中国はウクライナ問題でどう動くのか?EU加盟が実現すれば中国の国防に打撃

Record China    2014年3月5日(水) 11時18分

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日増しに緊迫するウクライナ情勢。関連してロシア、欧州、米国の動静が報じられていますが、では中国政府はどのような動きを見せているのでしょうか。

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日増しに緊迫するウクライナ情勢。関連してロシア、欧州、米国の動静が報じられていますが、では中国政府はどのような動きを見せているのでしょうか。

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実は昨年12月、中国とウクライナは「領土の一体性」を相互に支持するとの合同声明を交わしています。ロシアによるクリミア切り取りの動きはその声明に反するもの。中国はロシアとの関係、自国の軍事的・経済的利益をてんびんに掛けながらの苦しい状況に追い込まれています。

■「領土の一体性を尊重」…わずか1日で消えた文言

中国外交部の定例記者会見では3月2日、3日とウクライナ情勢に関する答弁がありました。ところがこのわずか1日の間で、中国側の立場には微妙な変化が生じています。

▽中国外交部ウェブサイト、2014年3月2日

Q:

3月1日、ロシア連邦議会は、ウクライナ国内のロシア人、同胞、ロシア軍兵士の安全を守るためとして、プーチン大統領に軍事力行使の権限を与えました。このようなウクライナ情勢についてどうコメントされますか?

A:

中国側はウクライナ情勢について深く注目している。ウクライナ国内で見られた極度の暴力行為については批判する。ウクライナの各勢力は法律の枠組に基づいて平和的に内部の亀裂を解決し、ウクライナの各民族人民の合法的権益を擁護し、いち早く社会の正常な秩序を取り戻すべきだと促してきた。

中国は一貫して内政不干渉の原則を堅持しており、ウクライナの独立、主権、領土の一体性を尊重する。ウクライナ情勢がここまで発展してしまったのには原因がある。中国側は注意深く情勢を見守る。国際法と国際関係の基本ルールを尊重するという基礎のもと、対話と交渉によって政治的対立を解決し、地域の平和と安定を維持するよう、各派に促すものである。

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▽中国外交部ウェブサイト、2014年3月3日

Q:

ロシア議会はウクライナに対する軍事力行使を承認しました。中国側はロシア側を外交的に支持しますか?中国側はウクライナ新政権を承認しますか?

A:

第一の問題については昨日の表明に注目してください。中国政府はウクライナ問題について、外交原則と国際関係の基本ルールの順守を堅持しています。同時にウクライナ問題の歴史的経緯と現実の複雑性も考慮しています。中国の立場は原則の堅持であると同時に、現実に基づいて行動すること、つまり客観的、公正、公平、平和的であると言えるでしょう。

第二の問題についてはウクライナの法律に基づいて判断しなければなりません。

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2日の報道官答弁では「領土の一体性を尊重」と明言しているのですが、3日の答弁ではその言葉が消えています。一応、前日の表明に注意して欲しいとの文言も入っているのですが、こうした答弁では従来の表現を繰り返し使用するのが定石であり、消えた文言は大きな意味を持ちます。

代わりに「現実に基づいて行動」との文言が入りました。ロシアの行動への配慮、将来的にロシア支持に転じられるよう含みを残した言葉と見るべきではないでしょうか。なお同3日、中露外相は電話会談を実施。ロシア外務省は「幅広く見解が一致した」と発表しています。

■中国とウクライナ

さて最後に中国にとってウクライナはどんな存在か、どのようになるのが望ましいのかについて簡単に。

中国とウクライナは昨年から急速に関係を深めています。9月には「中国がウクライナ全土の20分の1を借り上げ」という誤報が流れましたが、それも農業技術協力などの経済関係深化のニュースが激しく誤訳された結果です。

12月にはキエフでのデモが続く最中にヤヌコビッチ大統領が中国を訪問。中国・ウクライナ友好協力条約に調印しました。ちなみに「国家の主権、統一、領土、領土の一体性の問題における両国相互の強い支持は戦略的パートナー関係の重要な内容であると両国は強調」「ウクライナが核兵器の使用による侵略、あるいはこの種の侵略という脅威にさらされた場合、ウクライナに相応の安全保証を提供する」との条項が含まれています。ウクライナ新政権が「ロシアに領土を切り取られそうなんですが」「核を持ってるロシアに脅されているんですが」と言ってきたら中国もばつが悪いんじゃないか、と。

このヤヌコビッチ大統領の訪中ですが、最優先の目的は金を借りること。国債買い上げを打診したはずですが、中国は計80億ドルもの投資を約束しつつも、国債買い上げについては言質を与えていません。そもそも現在のウクライナの混乱は複雑な歴史的背景があるのはもちろんですが、直接の要因はウクライナにデフォルトの危機が迫っていることにあります。欧州の「金を出してもいいけどIMFの管理下に入れよ。燃料補助金とか社会福祉削れよ」というつれない態度を前に、ヤヌコビッチ大統領がロシア側に転んだという背景があるわけです。まあすでにデモが始まっているタイミングだったとはいえ、あの時中国が国債ドカ買いを表明していたら事態に変化はあったかもしれません。

■ウクライナ問題が中国の軍事に影響

というわけで、ウクライナの混乱が続けば中国の投資がパーになるリスクが潜んでいます。それ以上に問題なのは軍事面です。

中国はロシアから多くの兵器を輸入していますが、同時にロシアが売ってくれないものをウクライナから入手するという裏技も使っています。空母・遼寧号もウクライナから。その艦載機であるJ-15もウクライナが保有していたSu-33の試作機T-10K-3を輸入することで開発に成功しています。

もしウクライナがEUに加盟すれば中国への武器禁輸義務も課されるわけで、中国の軍事開発には大きな影響を受けることになります。とはいえロシアの影響力が強化されても迂回(うかい)輸入は困難に。針がどちらに揺れても軍事面では中国にあまり得がないという厳しい状況です。

◆筆者プロフィール:高口康太(たかぐち・こうた)

翻訳家、ライター。豊富な中国経験を活かし、海外の視点ではなく中国の論理を理解した上でその問題点を浮き上がらせることに定評がある。独自の切り口で中国と新興国を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。

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