台湾VSコロナは「初盤に大量得点も逆転を許す」―香港・亜洲週刊が情勢分析

亜洲週刊    2021年5月22日(土) 21時0分

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香港誌「亜洲週刊」は、台湾で新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を野球に例えて「台湾チームはいつも最初は試合を有利に進めるが、最後には守りきれない」と評した。

新型コロナウイルス感染の抑止に成功した」などと高く評価されていた台湾で、5月になってから感染者が急増している。香港誌「亜洲週刊」はこのほど、油断や政治的な判断が状況を悪化させたとの記事を発表した。同誌は1987年の創刊で、中華圏をはじめとする世界各地の時事問題を幅広く取り扱うメディアだ。記事は現状を野球に例え、台湾チームはいつも試合開始直後には戦いを有利に進めるが、最後には守りきれず敗北すると評した。

記事がまず問題視したのは、政権及び民衆の「油断」だ。「新規感染者ゼロ」が続いたことで「陶酔」してしまったと指摘した。

台湾でも2020年12月30日に英国変異株の感染が発生したことで、21年1月1日からは、台湾籍以外の外国人の入国は厳しく制限したが、ビジネス関係者に対しては開放的だったことは「大きな賭けになった」と評した。

記事は、陳時中・衛生福利相が、すでにクラスター感染が発生していたにもかかわらず、5月9日の母の日について「通常通り」と宣言したことも問題視し、人の移動や飲食店に人が集まることがウイルス感染を助長することになるのを考慮しなかったことは、母の日の会食を禁止した場合の批判に絶えられないと判断したとの見方を示した。

記事はさらに、台湾の感染症輸入の防御は「ダブル・スタンダード」だったと評した。中国大陸からの感染症流入は徹底的に防御したのに対して、中国大陸では感染症の流行が落ち着き、欧米やインド、日本で流行が深刻な事態になっても、大陸からの感染症流入には警戒したが、欧米などについては粗略だったと指摘した。医療機関についても、外来患者の扱いについて、一時期は厳しく規制したが、その後は緩んでしまったという。

記事はさらに、国空会社の搭乗員に対する帰国後の隔離期間の基準を緩和したことも、感染の拡大に拍車をかけたと指摘した。まず、台湾のフラッグ・キャリアである中華航空(チャイナ・エアライン)は過去1年間も黒字を出した、世界的に見ても珍しい航空会社と指摘。落ち込んだ旅客輸送による収入を貨物輸送が補って余りあったという。

台湾の産業も全世界の自動車産業も、航空便を利用した半導体関連などの輸出が滞れば大打撃を受けることになる。そのため、航空便搭乗員については一般旅行者に対する帰国後の14日間の隔離を緩和したが、そのことで「ウイルスの輸入」が発生してしまった。

記事は、台湾でワクチン接種が進んでいないことも指摘した。これまでの各報道を総合すると、アジア地域各国の人口100人当たりのワクチン接種者はシンガポールが37.8人、中国大陸および香港とマカオは17.6人、韓国は6.3人。日本は2.8人と低い数字だが、台湾はさらに低い0.3人という。

記事は、馬英九前総統が大陸からのワクチン導入を提案したが、陳時中・衛生福利相がデータの不備を理由に拒絶したことも紹介した。また、蔡英文総統が個別の民意を問うことを目的に実施される公民投票についてのアピールを感染症対策よりも優先し、政権維持をコロナ対策よりも重視していると批判した。

記事は最後の部分で、新型コロナウイルス感染症対策を野球に例え、台湾チームはいつも、日本や韓国など強豪チーム相手に試合開始直後には戦いを有利に進めるが、最後には守りきれず敗北すると評し、台湾が難関を乗り越えられるかどうかは、問題の政治化を回避し、医療優先に戻れるかどうかにかかっていると論じた。(翻訳・編集/如月隼人

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