内藤 康行 2021年2月22日(月) 10時20分
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近年、中国のインターネットの急進展に伴い、水ビジネス産業のスマート化が進んでいる。資料写真。
近年、中国のインターネットの急進展に伴い、水ビジネス産業のスマート化が進んでいる。「第14次5カ年計画(十四五計画)」期間中、スマート水道ビジネス技術の向上と産業の統合化により、水ビジネス産業は都市と郷鎮給排水、水環境総合整等で大きな成長機会がある。スマート水道技術を通じて水ビジネス業務の競争力を引き上げ、NB-IoTスマート水道メーターは、データ伝送のセキュリティー、ネットワークカバレッジ、伝送電力消費、および人件費の方面で、従来の水道メーターよりも遥かに優れていることが顕著となっている。 スマートコントロールシステムによる「供排一体化」は、共同管理効果を発揮し、全体運営コストをより効果的に削減する。スマート水道サービスをスマート都市開発システムに融合することで、スマート水環境を構築する。
現在、中国の水道メーター業界はまだ機械式水道メーターだ。プリペイドICカード水道メーターに代表されるスマート水道メーター1.0、光電式直読式リモート水道メーター、ワイヤレスリモート水道メーターは、超音波水道に代表されるスマート水道メーター2.0と共存している。メーターと電磁水道メーターの現状は、機械式水道メーターが依然として重要なシェアを占めており、スマート水道メーターの割合は年々増加している。その中で、スマート水道メーターは、プリペイドICカード水道メーター、有線リモート水道メーターからワイヤレスリモート水道メーターへアップグレードしている。近年、工業情報部の政策指導により、支援設備を備えたNB-IoT市場のリリースが加速し、NB-IoT水道メーターの普及が加速することが期待される。 NB-IoT水道メーターは、今後5年間で急速に浸透し、従来型水道メーターは大幅に削減される。中期的には、管網漏水整備、水道運営コストの削減と効率の向上、スマート運用の需要でスマート水道メーターがさらにアップグレードされる。管網の包括的な水パラメーターの測定機能を備える3.0スマート水道メーターの登場が期待される
■スマート水道メーターへの影響要因
スマート電気メーターとスマートガスメーターの推進は「第12次5カ年計画(十二五計画)」期間から実施されている。しかしスマート水道メーターは、多方面の影響を受け、2017年以前は電力メーターやガスメーターよりその推進は停滞していた。
水道メーターの川下需要者は散在している。ガスや電力業界の大手企業はほとんどが大型国営企業であるのと比べ、水道メーター業界の川下需要者は、全国で4000以上もある水道水施設である。業界は分散しており、川下ユーザーの地域性が強いため、普及拡大が極めて困難である。
統一技術や標準がなく、質の高いサービスは不均一であるため、初期段階のアプリケーション効果は良くなかった。全国の水道システムは極度に分散しており、国家電力グリットのような統一管理がなされていない。技術力も電力業界ほど強くない、標準システムと制度の改訂活動は水道メーターでしか行えず水道メーター業協会だけがその任を負っている。ネットワークアクセス証明書を持っている各電力量計の通信は完全なシステムによって監視されている。水道メーターのネットワークアクセスでは責任者不在で、監視されることはない。
ほとんどの水道水施設は公的機関の性格を持っており、その収益性はガス会社や電力会社ほど良くはない。特に水道水施設は莫大な管路の運用とメンテナンスコスト、および水道メーター改造の資金を負担する必要があり、運営資金ストレス状態にある。
■三輪駆動
政策指導、需要増大、成熟技術という三輪駆動(トロイカ・エンジン)に牽引されて、スマート水道メーターの普及は2017年以降大幅に加速した。
(1)政策指導
2017年6月、工業情報部は「NB-IoTの構築と開発を包括的に促進するための通知」を発表した。同通知では明確に、「水・電気・ガスのスマート計量化、公共駐車場管理、環境モニタリングなどの分野で、NB-IoTによる都市公共サービスと公共管理で開発を加速する」と述べている。2017年7月17日、チャイナテレコム(中国電信)のNB-IoTネットワークが正式に商品化された。さらに政策指導で、インフラ設備や関連支援施設の整備が進み、NB-IoTスマート水道メーターが一躍注目される。
(2)需要増大
給水(上水道)業界では、長年に亘り経営上で悩みの種が多く、手動検針による人件費上昇に伴い、運営コスト圧迫に直面している。同時に人員によるメーター読み取りは、長い決済サイクルと出力ミスと言う欠陥を持っている。一方、中国の給水企業の漏水率は依然として高く、「都市給水統計年鑑」によると、2015年の都市の給水企業603社の平均生産・販売ギャップ率は20.7%だった。2017年1月、「都市給水管網の地域計量管理ガイドライン-給水管網漏水管制システムの構築(試行)」は、2020年までに全国の都市公共給水管網漏水率を10%以内に抑えることを要求している。漏水整備・管理の緊急性に対し政策方針が導入される。スマート水道メーターの使用は、手動メーター読み取りに代わり、運用効率の向上が期待される。また、給水企業が管網漏水管理を強化する上で重要な基礎となる。さらに、2017年3月に世界初のNB-IoTスマートウォータービジネスプロジェクトがリリースされた。深圳の塩田地区と福田地区の複数のコミュニティーに1200を超えるNB-IoTスマート水道メーターが設置されている。この成功事例は業界の憂慮を払拭し、スマート水道メーターの需要を増大させた。
