拼多多は最強?ユーザー数でアリババ上回る、創業者退任もTikTokと並ぶ台風の目に

高野悠介    2021年3月30日(火) 6時20分

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拼多多の2020年第4四半期決算が衝撃を与えている。2020年末のユーザー数が、アリババを超えた。いくら急成長しているとはいえ、アリババをしのぐデータが現れるとはサプライズだった。

拼多多の2020年第4四半期決算が衝撃を与えている。2020年末のユーザー数が、アリババを超えた。いくら急成長しているとはいえ、アリババをしのぐデータが現れるとはサプライズだった。そして創業者・黄崢氏が董事長を退任すると発表された。アリババを視界にとらえた拼多多だが、今後どうなるのだろうか。

■驚きの決算短信…ユーザー8億人目前

ネット通販上位3社の2020年4Q決算を見てみよう。(売上/利益/アクティブユーザー数)

拼多多…265億4770万元、146%増、20億7800万元の欠損、3%改善、7億8840万人

アリババ…2210億8000万元、37%増、490億元、24%増、7億7900万人

京東…2243億元、31.4%増、24億元、194%増、4億7190万人

また、株式時価総額(3月20日)は拼多多1739億ドル、アリババ6617億ドル、京東1326億ドルとなっている。

京東は家電が看板の上、直営売上比率が高い分、売上高は大きい。また各社、サービス料などその他項目の売上構成比が上昇し、実態はわかりにくい。グループ総合力で見れば、アリババの力は依然として圧倒的だ。京東も有力子会社を複数抱えている。拼多多ほとんど単騎での戦いだが、アクティブユーザー数の増加はその高い成長性を再認識させるデータとなった。

■拼多多成長の秘密…テンセントと組む

拼多多は、アリババ、京東のように、日本のニュースに取り上げられるケースは少ない。それもそのはず、社歴はわずか5年に過ぎない。

拼多多は2015年9月にスタート。家人、友人、ご近所などでグループを組み、低価格での商品購入を目指すC2B型の共同購入通販だ。地方都市在住のネット通販初心者、つまりローエンド市場を、広範囲に取り込んだ。

成功の秘訣は、テンセントの国民的SNS・微信(WeChat)の活用にあった。ユーザーが自らのコミュニティーへ商品を紹介、つまり半ば自動的にプロモーションを行ってくれる。顧客が顧客を呼び込むのである。これに将来性を見たテンセントは2016年7月、拼多多への大型投資を行っている。

一方微信は、より低コストで企業と顧客を結びつけるサービスを模索していた。そして2017年1月、微信小程序(ミニプログラム)を立ち上げた。拼多多は真っ先に参加した。これによりアプリのダウンロードは不要となり、ユーザーの利便性は大幅に向上した。拼多多はミニプログラムの有用性をも証明した。テンセントの秘蔵っ子となったのである。

■4Qに収支均衡を達成

国家統計局によれば、2020年のネット通販売上は10.9%伸びた。これに対し拼多多は66%も伸びている。ユーザー当たり平均消費額も23%増加した。

欠損についても、2020年4Q、損益分岐点に達したという。4Qの赤字分は先行投資である。また依然として、出店者への売買手数料ゼロ、プラットフォーム利用料ゼロを貫いている。出店者に対し、手数料だけで、年間800億元のコストカットを提供している計算だ。

創業者・黄崢氏は2020年の好調要因について「防疫体制などの影響により、内部業務と管理の“反復”が加速した結果だ。そして少額資産の売買を扱うプラットフォームの提供から、“重厚資産”シフトへ舵を切った。それら新ビジネスが急速に成長している」と述べた。

新ビジネスには69億元(前年比78%増)売り上げの11.6%を充て、主に物流及び農産品に投資した。特に農産品の“ファーストワンマイル”に注力している。国内トップクラスの研究機関と提携し、科学的な種まき、農業IOT、無人温室などを展開した。その結果、2020年の農産品成約額は前年比2倍の2700億元に成長した。そして1200万の農業生産者が拼多多を通じて、全国消費者と接点を持った。“重厚資産”が順調に育っているのだ。

■創業者・黄崢氏の“卒業”

このタイミングで創業者・黄崢氏は引退を表明した。モデルチェンジの方向性明らかにし、収支均衡を達成、懸案には目途がついた。すでに上海最大の金持ちでもある。

昨年のインタビューでは、インタビューを受けなくてもよい立場になりたいと述べていた。露出を好む他のIT創業者たちと異なり、名利には“淡泊”である。まだ41歳。某メディアは、54歳で引退したジャック・マー(アリババ)の記録を破ると表現した。

黄崢氏は「拼多多はまだ若い。10年後も質を伴った高成長を続けることは、10年後の路傍の石を探し出すように難しい。そのため今から探索を始めたい」と述べ、今後は食品科学と生命科学分野の研究をするという。科学者は子供の頃のあこがれだった。そのため「繁星基金会」というファンドを設立、母校の浙江大学へ1億ドルを寄付した。腫瘍免疫、認知症、タンパク質など最先端の研究を支えるという。

拼多多の経営は、ウィスコンシン大学留学時代の同窓で、共同創業者の1人、陳磊氏に引き継がれる。2016年からCTO(最高技術責任者)、2020年7月からは、黄崢氏に代わりCEOも務め、すでに既定路線だった。

■アリババ、京東を跳ね返す

昨年、アリババは「聚划算」、京東は「京東団購」という共同購入モデルを準備し、拼多多の強い三線級以下の地方都市へ攻め込んだ。しかし、それでもユーザー数を最も増やしたのは拼多多だった。撃退されたといってよい。拼多多は実に強固なビジネスモデルだった。逆に拼多多は、彼らが得意としてきた商品開発のフィールドへ攻め込んだ。サプライヤーが拼多多に殺到する可能性もある。今年も大手3社の競争から目が離せない。

そして今年もTikTokバイトダンスと並び、中国IT界最強のビジネスモデル、台風の目であり続けるに違いない。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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