人民網日本語版 2021年1月9日(土) 12時20分
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日本ドラマにおいて、グルメドラマは独特なジャンルで、近年、中国で人気を集めている日本ドラマのジャンルの一つでもある。
日本ドラマにおいて、グルメドラマは独特なジャンルで、近年、中国で人気を集めている日本ドラマのジャンルの一つでもある。その多くは、漫画を原作とし、「孤独のグルメ」や「深夜食堂」、「ワカコ酒」などは、常に柱となる主人公が存在するようにも見えるが、実際には、本当の主役は、主人公が探し求める、または作る料理だ。そのようなドラマには通常、中心となるストーリーはなく、控えめな人物とシンプルなストーリーは、グルメの引き立て役だ。文匯報が伝えた。
日本のほとんどの映画やドラマには、グルメと関係のあるシーンがある。例えば、「グランメゾン東京」の第3話では、木村拓哉が演じるスーシェフの尾花夏樹たちが良質の鹿肉を求めて、山奥に住む伝説のハンターを探す。そして、会っても最初は門前払いにされ、なかなか相手にしてもらえないものの、最終的にようやく試練に乗り越え、探し求めていた鹿肉を手に入れた。そのような鹿肉を使って作られた料理は、単に食欲をそそるおいしさだけでなく、その背後にある物語、その物語に込められた究極の食材にこだわる追求が魅力のありかとなっている。
日本の映画やドラマにおいては、何気なく、それほど特別には見えない食べ物に、重要な意義が込められていることも多い。そこには、主人公の思い出が詰まっていたり、日常から離れてリラックスさせてくれる存在だったり、特別なムードを作り出してくれる存在だったりする。「あなたの番です」の中で、主人公の翔太は、亡き妻との別れの儀式として、毎日料理を作る。「カルテット」では、皿に盛られた唐揚げ全体にレモンをかけるかかけないかという、一見何でもない問題をめぐって、登場人物数人が意見を交わし、そこからそれぞれの性格を見て取ることができる。
是枝裕和監督は以前、「映画の隅々に何が込められているのかに注意しなければならない。登場人物のセリフの本当の意味は何なのか?それは、酒や食べ物ではなく、家庭かもしれない」と述べた。確かに、是枝監督のほとんどの作品に、家族の思い出がつまる食べ物が登場する。例えば、「海街diary」では、ヒロインが毎年欠かさず庭に植えた梅を収穫して梅酒を作る。「万引き家族」ではお父さんが万引きしたクレープが、「海よりもまだ深く」ではお母さんが作るカルピスアイスが、「歩いても 歩いても」では家族で一緒に作るトウモロコシの天ぷらが登場する。
日本の映画やドラマにおいてグルメは、日本人が好むミニマリズムが表現され、特に貴重なものでもなく、特別感もなく、何でもない日常の食事に過ぎないものの、質素で、日常的であるからこそ、人々はそこに生活感を感じることができる。そして、そんな平凡なシーンに、最も心が温まる人情が詰まっており、ストレスの多い生活において、慰め、癒しとなってくれる。
日本のドラマにおいて、グルメは、「温かさ」と「癒し」を提供してくれる存在だ。「孤独のグルメ」の主人公がいつも一人で食事をするのが好きなのは、グルメの中に幸せを見いだすことができるからだ。「深夜食堂」の人気の理由は、寒い冬の夜に、客はそこで温かさを感じることができるからだ。現在、都市に住むほとんど人は、物質的にはほぼ満たされており、物質的な不足から不安な気持ちになることはほとんどない。しかし、物質的に豊かであるからといって、喜びに満ちているわけでもない。「感情的に満たされない」というのが都市に住む人々大きな悩みとなっており、生活の中で最も琴線に触れるのは、どこにでもあり注意しないと気づくことはないちょっとした事柄だ。質素な食事をする時に、人々は全ての仮面を外すことができ、何かの役を演じたり、家庭における責任、社会における身分などを気にしたりせずに、人間の最も基本的な欲求を満たすことができるようだ。それは、生まれたばかりの赤ちゃんのように、何の違いもなく、全く平等な個人になれる瞬間なのだ。そのため、グルメの世界において、人の心を最も癒すことができるのは、往往にして、ミシュランガイドで紹介されている店の豪華でぜいたくな料理ではなく、個人の思い出が詰まった家庭料理だ。
世界でも最も都市化が進んだ国の一つである日本の社会は、現代都市における精神的特徴やその問題を浮かび上がらせている。厚生労働省の報告によると、2007年以降、日本の人口は13年連続でマイナス成長となり、一人暮らしの人が増え、「孤独」が若者の生活において常態化している。
一人でできることはたくさんあるものの、日本の映画やドラマにおいて、多くの人は一人で美味しいものを食べることを選んでいる。日本人は、グルメをプライベートで楽しめることと見なしているようだ。「孤独のグルメ」というタイトルは、日本人のグルメに対する哲学を表している。多くの日本人にとっては、仕方なく「孤独」になってしまっているわけではなく、人生において自分で「孤独」を選んでいるのだ。
その他、現代都市における生活では強い孤独感を感じるため、一部の人は都市から離れるようになっている。社会学調査では、日本を含めて、都市化が非常に進んでいる国で、「逆城市化」が一つの流れになっている。東京や大阪、名古屋などの日本の主要都市では、20世紀末から何年も人口の流出が止まらない。都市での生活はサプライズや奇観に満ち、それに伴ってドキドキの体験ができるのとは違い、太陽が昇ると仕事を始め、沈むと家に帰る田園生活は、シンプルで、静かで、毎日同じことの繰り返しだ。しかし、そこにある親しい人間関係には、平穏さがあり、長年都市で住んでいる人の憧れとなっている。
日本ドラマ「凪のお暇」において、ヒロインの大島凪は、常に空気を読んで周囲に合わせて目立たず謙虚に振る舞っているにもかかわらず、人間関係においては「失敗者」となってしまう。同僚たちの陰口を知り、彼氏にも裏切られた彼女は、会社を辞め、家財を処分し都心から郊外へ転居、同僚や彼氏など全ての人間関係を断ち切って、アパートで一人暮らしを始める。そして、自分で簡素な料理を作り、少しずつ自分の心の声が聞こえるようになり、本当の自分を取り戻していく。
近年、日本のグルメドラマは、中国の若者の間で人気を集め、多くの人がそれを見て癒しを得て、小さな幸せを感じている。日本から海を隔てた向こうにある中国の多くの若者が、慌ただしい平日が終わった後に、日本ドラマを「おかず」にしながら、一人で夕食を楽しんでいる。それは、日本ドラマで描かれるグルメの哲学の実践でもあるかのようで、シンプルであるほど、癒しを感じ、一人で、おいしさをかみしめているのだ。(作者:行超)(提供/人民網日本語版・編集/KN)
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