<コラム>ライブコマースに逆風?当局が統制の動き、人気ライバーを“重点管理”

高野悠介    2020年12月10日(木) 9時0分

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2020年の双11独身の日セールは、成功裏に終わったが、その直後から当局の動きが風雲急を告げている。

2020年の双11独身の日セールは、成功裏に終わったが、その直後から当局の動きが風雲急を告げている。ターゲットは、今年、全盛を誇る直播電商(ライブコマース)である。ライブコマースはここへ来て、急発展のひずみが顕在化しているのは間違いない。当局はどのような未来図を描き、ライブコマース界はどうなるのだろうか。

■中国消費者協会の分析レポート

ライブコマースへの否定的意見を集約

官製組織の中国消費者協会は11月20日、消費者保護と世情分析のレポートを発表した。それによれば、双11のプロモーション活動に関する否定的意見は33万4083通だった。多かったのは、ライブコマースと、その不合理なルールだ。

協会は、インターネット取引におけるグレーゾーンを封じるため、消費者は不当な価格設定や取引を拒否すべきと呼びかけている。また業界に対しては、出店での二者択一を迫ったり、他サイトへの出店を妨害しないよう警告した。いずれ法律や規則により、責任の追及に直面するからだ。トラフィック重視のプロモーションは、もはや古く、協会は変化の必要性を強調している。

■国家広電総局の通知

ライブコマース業界への要求とは

消費者協会レポートの3日後、国家広電総局(総務省に相当)は「関干加強網絡秀場直播和電商直播管理的通知」を公布した。ここでは、ライブコマースプラットフォームとトップライバー双方への“要求”を列挙している。内容は以下の4つに集約される。

1.ライブプラットフォームは、2020年11月末までに、経営主体の情報、業務展開状況を「全国網絡視聴平台信息管理系統」へ登録する。

2.関連プラットフォームは、50回のライブに最低1人の監督者を置かなければならない。また監督人員を育成し、「審核員信息管理系統」に登録する。

3.展示会等直播ライブイベントも、服務管理規程の対象となる。イベント14日前までに、招待客、ライバー名、内容、設備等の情報を、広電総局の担当部門へ届ける。

4.ライブコマースは、クリック数、成約総額、懸賞金など、大幅な水増しや、偽情報が問題となっている。これらの拡大を防ぐため、原因と世論を分析し、タイムリーな対策を取る。

例えば某企業は、10万元の料金を収めライブコマースを実施した。当日1323台の家電を成約したが、翌日1012台が返品された。売り上げの偽装だが、これらにその場で対処できるようにする。

■やり玉に上がった辛巴“燕の巣”事件

辛巴“燕の巣”事件の報道がヒートアップ

時を同じくして、ライブコマースの今後を暗示する事件が起こった。ショートビデオ「快手」の男性トップライバー、辛巴のトラブルだ。辛巴は全国的にも、李佳[王奇]、薇[女亜]に次ぐ知名度を誇る。10月25日に行った彼のライブが、問題とされた。販売したのは、高級食材、燕の巣原料を使用した飲料である。

双11の後、某女性ユーザーから、ビデオ投稿が寄せられた。燕の巣成分特有の粘り気はなく、大部分が砂糖水だ、という主張だった。辛巴と関連組織は10日間にわたり調査を行った結果、やはり鳥の巣成分はほとんど入っていなかった。辛巴は11月27日に声明を出し、ライブパフォーマンスの誇大広告を認めた。

そして賠償を申し出たのである。売り上げのうち、6198万3040元(9億8800万円!)を返金するという。この金額も大きな話題を提供し、象徴的事件と化した。

■李佳[王奇]、薇[女亜]を“重点管理”

李佳[王奇]、薇[女亜]の今後の構想とは

当局の目的は、ライブパフォーマンスとトップライバー本人を“重点管理”下に置くことにある。メディアは、人気ライバーの名を冠し「重点管理される薇[女亜]と李佳[王奇]」などの見出しで報じている。管理強化により、やりにくくなるのは間違いない。彼らは今後について、どのような構想を持っているのだろうか。

李佳[王奇]は、“スター路線”を発展させていく。この1カ月、映画出演、トークショー出演、ケンタッキーの新製品広告に登場している。最終的な目標は、世界的な国産ブランドを立ち上げることだ。そのために2020年3月、上海妝佳電子商務有限公司を設立した。ライブコマースだけでなく、従来型メディアへも進出し、多元的展開を図る。

薇[女亜]は、ライブルームにこだわり、進化の可能性を追求する。年末には新しいモデルを試す。商品サプライチェーンの拠点を自らの手で確立し、多くのブランドとライバー、インフルエンサーをマッチングする。ブランド、ライバー、インフルエンサーがつながり、コラボレーションのプロセスや進捗状況をモニターできるようにする。そのための新プラットフォームをスタートする。しかし具体的内容の詰めは、まだこれからだ。

李佳[王奇]はより広く、薇[女亜]はより深く、という異なる指向をしているようだ。ともかく2020年11月、ライブコマースは当局の指導により、ターニングポイントを迎えた。間もなく、その方向性が明らかとなることだろう。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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