(3)技術の成熟
NB-IoT リモート水道メーターは、技術カバーが広く、低コスト、低消費電力、複数接続、および低速という特徴がある。有線リモート水道メーターと比較して、NB-IoT水道メーターには配線があり、ラインメンテナンスが簡便で、設置とメンテナンスコストを大幅に節約する。他のワイヤレスリモート水道メーターと比較して、NB-IoT水道メーターは認可されたスペクトルを使用するため、成熟した狭帯域ネットワーク技術を採用している。これは他のワイヤレス水道メーター通信基地局のユーザーの小容量、高消費電力、信号ミス、安全性不備等問題を解決できる。
■スマート水道メーターのこれからの成長機会
将来的に、スマート水道メーター関連業界の成長機会は広がる、以下3要因がスマート水道メーターの黄金成長期へと牽引する。
1)業界の問題点を効果的に解決
スマート水道メーターは、従来の機械式水道メーターシステムの3つの主要問題を効果的に解決する。
2)ビジネスモデルはすでに成熟しているが、実質的な推進拡大条件がある
IoT技術は日進月歩の発展を見せている。NB-IoT水道メーターは市場の需要に適合し、住宅用アプリケーションにも適している。また、経済的コストは既にモジュール当り20元(約325円)以下となっている。
3)政策支援の強化
逓増性水道価格の導入は「1世帯、1メーター」改造の重要な制度基盤であり、インフラ施設のスマート化もスマートシティー建設の6つの方向の1つであり、国家はこの点で大きな支援を実施する。
中国の水道メーター業界は、スマート水道メーターの普及率の増加という背景から、現在急成長の段階にある。2019年、中国の水道メーター業界の市場規模は約111億元(約1805億円)だった。水道メーター価格で見ると、Loraスマート水道メーターは約260元(約4228円)、NB-IoTスマート水道メーターは約280-350元(約4553-5691円)、従来の機械式水道メーターの平均単価は77元(約1252円)、IoT水道メーターの価格は従来の機械式水道メーターの3倍以上である。現在、スマート水道メーターの普及率は約30%で、そのうちIoT水道メーターのスマート水道メーターに占める割合は30%だ。単価的に高いNB-IoTなどのIoT水道メーターの普及率上昇に伴い、これからの3年で水道メーター業界全体として15〜20%の成長率が見込まれ、その中でスマート水道メーター市場の成長率は25〜30%に達するとも見込まれている。
スマート水道メーターは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせと技術的要求が高い特徴を持ち、ユーザーが使用した後、フォローアップの運用と保守、技術的なアップグレード、ソフトウェアの更新などのサービス要件もある。大規模な水メーター会社はアフターサービスへの対応が迅速だが、今後スマート水道サービスの普及率上昇とスマート水ビジネスの拡大により、大手企業は業界の集中度の高まりから恩恵を受けるだろう。生産企業の増加により、2014年から2017年までの水道メーター業界の競争が激化し、価格競争に陥り、品質を犠牲にした低価格商品が大手企業のシェアを奪う状況になっていた。しかし低価格商品の品質問題が露呈したことと、2017年にNB-IoTスマート水道メーターのプロモーションが加速したことで、川下のユーザーがブランドに注目し、業界は良性な競争状態に戻り、集中度が再び高まった。
水道メーター業界の純粋なハードウェア市場はいまだに小さく、市場価値の上限を突破するには、川下のスマートウォータープラットフォームにまで拡大するか、他の関連分野で第二の成長曲線を構築する必要がある。水道メーター会社の将来の競争では、ブランド、チャネル、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせ、およびスマート水道サービス統合ソリューションを備えた企業は、水道メーター分野での市場シェア拡大が期待されている。
■筆者プロフィール:内藤 康行
1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般と環境(水、大気、土壌)に関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。著書に「中国水ビジネス市場における水ビジネスメジャーの現状」(用水と廃水2016・9)、「中国水ビジネス産業の現状と今後の方向性」(用水と廃水2016・3)、「中国の農村汚染の現状と対策」(CWR定期レポ)など。
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