結果、無傷と診断されたそうですが、その診断結果を聞いたおばさんは再び体をけいれんさせたり倒れ込んだり。結局、あんちゃんは1800元(約3万円)の医療費を払ったそうです。

この件に関する中国ネットユーザーの反応ですが、圧倒的に外国人のあんちゃん支持。実は「じゃじぇじぇ、転んだ人を助け起こしてあげたらなぜか賠償金を請求されたでござる」という事件はこれまでにも何件も起こっています。というわけで、「ま・た・か!」「これが外国人に対するお・も・て・な・しか」「ついに被害は外国人にまで…」と思ってしまうのも仕方がないところです。

▼思わぬどんでん返し

ところがちょっとしたどんでん返しが待っていました。ネットの持つ重みが日本よりはるかに重い中国。日本だとこうしたネット炎上事件を大手マスコミが即座に取材するということはまず考えられないのですが、中国では「これは売れるニュースやでぇ〜」という判断が働きます。というわけで、北京市を代表する人気新聞・新京報の記者が出動し、聞き込み調査。

すると、「外国人のあんちゃんが乗っていたバイク、確かにおばちゃんにぶつかっとったで」との証言が。またあんちゃんはナンバープレートなしのスクーターに二人乗りという違法運転だったそうで。ついでにいうと、野次馬が撮影した動画には、あんちゃんが流暢な中国語で「クソ野郎めが!フ●●ク!」「うそつき野郎め!外国人だからって金をだまし取れると思ってんだろ!」と罵っている姿も収められていたとのこと。

まあおばさんが必要以上に元気だったことも確かですが、「外国人が親切心を発揮したら、なぜか金をゆすりとられたでござる」という当初の構図ががらがらと崩れることに。

▼「親切な人がバカを見る事件」の連鎖

この事件で一番興味深いポイントは、中国のネットユーザーの大半が脊髄反射的に「おばさんが悪いはず」と思った点です。というのも上述したとおり、「親切した人から金をゆする事件」というのはこれまでにも複数の事例があるからです。

もっとも古い事例は2006年の彭宇(パン・ユー)事件。南京市のバス停で64歳の女性が転倒したところ助け起こした青年・彭宇くんが「こいつが突き飛ばした犯人」と訴えられたもの。「彭さんはとりあえず治療費を払ったそうですが、それって後ろめたいところがあるからですよね?」という驚きの一審判決が出て全中国的話題となりました。

2011年には2歳の女の子が車にひかれたのに、十数人もの通行人は見て見ぬふり。それどころか後からきた車は女の子をひいて走り去るということもありました。

今年になってからも四川省達州市で、9歳の子ども3人が転んだおばあちゃんを助け起こしたところ、医療費と賠償金が求められるという事件が。困った子どもの親が警察に通報、おばあちゃんが誣告罪で逮捕という倍返しを食らう騒ぎにまで発展しました。

というわけで、この手の構図は転んだ方が悪人というイメージがすりこまれています。「転んだ時に助けられたら、ありがとうと思わずに、お金稼ぐのはいつ?今でしょ!的な発想を持つ、心ない人が中国にはごまんといるのだ、気をつけろ」という意識が広がっています。そのため「まず現場写真を撮影し自分に罪がないと確認してから人助け開始」とか、「散歩にでかけるご老人。『私は訴えないので転んだら助けてください』というボードを首からかけている」といった笑い話的ニュースが続出しました。

▼「人助けはリスク」という風潮、なんとかならないものか

ただ今回の外国人のあんちゃんの一件にしてもそうですが、本当に転んだ側が悪いのかはケースバイケースとしか言いようがないわけで。なにしろ彭宇事件からして、「彭は本当に女性と接触していた。一審判決後、ネット宣伝会社に依頼してこの件を騒ぎ立てさせ和解に持ち込んだのではないか」との報道もありました。

実際、私も転んだ人を助けに行こうとしたら友人に止められたということもありました。もちろんそういうことを顧みずちゃんと行動できるえらい人もいるわけですが、中国では「道徳崩壊」とも呼ばれている、この「人助けはリスク」という風潮。どうにかならないものかと思う次第であります。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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