中国経済は目下好調だが、将来不安も=成長の芽を摘まない民間重視策を―立石信雄オムロン元会長

立石信雄    2021年7月18日(日) 8時10分

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中国の多くの有力大学などで講演し、経営者や教授・学生とディスカッションした経験から、中国経済の将来を左右するのは、自由な発想に富む民間企業の活力であると認識している。写真は北京・故宮。

中国経済はコロナ禍を世界に先駆けて乗り越え、今年になっても順調のようだ。先週発表された今年4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除く実質成長率が前年同期比7.9%だった。5期連続のプラス成長で、今年上半期(1~6月期)は前年同期より12.7%増加した。

4~6月期の指標を具体的に見ると、生産の動きを示す鉱工業生産が前年同期比で8.9%増だった。世界経済の復調もあって輸出も好調を維持した。4~6月期の輸出額は8092億ドル(約89兆円)と四半期ベースでは過去最高を記録。景気が急回復する米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが好調で、過去最高となった。

コロナ禍からの経済回復を引っ張ってきた投資は、固定資産投資が1~6月で前年同期比12.6%増、不動産開発投資は同15.0%増。消費の動きを示す小売総額は同23.0%増だった。

ただ先行きの懸念材料は多いようだ。特に中国経済の底辺を支える民間中小企業の経営状態は厳しく、製造業の景況指数も低下傾向にある。輸出も下半期は減速する可能性があるという。個人消費の伸びは頭打ち傾向で、新車販売台数も5、6月と前年割れになった。

新型コロナウイルス禍で昨年打撃を受けた雇用や所得の回復も遅れている。特に問題なのは若者の就職難。この夏中国の大学、短大、専門学校の卒業生は過去最高の900万人超になる見込みというが、就職が決まらない学生が目立つと報じられている中小零細企業の多くは、資源高を背景とした卸売物価上昇などコスト高に苦しんでいる。これら企業向けの貸し出しを増やす狙いから中国人民銀行は預金準備率を引き下げた。

こうした中、習近平指導部は国有企業を重視する一方、大手IT企業など民間企業への統制を強めている。なかでも資本市場の証券違法活動を厳格に取り締まる新たな規制、インターネット安全保障策の強化は内外への影響が大きい。中国のインターネット規制当局は海外に上場を予定する中国企業について、個人ユーザー数が100万人超の場合、審査が必要と発表した。中国企業の米国上場のハードルは一段と上がる。

筆者は2000年前後に中国の多くの有力大学などで講演し、経営者や教授・学生とディスカッションしたことがある。この経験から、中国経済の将来を左右するのは、自由な発想に富む民間企業の活力であることと認識している。過剰に締め付ければ優良な企業の成長力が失われ、雇用にも影響することを危惧する。

中国経済は目下好調だが不安は残る。将来に向けた成長の芽を摘まないような施策が望まれる。

<直言篇166>

■筆者プロフィール:立石信雄

1959年立石電機販売に入社。1965年立石電機(現オムロン株式会社)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。 日本経団連・国際労働委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)『The Taylor Key Award』受賞。同志社大名誉文化博士。中国・北京大、南開大、上海交通大、復旦大などの顧問教授や顧問を務めている。SAM(日本経営近代化協会)名誉会長。エッセイスト。

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