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<コラム・巨竜を探る>訪日中国人が急増、官民がアノ手コノ手の勧誘策―日本政府「成長戦略に不可欠!」

八牧浩行    2013年12月13日(金) 6時10分

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2013年に日本への外国人観光客が1千万人を初めて突破する見通しとなった。中国人観光客が秋以降、急回復したことも寄与した。政府は「観光立国」に向け「20年2千万人」を目指している。写真は東京・銀座の中国人観光客(12月12日)。

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2013年に日本政府が目標としていた外国人観光客「年間1千万人」を初めて達成する見通しとなった。中国人観光客が秋以降、急回復したことも寄与したようだ。政府は「観光立国」を標榜し、「20年2千万人」を目指している。人口減が続く中で、外国人の消費は成長戦略に欠かせない。

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今年1〜11月累計の訪日外国人数は950万人。通年で過去最高だった東日本大震災前の10年(861万人)を超え、1千万人突破が確実。特に増えているのがアジアからの訪日客で、中でも中国は12年比94%増の10万1900人とほぼ倍増した。昨年9月の尖閣諸島の国有化後低迷したものの、今年9月にプラスに転換。3カ月連続で前年同月を上回った。

中国では、旧正月(春節)連休の旅行シーズンが到来する。これを狙って観光・航空業者などが様々なキャンペーンを展開している。 9月中旬に東京で開催された「旅行博」に昨年参加を見送った中国国家観光局が出展したのを「きっかけ」に、中国側は積極姿勢に転じた。日本の観光業者も中国各地で観光商談会を開催するなど機運は盛り上がっており、関係業者は「来年はもっと期待できる」と異口同音に語る。日本政府観光局は旅行業者との共同広告や微博(中国版ツイッター)での日本観光情報発信に力を入れている。

東京・銀座のデパートでは、外国人客による免税品売り上げが全体の10%に達した。化粧品や食品など免税にならない商品も含めた実際の外国人売上比率はさらに拡大。「高額商品を購入してくれる中国人の客足が戻ってきたのは朗報」(有名デパート店長)と期待している。日本政府が14年3月から訪日外国人への消費税免税対象品を拡大することも追い風。新たな免税対象は化粧品や食料品、酒などで、欧州などで実施されている出国時に消費税分を還付する方式が採用される。

中国人観光客を呼び込むためにアノ手コノ手の勧誘キャンペーンが展開されている。大阪府は中国・江蘇、浙江両省の旅行社14社と観光事業に関する覚書をこのほど締結。大阪へのツアーを企画し、年間6万人の中国人観光客を日本に送り出す計画だ。

宮城、岩手、福島の東北3県は、中国・大連市(遼寧省)で観光セミナー商談会を開催し、東京と東北を組み合わせた観光を提唱した。東日本大震災被災地を訪れた中国人観光客に数次査証(ビザ)を認める制度をアピール、「日本の文化と伝統が残る東北に足を運びませんか」と呼びかけた。

沖縄県の那覇港に寄港するクルーズ船の入港回数が14年に今年の1.8倍の103回に急増する見通しだ。13年は日中関係の悪化で中国からの寄港キャンセルが相次いだが、中国本土発は倍増する勢い。12月中旬には上海から1000人規模のクルーズ船が寄港、活気づいている。中国本土から沖縄への観光客は9月にほぼ1年ぶりに前年同月実績を上回り、10月には前年同月比1.8倍に急増した。

テーマパークのハウステンボス(長崎県)は、「中国人客を増やせ」を大目標に13年7月に台北市に開設した営業所を通じて、中国の旅行会社向け宣伝活動に本格的に乗りだした。

新潟県は今年夏、中国の旅行会社関係者10人を招き、佐渡の金山など名所を巡る旅行商品を作り中国人に勧めてもらうよう依頼した。

日本政府は外国人訪日者を東京五輪が開催される20年に2千万人、30年には3千万人に増やすことを目標としている。「20年に2千万人」が達成されれば、GDPを押し上げる金額は5兆3000億円、GDPに占める比率は1.1%まで高まる。

外国人旅行者を今の2倍に増やすための課題の一つは悪化している中国、韓国という近隣諸国との関係を改善し、親日家を増やすことである。フランス、イタリアなど外国人旅行客が多い国は隣接国から旅行客を集めている。特に巨大な人口を有し、外国旅行ができる中間・富裕層が増加している中国から、多くの観光客を呼び込むことが可能だ。

◆中国人海外旅行客の消費、10兆円を突破

日本の伝統料理「和食」がユネスコ無形文化遺産の登録が決まったことも好材料。富士山の世界文化遺産登録も、外国人客誘致への支援材料となる。静岡、山梨両県や観光業者は受け入れ態勢の拡充強化に乗り出した。静岡富士山空港も中国との定期便(上海、武漢長沙)やチャーター便に大きな期待をかけている。

こうした中、日本を含むアジア各国で、中国人観光客呼び込み競争が激化している。12年に海外旅行した中国人は11年比2割増の8300万人、旅先での支出額は中国系クレジットカードの普及もあり、前年比4割増となる10兆円を突破した。規模、伸び率で中国は2位のドイツ以下を大きく引き離している。中間所得層の拡大に伴い、中国の外国旅行者は20年には2億人まで増大する見込みだ。

日本政府は「中長期的な目標の達成には、隣接し富裕層や中間層が急増している人口大国・中国からの観光客をもっと呼び込む必要がある」(観光庁幹部)と期待している。

経済のグローバル化によって、人は国境をあまり意識しないで行き来できるようになった。今や世界中が旅行ブームと言える時代である。少子化による人口減少が避けられない日本にとって、中国など外国人旅行者の獲得は待ったなしの課題といえよう。

<「コラム・巨竜を探る」その37>

<「コラム・巨竜を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆、元時事通信編集局長)によるコラム記事。著書に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)など>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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