<コラム>中国のバイオマスエネルギー利用産業

内藤 康行    2020年10月22日(木) 23時40分

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中国は、主に農業廃棄物、林業廃棄物、家畜および家禽糞尿、都市の家庭ごみ、有機廃水および廃棄物残留物を含むバイオマス資源が豊富である。写真は北京の生活ごみ。

バイオマスエネルギー資源の埋蔵量

中国は、主に農業廃棄物、林業廃棄物、家畜および家禽糞尿、都市の家庭ごみ、有機廃水および廃棄物残留物を含むバイオマス資源が豊富である。中国投資産業研究所が発表した「2020-2024年中国のバイオマスエネルギー利用産業の高度分析と発展計画諮問報告」によると、毎年エネルギーとして使用できるバイオマス資源の総量は約4.6億トン標準石炭に相当する。農業廃棄物資源量は約4億トン、標準石炭換算で約2億トン、林業廃棄物資源量は約3.5億トン、標準石炭換算で約2億トン、残りの関連有機廃棄物は約6000万トンで標準石炭に相当する。

稲藁利用:

国家発展改革委員会と農業部及び各関連部門と専門家による共同組織は、全国の稲藁の包括的な利用の最終評価を実施した。評価結果によると、2019年の国内主要農作物の理論的資源量は10.4億トン、採集可能な資源量は9億トン、利用量は7.2億トン、稲藁の総合利用率は80.1%であったとしている。肥料としての藁の利用量は3.9億トン、回収資源量の43.2%を占め、飼料用藁の利用量は1.7億トンで回収資源量の18.8%を占めた。藁の燃料化利用量は1億トンで、回収可能資源の11.4%を占める。藁の材料化利用量は2000トンで、回収可能資源の2.7%を占め、中国の「稲藁」の総合利用率は上昇トレンドにある。

林業余剰物とエネルギープラント:

2019年末現在、国の森林面積は2.2億ヘクタール、森林ストック量は175.6億m2である。30年来の継続的なメンテナンスエリアとストック量の「ダブル成長」を実現させたことで、林業バイオマスエネルギー利用の発展は大きな可能性を秘めていると言える。中国で利用可能な林業バイオマスエネルギー資源には、主に3つのタイプがある。その1つは木質繊維原料だ。薪炭林、灌木林、林業の「3つの余剰物」を含めると、総量は約3.5億トンに達する。二つ目は木質油資源である。中国には150以上の在来植物があり、林木種子含油率は40%を超えている。その中で桐油、ピスタシアなどの主要なエネルギー林木種の自然分布面積は100万ヘクタール以上で、優れたバイオ効果があるだけでなく、100万トン以上の果実を生産し、加工利用することで40万トン以上のバイオディーゼルを得ることができる。三つ目は木質澱粉植物だ。オークケルカスフルーツ、栗、シダ根など、オーク木種の分布面積は1610万ヘクタールに達する。1ムー(6.67アール)当たり100キログラムの収穫量で計算すると、年間のフルーツ生産量は2415万トンになる。これをすべて加工利用した場合、燃料エタノール約600万トンを生産できる。これらの豊富な林業バイオマス資源は、林業バイオエネルギーの持続可能な発展の優れた材料基盤を提供するだけでなく、使用用途も広いため、エネルギー危機の緩和やエネルギー構造調整と最適化し、更に持続可能なエネルギーを実現するための有力な資源保障となっている。

生活ゴミ:

2010年以降、中国の生活ゴミ廃棄物の除去・輸送量は年々増加し、2019年には2億トンを超え、前年比6.81%増にとなった。「第13次5カ年全国都市生活ゴミ無害処理施設建設計画」では、2020年までに都市生活ゴミ焼却処理能力は無害処理能力の50%以上とし、焼却施設処理能力は59.14万トン/日とし、新規建設規模は35.62万トン/日とする。生活ゴミには大量の可燃物が含まれ、生活ゴミは石炭燃焼の代替利用とし、焼却炉内での燃焼で発電、コージェネレーション、暖房供給を可能としている。生活ゴミ発電(暖房)は、生活ゴミを処理するだけでなく、再生不可能なエネルギー(石炭や石油)を節約する。また中国の電力不足を補うことも可能だ。2019年末現在、各種バイオマスエネルギーの中で、ゴミ焼却発電の発電ユニットはバイオマス発電の総発電ユニットの53%を占め、トップとなっている。

バイオマス発電ユニット規模:

ある研究院が発表した「2020-2024年中国バイオマスエネルギー利用産業の高度分析と発展計画レポート」によると、2020年上半期ではバイオマス発電の新設ユニット容量は151万Kwに達し、累計ユニット容量は 2520万Kw(広西チワン族自治区のバイオマス発電所を含む)となった。その中で、生活ゴミ焼却発電の新設ユニット容量は86万Kwで累計ユニット容量は1300万Kw、農林バイオマス発電の新設ユニット容量は57万Kw、累積ユニット容量は1138万Kw、メタンガス発電の新設ユニット容量は8万Kw、累積ユニット容量は 83万Kwとなった。

2020年上半期のバイオマス発電量は618.2億kWh、前年比23.7%増、このうち生活ゴミ焼却発電量は355.9億kWh、前年比40.8%増、農林業バイオマス発電量は244.3億kWh、前年比5.6%増となった。メタンガス発電量は18億kWhで、前年比13.8%増加している。

バイオマス発電の累計ユニット容量ランキングトップ5は、山東、広東、江蘇、浙江、安徽で、それぞれ303.8万Kw、272.6万Kw、209.1万Kw、206.3万Kw、199.9万Kwである。 新設ユニット別では広東、江西、河北、広西、山西で、それぞれ26.3万Kw、18.7万Kw、13万Kw、12.4万Kw、11.1万Kwである。年間発電量ランキングトップ5では、広東、山東、江蘇、安徽、浙江の各省で、それぞれ76.4億kwh、74.2億kwh、59億kwh、52.8億kwh、51.6億kwhだった。

中国のバイオマスエネルギー利用は年々拡大しており、同産業の成長トレンドは堅実に維持してゆくだろう。

■筆者プロフィール:内藤 康行

1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。

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