八牧浩行 2014年3月30日(日) 7時38分
拡大
タカ派色が強い安倍政権にあって、ハト派リベラル勢力とされる自民党岸田派(宏池会)会長を務める岸田文雄外相が注目されている。28日の講演で「安全保障、憲法改正、歴史認識の分野で宏池会としての考え方を示していきたい」と明言、独自色を示す意向を表明した。
(1 / 2 枚)
タカ派色が強い安倍晋三政権にあって、ハト派リベラル勢力とされる自民党岸田派(宏池会)の会長を務める岸田文雄外相の存在感が増している。3月28日に日本記者クラブで行った講演で、「安全保障、憲法改正、歴史認識の分野で宏池会としての考え方を示していきたい」と明言、独自色を示す意向を表明したのだ。
【その他の写真】
岸田外相はこの講演の冒頭、「外相に就任して1年3カ月になるが、(1)日米同盟の強化、(2)近隣諸国との協力関係の重視、(3)日本の経済再生のための経済外交の展開―を3本柱としている」と切り出した。
特に近隣の中国、韓国との関係はアジアの平和と繁栄にとって重要であると指摘した上で、「個別の首脳会談が開かれていないことは残念だ。日中、日韓とも関係改善を推進しなければならない」と強調。「難しい個別の問題があるからこそ、政治の高いレベルの対話がなければならない。中国、韓国両国は残念ながら、など個別の問題で日本の対応が先決だとの態度をとり続けているが、歴史認識や領土問題はお互いにすぐに譲ることができない。これらを解決しないと会談を開催しないということではなく、応じてもらえるよう努力していきたい」と強く訴えた。
また、経済をはじめ民間の様々な分野では日中韓3カ国間で濃密な協力が行われていると指摘、「この協力関係を粘り強く積み重ねていく」と民間交流に期待した。
自民党の中でリベラル勢力が弱体化しているのではないかとの質問に対し、「宏池会が戦後の自民党や日本の政治の中で、リベラルな政策を推進し独自の存在感を示してきたことに誇りを持っている」と指摘。「様々な考え方がある中で、バランス感覚があって偏りがないことが国民の安心感や信頼感につながっていると思う。(宏池会の)活動をしっかり続けていきたい。今の時代の中でも、偏った考え方だけでないことをしっかり示していきたい」と独自色をもっと出していく考えを強調した。
◆ハト派、タカ派問わず安心安全確保へ対応
岸田外相は「宏池会はハト派リベラルと言われるが、具体的な中身は項目分野において時代とともに変化している。安全保障、憲法改正、歴史認識などは厳しい現実の中で、ハト派であってもタカ派であっても、国民の安心安全を守るためには最低限の対応をしなければならない」とも語り、複雑な胸の内を明かした。
このところ安倍首相への苦言が目立つのが古賀誠・宏池会名誉会長。集団的自衛権の行使容認にまい進する安倍首相を「自分が首相で権力者だから自分で決めるというのは愚かなお坊ちゃん的な考え方」とこき下ろした。古賀氏は集団的自衛権の行使を解釈で行おうとする姿勢についても「そういう姑息なことは絶対やってはいけない。憲法改正で集団的自衛権をどうするかという筋道が正しい」と批判した。
岸田外相は古賀氏に近く、「賛成か反対かという単純な議論というわけにはいかない」などと閣僚では初めて集団的自衛権の行使に慎重論を唱えている。28日の講演では「安倍政権の一員なので安倍首相の方針と同じ」と述べたものの、心情は複雑のようだ。
政界では古賀氏だけでなく、青木幹雄・元参院議員会長、野中広務元官房長官らが安倍首相の国家主義的な政策を批判、これに少なからぬ国会議員が同調している。戦中戦後の激動期を体験した世代ならではの信条としての絶対平和主義があり、日本に戦後70年の平和をもたらした平和憲法を信奉している。
岸田外相は「私自身広島の出身ということもあり、核軍縮へ積極的に取り組んでいきたい」と強調、「今の日本の政治において気になることは、タカ派的体質が強調されること。バランスが大切で、戦略環境の変化に適切に対応していくためには、各国との意思疎通をはかることがなによりも重要である」とも述べている。(Record China主筆・八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
この記事のコメントを見る
Record China
2014/3/28
2014/3/27
2014/3/8
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China・記事へのご意見・お問い合わせはこちら
業務提携
Record Chinaへの業務提携に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る