中国の若者はなぜ「新しい貧乏人」になったのか?―中国メディア

人民網日本語版    2020年8月30日(日) 16時0分

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中国の90年代生まれは1人あたり平均12万元(約180万円)もの負債を抱えるという。彼らの多くは従来の意味での貧乏人ではなく、「新しい貧乏人」と呼ばれる。写真はスターバックス。

100から200メートルほどの横町には10数軒のバーがひしめき、街角の串焼きの店には美男美女が集まり、顔をほてらせながら食事を楽しんでいる。食べたり飲んだりは一番お手軽な消費だ。20数万平方メートルの空間には、若者の消費文化がまるでショーウィンドウのようにずらりと並んでいる。革の財布を手作りして暮らしへの情熱を表してもいいし、ジムに行くごとに料金を支払って自分の体を管理することへのこだわりを示してもいいし、数十匹の猫と午後の時間を過ごしてもいいし、自分に合う眉毛をカスタムオーダーで作ってもいい。ショッピングセンターは、夢の暮らしを提案する場所であり、幸福感を作り出す場所だ。

もちろんこうした体験をするには100元(約1500円)くらいの、あるいはもっとたくさんのお金が必要だ。一部の都市では若者のホワイトカラーは給料の3分の1から2分の1を家賃に充て、食事は毎食デリバリー、大作映画がかかれば見ないわけにはいかず、新しいスマートフォンが発売されれば機種交換しないわけにもいかないという状態だ。七夕、「520」、「ダブル11」などショッピングイベントは目白押しで、誰かへのプレゼントか自分へのご褒美が恒例になっている。

90後(1990年代生まれ)は1人あたり平均12万元(約180万円)もの負債を抱えるという。このデータにはいささか大げさであるものの、彼らの多くは従来の意味での貧乏人ではなく、「新しい貧乏人」と呼ばれる。高等教育を受け、一定の美意識をもつ一方で、経済力はブルーカラーと大差なく、都市の周辺に暮らす若者たちだ。

「新しい貧乏人」たちは往々にして消費観と生活状態の矛盾に直面している。一方でデータが示すように、35歳以下の若い中国人は、老後のための貯蓄を始めていない人が56%に上り、一部の若者は「貯蓄ゼロ、負債多額」だという。また一方で2019年のショッピングイベント「ダブル12」のデータが示すように、90後はこのイベントで前年より27億回も多く買い物したといい、中国全体の90後1人あたり平均10回多く買い物した計算になる。消費者金融の花唄や白条、またはクレジットカードを利用しながら、バスケットシューズや口紅を爆買いして、90後は今や明らかに次世代の消費の中心だ。

90後が「新しい貧乏人」になった原因は主に2つあると考えられている。1つ目は彼らが親たちのように貧しい時代を経験していないこと。2つ目はフィンテックがお金を借りる便利な手段を提供してくれていることだ。信用記録に問題がなければ、基本的に彼らは借りようと思えばすぐにお金を借りられる状況にある。この「新しい貧乏人」の消費を分析してみると、旅行、健康作り、贅沢品、自動車、ペットなどに集中していることがわかる。全体としていえるのは、いずれも純粋な消費行動ということだ。そしてこうした現象には警戒が必要だ。

90後の過剰な消費をあおる業者もある。

アップルはかつて、音楽プレイヤー「iPod」(アイポッド)のバッテリー寿命を18カ月と設計し、スマートフォン「iPhone」(アイフォーン)を修理しにくくし、わざと新型の5角形のネジを採用していた。こうしたやり方は企業側の「計画的スクラップ戦略」と呼ばれた。メーカーがわざと故障しやすい製品を作り、消費者が新たにお金を払って買い換えざるを得ない状況を作り出していたのだ。

こうしたやり方が徐々に過去のものになると、アップルは今度はカラフルなスマートフォンをそろえて大量に売りさばく手段に打って出た。これは1920年代にゼネラルモーターズ(GM)のスローン社長が元祖だ。スローン氏は売り上げを伸ばすため、消費心理を一新させる手法「計画的陳腐化」を創造した。

この手法は自動車に性能や技術の大幅な改善がないときに、カラーやデザインを変えて消費を促進するというもので、スローン氏は消費者に車にとって最も重要なものは何かを忘れさせ、新しいカラーを追いかけるべきトレンドへと祭り上げた。

業者に包囲攻撃されて、若者はあっという間に「新しい貧乏人」になってしまった。業者のやり方をよく知っていても、自分をコントロールできない。

2019年にノーベル経済学賞を受賞した3人の研究者が、「貧乏人の経済学」の概念を打ち出した。貧乏であることの根本的な原因は貧乏人が資源と余剰の利益を有効に利用できないこと、本来は未来の発展に利用されるべき資本的支出が大量に浪費されていることにあるという。現在、こうした90後の「新しい貧乏人」は、明らかに過度の消費という泥沼に足を踏み入れて抜け出せなくなりつつあり、徐々に「貧乏の罠」に陥りながらそれに気づいていない。彼らは何かモノを手に入れるために頻繁にお金を使い、いいと思えば新しい商品が出るたびに買い換える。たとえ不合理だとわかっていても、結局、一時的な満足感を得ることを繰り返してしまう。このような暮らし方は絶対に長続きしない。

高額の負債は過剰な消費行動が招いたもので、最終的に本当に貧乏になってしまう可能性がある。若者は冷静にならなければならない。買い物することばかり考えるより、実のあることにより多くエネルギーを振り向け、自分の手で価値を生み出し、自分のためによりよい未来を切り開く方がいい。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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