日本の産業チェーン移転は悪いことばかりではない―中国メディア

人民網日本語版    2020年5月21日(木) 10時10分

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最近、「産業チェーンの改革」の話は、根拠がないわけではなく、一種の警告のようで、世界にこれから起こる変化を暗示している。写真は中国のユニクロ。

最近、「産業チェーンの改革」の話は、根拠がないわけではなく、一種の警告のようで、世界にこれから起こる変化を暗示している。

中国の労働力コストと材料価格の上昇、環境保護政策の強化及び米国の中国からの輸入商品に対する追加関税が製品の競争力に影響を与えていることなどさまざまな問題により、ここ数年、日本の産業チェーンが中国から移転するという論調がずっと続いている。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が2019年12月に日系企業約5700社を対象に行った調査によると、産業チェーンの移転を検討する企業は10%で、電器製品や衣料品など川下の労働集約型企業に集中していた。

日本の英字新聞ジャパンタイムズの5月5日付記事によると、日本の経済産業省の幹部が、「感染症の爆発的流行の前にも、日本企業のASEAN地域における生産拠点の建設ニーズはますます大きくなっていた」という。

12年にも、日本企業はすでに「中国+1」の投資戦略を描いていた。中国の他にもう1カ所、別の生産拠点をもつという戦略だ。この戦略の下、日本企業は東南アジア各国への投資を拡大した。

東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏教授は、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に対し、「長期的にみて、日本政府の補助金計画にはある程度合理性がある。日本政府は日本の製造業企業が日本、中国、ASEANの間でよりよい生産バランスを実現することを奨励するからだ。日本政府の現在の補助金計画は日本とASEAN諸国とのよりよい関係構築を支援することにもなる」との見方を示した。

しかし藤本氏は、「産業チェーンの多様化と現地化が最終的に企業のコスト面の優位性を損なう可能性があれば、推進するべきではない。重要なことは企業の生産システムが競争力を備えながら、災難にも対応できるようにすることだ」との見方も示した。

上海対外経貿大学日本経済研究センターの陳子雷(チェン・ズーレイ)センター長は、「すでに感染症の前に、国際ビジネス環境には反グローバリゼーションの流れがきており、保護主義の出現が経済グローバル化プロセスに一定の影響を与えた。感染症は一部の国が愚かにも自国企業の呼び戻しを強行し、新型肺炎の影響によって生じた社会の矛盾を解決するための口実になっただけだ」と述べた。

ジェトロ上海事務所の小栗道明所長は、「企業の実際的な角度からみると、反グローバリズムはそれほど可能性の高いことではない。産業チェーンこそがカギで、このたびの感染症の打撃を通じて、チェーンがある程度地域化する可能性はある」と述べた。

実際、一部のメディアの分析によると、日本にとっても中国にとっても、産業チェーンの回帰は必ずしも悪いことではないという。

日本にとってみれば、製造業の回帰を奨励するにしても、製造業の海外移転に力を入れるにしても、産業チェーンを最適化し、産業チェーンをより整備して独立させ、さらに多様化させることが狙いだ。サプライチェーンを1つの国に集中するのは、卵を同じカゴに入れるようなもので、リスクが非常に大きい。

中国にとってみれば、汚染が高く、エネルギー消費が高い産業への規制が強化されたため、日本の化学工業原料産業は中国への依存度を徐々に引き下げている。ここ数年は、確かに一部の低付加価値の製造業が中国を離れ、より安価な労働力をもつ東南アジアなどの新興国に移るようになった。

ローテク産業が相次いで移転するということは、実は先端産業が進出する余地を作り出すということでもある。そのため、感染症が発生したかどうかに関わらず、企業の移転を奨励する政策があるかどうかに関わらず、こうした産業チェーンは駆逐されていく可能性がある。

陳氏は、「産業の高度化・モデルチェンジは本来は競争の過程だ。経済グローバル化はローテク製造業にふさわしい生存の空間を見つけられるようにし、1つの国の中ではなく、世界の中で居場所を選択できるようにした。中国は国土が広大で、産業の先端から末端まで、どこにでも生存できる空間があり、十分に産業展開を行える。一方で日本は違う。その戦略的奥行きがあまりなく、国土は狭く、人口は少なく、市場は小さい」と述べた。

英紙フィナンシャル・タイムズの5月13日付の報道も日本の苦境を伝えた。日本の「産業チェーン改革」を含む措置について述べる中で日本の大手企業のトップの話を紹介して、「日本で長年行われてきた政策はどれも島国であることへの不安をめぐって打ち出されたものだ」と伝えた。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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