中国7~9月GDP、4.9%増=コロナ対応で“一人勝ち”、30年までに米経済抜く

Record China    2020年10月19日(月) 12時50分

拡大

コロナ禍への対応で米中経済の明暗が鮮明だ。中国国家統計局が19日発表した2020年7~9月の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.9%増えた。写真は中国の製造工場。

コロナ禍への対応で米中経済の明暗が鮮明だ。中国国家統計局が19日発表した2020年7~9月の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.9%増えた。投資や輸出がけん引役し、伸び率は4~6月(3.2%)より拡大した。他国に先駆けて経済は正常化しつつあり、成長が加速。4~6月期の中国GDPが前年同期比3・2%増と先進国に先駆けてプラス成長を確保したが、さらに弾みをつけた。

一方、米国ではコロナ感染者が増え続け、4~6月期の米GDPは年率換算で前期比32・9%マイナスと、統計開始以来の落ち込みを記録。消費支出も年率34・6%マイナスとなった。

国際通貨基金(IMF)など有力国際機関の予測を分析すると、米中のGDP経済規模は30年までに逆転する見通しだ。経済力の実態を示す購買力平価方式では14年に米中が逆転した。米国には経済覇権を握られることへの焦りもある。

◆IMF、2021年に8%成長予測

IMFの予測が先週改定された。注目は中国経済の復活ぶりである。2021年に8%成長となり、米国の経済規模の4分の3以上に迫るという。徹底した新型コロナウイルス感染抑制が「中国一人勝ち」の最大の要因のようだ。

10月上旬に中国・国慶節(建国記念日)大型連休の免税品購入客は前年同期比44%増。同時期の国内旅行者数は6億人強と前年の8割に回復した。中国では新規感染者数がほぼゼロまで減少、いち早く危機を封じ込めた。IMFによると、4~6月期の実質GDPは3.3兆ドル(約350兆円)となり、年率換算で30%超のマイナスだった米国(4.3兆ドル)との経済規模の差を23%に縮めた。

IMFの予測通りに推移すれば、米国のGDPは単純計算で21年に21.2兆ドル、中国は15.8兆ドルとなる。中国の経済規模は金融危機の08年時点で米国の3分の1以下(31%)だったが、21年には75%を超えるという。予測通りに推移すれば2030年までに米国を追い抜くのは確実とされる。

中国は2050年までに米国に代わる超大国になることを目標に掲げ、米国の警戒心に火をつけた。米国は慌てて世界の通信網や海底ケーブルなどから、中国排除に動くが手遅れの感は否めない。このままでは従来の覇権国家と新興の2番手国家が衝突する「トゥキディデスの罠」に突き進むとの懸念も根強いが、米ソの東西両陣営が交わりを断って鋭く対立した20世紀後半と異なり、今の米中は深い相互依存関係にあるのが米ソとの決定的な違いだ。

◆アジア・南米・アフリカに進出

米中対立の長期化を見越し、中国はアジア、中南米、中東、アフリカを中心に支持を固めている。広域経済圏構想「一帯一路」、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、中国、ロシア、インドなど8カ国で構成する上海協力機構のほか、中東欧や南米など世界各地で多国間の枠組みができている。

今年1~6月の中国貿易統計によると、コロナ禍の下、ASEANとの貿易額がプラスを維持し、国・地域別で欧州を抜いて初めてトップになった。中国全体の6月の輸出は前年同月比0・5%増の2135億ドル、輸入は同2・7%増の1671億ドル。ともに増加したのは昨年12月以来半年ぶりである。

さらにアフリカ、中東、南米諸国の多くがファーウェイに代表される、中国の安価で高性能のハイテク製品への依存を深めている。アフリカの4G基地局の7割はファーウェイ製で、5Gへの転用を考えれば脱ファーウェイは非現実的。ジンバブエやベネズエラ、イランなど60カ国以上が中国と契約し、AIを使った中国流の都市監視システムを導入する。

