日本の華字紙・中文導報はこのほど、「日本人の素養はなぜますます低下しているのか」とする評論記事を掲載した。

記事の筆者は、「日本に滞在して30年、日本人の全体的な素養の高さには、やはり心から感服している。日本人の礼儀や他者への尊重といった長所は、すでに彼らの血の中、骨の髄にまで深く入り込んでいることを認識した。だから、彼らの一挙手一投足はいずれも優雅なイメージを与えるのだ」とした。

一方で、「ここ数年、筆者は日本人の素養に疑いを持ち始めた」とし、その原因として自身が見たり、実際に体験したりしたことを挙げた。例えば、スーパーで買い物をしたり、レストランで食事をしたりすると、時々店の従業員がいい加減な態度で仕事をしているのを目にするという。バスや地下鉄に乗っても席を奪う人をよく見かけるようになり、利用客の多い東京の新宿駅や渋谷駅では日本人同士がののしり合う光景を目撃ことも出てきたとし、「これまでほとんど見られなかった現象だ」と説明した。

また、自転車を押しながら道いっぱいに広がり、大声でしゃべっている高校生たちがいたため、自転車に乗っていた筆者が後方からベルを鳴らして通り過ぎたところ、返ってきたのは聞き慣れた「ごめんなさい！」との言葉ではなく「うるせえ」だった、との体験談も紹介している。

さらに、「日本人は性について比較的寛容だが、昔の日本人は公の場では節度を持って行動していた。しかし、ここ数年は少し変わってきている」とし、「筆者は人前でキスをする光景を何度目撃したかわからない。地下鉄や路上、ひどい時にはデパートのエスカレーターやエレベーターでも人目をはばかることはない」とした。また「昼も夜も、公園や道端、車の影で立小便をする人もよく見かける」としている。

そして、「最も驚いた」こととして、地域団体のバスツアーに参加した時のことを挙げた。「主催者はたくさんのつまみや缶ビール、飲み物などを用意していたのだが、参加者の一人、いつもスーツを着ていて上品そうな近所のサラリーマンが2人の子どもを連れてバスに乗ると、すぐに飲み食いを始めた。結果、サービスエリアまで我慢することができずに、慌ててビニール袋を探してバスの後部座席に隠れ、みんながいる中で用を足した。これは言葉では言い表せなかった」と振り返った。

続いて、スーパーについて「質を重視し、100％顧客に満足してもらっていた過去とは異なり、現在では一部のスーパーで買い物をする際、果物や野菜をよく品定めしないと不良品が混じっていることがよくある。これらはいつも袋の真ん中や底に入っているため、故意であることは明らかだ。こうしたことはこれまでほとんど見られなかったことから、日本企業の質も低下していることがうかがえる」と主張した。

さらに、「ここ数年、テレビで政治家や企業のトップが公然とうそをついたり、芸能人が自らのイメージを壊すようなことをしたりするシーンをよく目にする。これらすべてが、日本人の素養が確実に年々低下していることを物語っている」と論じた。

その上で、「なぜこのような状況になったのか。優雅で礼儀正しい日本人と、品質保証や安全性で知られてきた日本企業は一体どうなってしまったのか」と疑問を提起。日本人自身が分析していることとして「素養の低下は主に若者に顕著で、その原因は親にある。現在の親世代は仕事に疲れており、たまの休みも自分のことで精いっぱいで子どもの教育は基本的に学校任せになっている」と説明した。

一方で、「その深い原因を突き詰めると、筆者は人々の考え方がより自己中心的になったことと関係があるのではないかと考えている」とした。「現在の日本人はますます自分中心に物事を考えるようになり、家庭や社会において責任を負うことを避けている。結婚や出産を望まない人が増え、子どもを持ったとしても無責任な態度で自らの自由と引き換えにする人が多くなっている」とし、これが子どもの家庭教育に影響を与えているとの考えを示した。

そして、親も子も「仕事や生活の中でパソコンやスマートフォンなどに依存することが多いため、交際を嫌がり、一人になることが多くなることで、自然と生活がマイペースになっていき、他人の目を気にしなくなる。それが、表に現れることで、素養が低下しているように見えるのではないか」とした。

企業については「倫理、道徳が低下しているのは主に経営状態が良くないため。危機的な状況からやむを得ず手を抜く。日本企業と言えば、今もなお高品質やハイテク、一流のサービスなどの代名詞であるが、ひとたび信用を失うと社会に与える衝撃は大きい」とした。

そして最後に、「こうしたことが、かつての日本人の素養の高さと対比され、日本人の全体的な素養が次第に低下しているように感じるのである」と論じた。（翻訳・編集/北田）