ブルートレインの「引退」、中国人鉄道ファンも嘆く=日中鉄道の移り変わり

Record China    2014年1月25日(土) 10時36分

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最近、「ブルートレイン」と愛称される日本の寝台特急は、現在わずか2本程度が走っているものの、今年から順次廃止になるということが明らかにしました。写真は中国の鉄道。

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最近、「ブルートレイン」と愛称される日本の寝台特急は、現在わずか2本程度が走っているものの、今年から順次廃止になるということが明らかにしました。このニュースが出ると、鉄道好きの人たちの悲鳴が聞こえています。政治家の石破茂氏もこの件に対して、非常に残念と言っています。

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鉄道ファンとは、鉄道や電車などに他人より深い愛情を持っている人たちです。鉄道ファンにとっては様々な形の列車が「乗り物」を超える意味を持っています。だから、何かがなくなるということは、客観的に見て合理的であるにしても、鉄道が好きな人たちにとってはなかなか受け入れられることではありません。

私も幼い頃から鉄道が大好きで、日本に来てからも、列車に対する感情をそのまま抱いてきました。日本では走行距離が長い夜行列車などの少なさに驚きました。

▼ブルートレインは「時代遅れ」なのか

新幹線があまり好きではない、また経済的にも厳しいので、日本での旅行ではほとんど車で移動していますが、わざわざ並走する鉄道を走っている電車を撮ったり、田舎にある第三セクター鉄道(いわゆるローカル線)の駅を訪ねて、本数がかなり少ない気動車の来るのを待ったりすることをよくします。

しかし、都会の10両編成の通勤電車よりも田舎の1両しかない気動車よりも、機関車により牽引される旅客列車の魅力は圧倒的に大きいと私はずっと思っています。見た目の迫力だけではなく、それに乗って旅をすることこそ長距離移動を楽しめると考えるからです。

SLが最高だと思っているわけではありませんが、古いものは好きです。例えば、群馬と長野の県境にある旧信越本線にはとても興味を持っており、もう電車が走らない碓氷峠にある旧線跡に何度も行って、昔の機関車に連携させることによって勾配を克服する運行方式の様子を想像しながら新幹線が起こした影響に感嘆したりすることもあります。

今回のブルートレインがなくなる件も、この新幹線が北海道まで延びていく結果になるわけです。しかし、旧信越本線が機関車の牽引作業のコストが非常に高かった、かつ利用者のほとんどが新幹線利用に移ることの予測ができたとの理由で、新幹線の開通とともに廃止されたことに対して、北海道と本州を結ぶ寝台特急の廃止は喫緊なコスト削減の必要性があったわけでもないし、利用者がいなくなるとも言えない状況だと思います。だから石破幹事長も、このことを聞いて驚いた表情をしたのでしょう。

ブルートレインを愛する鉄道好きの人のためにもそれを絶滅させるべきではないと言いたいのですが、決まったことは決まったことですし、冷静に考えるとこの事態が避けられない傾向であることも認めなければなりません。鉄道の歩みは、日本でも中国でも一緒だと実感できます。速い高速鉄道ができて、在来線の長距離特急や急行がなくなるのが、残念なことですが日中両国でも進んでいます。

▼中国の鉄道事情

中国では高速鉄道の建設ラッシュですが、新たな建設は不可能の地域があったりします。また国土が広いのでいくらあってもまだまだ足りない状況で、在来線の列車は現在でも大きな役割を果たしています。しかし既に高速鉄道ができているところでは、かつての列車の姿が見られなくなってきています。これは高速鉄道と在来線の間の話だけでもありません。1990年代から今までにあった複数回の「鉄道スピード引き上げ」施策がされるたびに、なんらかのものが中国の鉄道から消えてしまうわけです。

最初は「緑皮車」と呼ばれる緑塗装の普通列車が少なくなって、白地に青のストライプ塗装の直通特急に代替されたのですが、高速型車両の導入により直通特急も数年後に代替されました。在来線では高速車両でも200km以上のスピードは出せないので、当時の長距離列車には、新幹線車両でありながら寝台車もあるというおもしろいものもありました。しかしそれ以降わずか2・3年で高速鉄道が建設され、これらの「在来線高速列車」もそれとともに舞台から去りました。

今日では、高速鉄道が人々の移動方法の主役となったのは事実です。数年前に発生した事故では、日本人や日本メディアに揶揄されたり非難されたりしました。運行開始当初、多くの鉄道利用者からは運賃が高いから使わないと言われていました。しかし中国の高速鉄道は、結局スピードによる利便性とその後の実績で利用者を説得できたのです。さらに、新しい需要も創出し、かつて遠出をしなかった人にも、今では「快適で時間もかからないから」と、外出の魅力を感じさせ始めました。

移動のスピードの大切さは、特に中国ではかなり強く感じられます。日本の東京から名古屋や大阪間の距離では、中国では一つの省からも出られません。だから高速鉄道ができたというのは、大阪−東京間の8時間を2時間まで短縮したというスケールではなく、主要都市間の移動を16時間から4時間にまで短縮したという意味を持ちます。高速鉄道がもたらした肉体的辛労の軽減は、日本におけるそれの比ではありません。

これが喜ぶべきことである一方、鉄道ファンに対しては複雑な思いを与えるものでもあります。鉄道は日進月歩で、記憶の中のものとは別のものになってしまいました。寝台車で景色を楽しみながら次の目的地に着くまでゆっくりリラックスすることはできなくなっています。

▼「ななつ星」もいいけど、やっぱり「ブルートレイン」

在来線は旅客列車がどんどん消えてしまって、利益率の高い貨物業務用のものになりつつあります。中国の貨物運輸は日本と違って鉄道に頼っているからです(高速鉄道の建設の目的には、在来線を貨物運輸に専念し効率を向上させるという意味もあるのです)。そして「緑皮車」のイメージも「昔のもの」となりました。

去年、南京から黄山の普通列車が鉄道愛好者やメディアの宣伝によって、一時的に賑わうという出来事がありました。同列車は沿岸部各省に唯一の普通緑皮車になったので、人々の興味や郷愁の念を想起させたのです。

このようなことは、これから中国各地で次々に起こるかもしれません。しかも、中国の観光地はそれぞれ距離が離れているため、観光目的で一部の短距離普通列車を残すこともありません。いつの日か、日本のブルートレインのように完全に消える車種が出てくることでしょう。

これを考えて、日本のブルートレインがなぜなくなるのか分からなくなりました。日本という国は、海も山も美しく、車窓からよい景色を眺めることができるところなので、中国人が車内で感じるような「つまらなくて、長くて辛い乗車時間」のような体験はしないはずです。鉄道に熱意を持っている人も明らかに多くて、ブルートレインは彼らにとって夢のような存在だと言えます。(一方空調のない緑皮車は、中国の新世代の人たちにとってやはり魅力がありません)

ブルートレインの代わりに、「ななつ星」のような超豪華観光列車が時々出てきますが、それはやはり庶民的ではなく、「夢」の対象にはなれても「愛する」ものにはなれません。こう見ると、ブルートレインの消滅は、本当に悲しいことです。

◆筆者プロフィール:ボクヨウ

1991年中国湖南省生まれ、2011年に留学生として来日。2012年から日本での車旅行を始め、翌年に日本列島走破という目標を達成。現在でも様々な旅を続けている。

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