中国企業は5G対応機器、高速鉄道、高圧送電線、再生可能エネルギー、デジタル決済、AIなど広範囲にわたり世界をリードしつつある。低成長に苦しむ国々にとって、中国の巨額投資や巨大市場は魅力的だ。

◆米国の対中デカップリング、奏功せず

欧州各国はこの10年ほど、中国と経済的な結び付きを強めてきた。米国が対中攻撃を強め対中デカップリング(切り離し)を求める中、英政府は高速通信規格の「5G」網から中国のファーウェイを排除することを決めたが、欧州ではドイツやフランスをはじめ、5G網に同社製を採用している国が多く、英国に追随する動きはほとんどない。昨年のEUにおける中国企業の投資額が120億ユーロ(約1兆4550億円)近くに上る。在中国EU商工会議所が在中企業に対して行った最近の調査によると、9割の企業が投資を中国から他の国へ移動する予定はないと回答。欧州の製薬企業や医療技術企業などは、最近中国での売り上げを伸ばしている。販売市場および生産基地としての中国は巨大な市場であり、欧州企業の計画に不可欠という。

途上国を中心とした大半の諸国は民主主義や人権にはあまり関心がなく、重視するのは「経済」。コロナ禍でその傾向が強まっている。多くの国にとって最大の貿易投資国は中国であり、本土との窓口である香港にも世界各国の多数が進出している。

◆世界の大多数国、最大貿易相手は中国

日本でも製造・金融・流通・観光業界首脳は日本経済の成長戦略を、最大の貿易投資相手国である中国との連携強化を主軸に描いている。経済界幹部は「日本の隣国の中国とは歴史的な絆があり、その時々の政治によって数十年かけて築いたビジネスのパートナーシップの成功を覆すべきでない。14億の経済パワー抜きでは日本経済は成り立たない」と語る。

経済産業省の海外事業活動基本調査によると、日本の製造業の多くは、中国に設立した現地法人の売上高を伸ばしている。

日本企業を対象とした中国市場の重要性に関する調査によると、中国市場について「今後さらに重要性を増す」「今までと同程度に重要性を維持する」との回答を合わせると7割以上に達する。20年上半期の日中貿易統計を見ても、日中間のサプライチェーンは最適化され安定した状態にある。日本政府は製造業に対する移転支援策を打ち出しているが、その効果は限定的だ。

トランプ大統領は「中国から生産拠点を米国に戻し、米国を製造業大国にする」と豪語するが、現状では掛け声倒れ。在上海アメリカ商工会議所の調査によると、中国で事業を展開しているアメリカ企業の70%以上が、生産拠点をアメリカに戻す計画がないことが分かった。「依然として中国市場は大きなチャンスであり、米中政府の関係修復を望む」(ギブス同会議所会頭)と訴える。

アジア太平洋の経済相互依存で、日本は絶好のポジションに位置する。米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)と中国、韓国、東南アジア、インドなどが加わる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をともに推進し結合させればこの地域の繁栄と安全に繋げられる。

財務省発表の9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、対中国の輸出額は前年同月比14.0%増の1兆3417億円。半導体製造装置や自動車などの輸出が伸びた。伸び率は2018年1月(30.8%増)以来の大きさだった。

IMFの経済予測によると、日本ではデジタル化で後れを取った上に産業の新陳代謝も進まず、21年になっても2%台の成長にとどまる。日本は中期的な潜在成長率が高齢化などで0.5%と低いのが泣き所。巨額財政赤字に直面する日本は財政出動の効果も限定的で、大きな外需依存もマイナス要因となるという。

欧州も落ち込みが大きく、ユーロ圏の20年の成長率見通しはマイナス8.3%。中国向け輸出が多いドイツはマイナス6%と比較的底堅いが、経済が観光に依存するイタリアはマイナス10.6%、スペインはマイナス12.8%と大幅ダウンは避けられないようだ。

各国の財政拡張は金融緩和で国債を大量購入する中央銀行が支えるが、債務の膨張が続けば、長期的には金利上昇を招いて財政の持続が危うくなりかねない。コロナ禍で世界経済は大きな転換点を迎えている。(八牧浩行

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業務提携

Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら

業務提携