石川希理 2020年7月3日(金) 23時20分
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長征というロケットを基礎にして、人間を乗せた衛星が出てきた。「神舟」という。
「長征」に乗る「神舟」、そして「嫦娥」へ。
「長征」というのは、中国共産党が第二次大戦前、当時の中華民国の軍隊などと戦いながら大移動した戦いのことである。「長征」という漢字は、遠くまで戦いに行く意味であるが、勇ましい。そして中国共産党ではこの「長征」がいまの中国の基礎を作った大きな因ということだ。
「戦争の話でっか?」
「いや、ロケットの話」
「あ、そうでっか…」
ワンがニヤリと笑う。犬が笑うのは気持ちがよくないが、もうすっかり慣れた。でまあ吾輩は無視した。
中国は、大陸間弾道弾に使うようなロケットを「長征」として宇宙開発に進出した。名称から判るように「さあ、やるぞ、遠くまで、出ていくぞ」と、勇ましい。日本のロケットが「H-IIB」などというのと違う。もっとも日本の場合は純粋に科学技術的な意味でつけられているらしい。
さて、この「長征」だが、最近のものは、有名だったアメリカのサターンという巨大ロケットより凄いという。
※アメリカは民間の宇宙進出を促し、つい最近、スペースX社が、ファルコン9と言うロケットで「クルードラゴン」宇宙船を打ち上げた。
この長征というロケットを基礎にして、人間を乗せた衛星が出てきた。「神舟」という。名前が柔らかくなった様な気がするが、「神舟」は昔の中国の呼称「神州」と同じ発音である。そして文字通り「神の船」という意味もあるかも知れない。ソ連の『ソユーズ』に似ている気がしないでもない…。
余談
「あら、また余談でっか? おもろいけど」
「日本はロケットに関しては、 『H-II』 なんだけれど…」
「まあ、ロケットの『H-II』という名前はおいといて、宇宙に旅立つのは、『こうのとり』 とか、『はやぶさ』 とか、いいじゃないんでっか」
「うん、そうだねえ、で、戦後最初のロケットはね…」
吾輩は糸川英夫博士を思い出した。最近、小惑星にイトカワと名前がつけられたが、博士は1955年に「ペンシルロケット」を、打ち上げたのではなくて横に飛ばした、日本の宇宙開発の父なのだ。
「ペンシルでっか」
「そう、文字通り、まあ、鉛筆よりは大きいものの、太めの筆のようなロケット」
「みじめ…」
「おいおい、1955年というと吾輩は8歳、それは関係ないか」
「おまへんな」
冷たいワンの声を無視した。
日本は敗戦の焼け野が原の中である。もう二度と立ち上がれないといわれた時代だ。東京大学生産技術研究所の力で、23センチのロケットを横に飛ばした。
「ロケットは上にあがるんでっしゃろ?」
「レーダーがなくて、上にあげると観測できなかった」
「あらま…」
「第二次大戦中からレーダーは長足の進歩をしたが、アメリカ中心。日本は極めて遅れていた」
閑話休題
というわけで、そこから発展した「こうのとり」の我が国の力も凄い。「こうのとり」は全長約10メートル、直径4.4メートル。6トンの荷物を積める。人を運ぶための実験機の意味もある。人間を荷物みたいに乗せていたら、届けられると言うことだ。もちろんその設備がないので無理だが。今年、任務が終わったらしいが、9回全て成功している。
けれど、中国も凄い。「天宮」は、国際宇宙ステーションに匹敵するものを作るために計画されている。コロナでどうなるか不透明だが2020年以降に完成するらしい。
「ワン! そうか、そこに行くのが『神舟』や」
「そう、宇宙船だ」
中国は宇宙遊泳も成功させている。
「宇宙ステーションいうたら、太陽パネル何枚も出して、円筒形の建物がアッチャコッチャに延びているものでっしゃろ」
「吾輩の子どもの頃は違った」
「あらら、ドーナツみたい」
「ま、ドーナツでもいいか」
「ひょっとして、しゃ……」
「えらい! ワン! そう! 車輪!」
これは、ゆっくり回転している。回転するものは接線方向に遠心力を生じる。すると重力の代わりになる。遊園地の回転する丸いブランコ遊戯機に乗ると、身体が外に押しつけられる。あれと同じだ。
「普通に生活できるんでんな」
「まあ、放射線などがあるにしても、一番大きな問題の重力は解決出来る」
「あ、マンガのスペース・コロニーや」
「よく知っているな、ワン」
「それ ほろ でも」
「それ ほど だ!」
「へい、あ、ワン!」
ドラム缶のお化け、直径が数キロもあるものを作って回転させると、遠心力で重力擬きが生まれる。だからドラム缶の内側に人が家を作る。見上げると頭の上に逆さまの街が見える。実際は、無重力はそのままだろう。そして、こんな巨大なドラム缶型はまだまだ作れないし、車輪型でもない。いまの国際宇宙ステーションみたいなものだろうが、近々に、中国の「天宮」が出来る。
アメリカやロシアやヨーロッパ、日本に対して、中国の宇宙基地だ。国際宇宙ステーションや「天宮」から、いずれ、月基地の建設や火星への旅が始まる。これを「第2次 大航海時代」という人もいる。
「楽しみやなあ」
「まあ、吾輩があと50年生きている間には、火星に到着するだろう」
「50年て!またまた出てきた!あほな!」
「うるさい! ワン!」
■筆者プロフィール:石川希理
1947年神戸市生まれ。団塊世代の高齢者。板宿小学校・飛松中学校・星陵高校・神戸学院大学・仏教大学卒です。同窓生いるかな?小説・童話の創作と、善く死ぬために仏教の勉強と瞑想を10年ほどしています。明石市と西脇市の文芸祭りの選者(それぞれ随筆と児童文学)をさせていただいています。孫の保育園への迎えは次世代への奉仕です。時折友人達などとお酒を飲むのが楽しみです。自宅ではほんの時折禁酒(笑)。中学教員から県や市の教育行政職、大学の準教授・非常勤講師などをしてきました。児童文学のアンソロジー単行本数冊。小説の自家版文庫本など。「童話絵本の読み方とか、子どもへの与え方」「自分史の書き方」「人権問題」「瞑想・仏教」などの講演会をしてきました。 ブログはこちら
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