IoT生態系のカベを破るベース技術国産の「HarmonyOS」―中国

人民網日本語版    2021年6月10日(木) 6時50分

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ファーウェイが独自開発したOS「鴻蒙」は、大量のモノのインターネットデバイスのために何本もの目に見えない高速道路を建設して、すべてのスマートデバイスの統一コントロールセンターになることができる。

小さなものはメモリ124キロバイトのスマートブレスレットから、大きなものは4ギガバイト以上の大型端末まで、ファーウェイ(華為技術)が独自開発したスマートフォンなどのモバイル端末に対応可能な基本ソフト(OS)「鴻蒙(Harmony、ハーモニー)」は、大量のモノのインターネット(IoT)デバイスのために何本もの目に見えない高速道路を建設して、すべてのスマートデバイスの統一コントロールセンターになることができる。ファーウェイが2日に正式に発表すると、これを搭載したスマートフォンが市場に投入される正式な製品になった。北京日報アプリが伝えた。

デジタル時代の今、OSは引き続き産業システムの中で局面を左右する重要な位置づけにある。ベースとなる技術の国産化プロセスにおける象徴的な出来事として、独自開発の分散型技術を携えた「HarmonyOS」は、IoT時代に初めて成功を収めたシステムになろうと努力している。

賽迪顧問がまとめた報告では、今年末までに中国国内のIoT市場の規模は2兆6000億元(約44兆4800億円)を超える見込みだ。現在のようなIoT時代には、すべての人がデバイスの多様化の問題に直面するという。統計によれば、昨年末時点で、1人あたりのスマートデバイス保有台数は6台になった。

IoTをメインに打ち出した「HarmonyOS」に対する人々の認識は、これまでずっとあいまいだった。「分散型技術」にしろ、「IoTシステム」にしろ、こうした概念はよくわからないもの、先を行くものだった。

しかし小さなものではスピーカーやスマートウォッチ、大きなものではテレビやディスプレーまで、インターネットに接続するデバイスはどれも非常に複雑で、配線するだけで一仕事ということもあり、操作と使用体験との間には断裂があった。これはスマートデバイスのOSが非常に細分化されていること、バージョンやプロトコルがそれぞれ異なることが原因だ。エコシステムの細分化はIoT発展の最大のボトルネックでもあり、今や新時代と新技術がプラットフォームの枠を超えた次世代のOSを求めるようになった。

「HarmonyOS」のシステム内では、呼び鈴を鳴らすと、モニタリング画像が自動的にテレビ画面に送られる。音楽を聞きながら別の部屋に行ったり車に乗ったりすると、スイッチ切り替えによって切れ目なく音楽を聞き続けることができる。

これはそんなに珍しくないかもしれないが、デバイスの範囲が拡大してスマートホームにまで及び、呼び鈴、電気スタンド、エアコン、冷蔵庫、ビデオカメラなどに広がれば、ランニングマシンでトレーニングをしている時に、スマートウォッチが体温の上昇をモニタリングし、エアコンのスイッチを自動的に入れて室温を調節する。スマートフォンが自動車を遠隔操作できる。スマートウォッチがスマホを遠隔操作して写真を撮ることが可能になり、より理想的なスマートライフを送れるようになる。

これまでの考え方ではこうした場面を実現するのは難しく、システム間の協同や通信が大きな問題になる上に、ユーザーが電気スタンドやエアコンにより高性能のCPU(中央処理装置)を搭載することもないだろう。

そんな中で「HarmonyOS」の分散型技術が機運に乗じて登場した。人々は次のように理解すればよいかもしれない。「HarmonyOS」がすべてのハードウェアの能力を結集させ、1つ1つのデバイスをニーズに応じて柔軟に利用できる。テレビがドアのカメラを利用でき、スマートウォッチがスマホのCPUの処理能力を利用して資源の共有を実現することが可能になる。

ファーウェイの消費者事業ソフトウェア部門の責任者である王成録(ワン・チョンルー)氏は、「一般的なスマートホームは配線とペアリングが煩瑣で大勢の人をあきらめさせていたが、『HarmonyOS』を搭載したデバイスならスマホをかざすだけで配線が終わり双方向の操作ができるようになり、こうしたスムーズな接続によりスマホに大量のアプリケーションをダウンロードする必要はなくなる。シームレスな簡便さこそ『分散型技術』の神髄だ」と述べた。

ファーウェイ消費者事業の余承東(ユー・チョンドン)最高経営責任者(CEO)は分散型の配置技術について、「他のシステムでは異なる車両が1本の道路に集まって走っているようなものだったが、『HarmonyOS』は追い越し路線、走行車線、自転車専用道路と車線を分け、それぞれが自分の走るべき道を走れるようにし、渋滞が起こらなくなる」と説明した。言い換えれば、分散型技術はファーウェイが他の世界レベルOSの先を行くための優位性であり、ファーウェイのIoT時代における自信のよりどころでもある。

■ベース技術の国産化はグーグルへの挑戦か?

中国で勢いよく発展するデジタル経済にとってみれば、「HarmonyOS」が成功すれば、その意義はこれまでにファーウェイのスマホ販売量が世界2位を達成したことよりもはるかに大きい。

現在の市場で主流のOSは数えるほどしかない。世界で時価総額が最も高い企業を見渡すと、アップル、マイクロソフト、グーグルが長らく上位3位を占めていた。この3大国際大手の成功の基盤は、それぞれに開発したOSと巨大なソフトウェアのエコシステムにあることに疑問の余地はない。

「HarmonyOS」とそのエコのシステムが足場を固めれば、ファーウェイはハードウェア販売のシンプルなビジネスモデルを改め、チップなどのハードウェアの囲い込み戦略がもたらす事業のリスクから脱却し、「HarmonyOS」をはじめとするソフト事業を通じて再び優れた業績を上げることが期待できる。

ファーウェイの創業者の任正非(レン・ジョンフェイ)氏も重要コメントを発し、ファーウェイの社員に「勇気を持ってソフト分野で世界をリード」し、「HarmonyOS」のソフトエコシステムの構築に専念するよう呼びかけたことがさらに注目される。

OS発展の歴史を振り返ると、初期のDOS、Unixから、PCインターネット時代のWindows、Linux、モバイルインターネット時代のiOS、アンドロイドなどに至るまで、技術の大きな波の中で多くのOSが誕生したが、抜きん出ることのできたのはごく少数のOSだけだったことがわかる。

早くから緊迫感をもっていたグーグルも少しずつ進んでいる。2016年にIoTのOSのFuchsiaの開発をスタートし、大規模な商用化は未だに実現していないが、「HarmonyOS」と同じようにスマホ、コンピューター、IoTデバイスの横断が可能だ。昨年末には、小米が開発中のIoTのOSのVelaを発表した。これらは同じように万物のインターネット(IoE)の市場での位置づけに焦点を当てており、大々的な戦いがいつでもエスカレートする可能性がある。

ベースとなる技術の国産化プロセスの象徴的な出来事として、今、商用化を他社に先駆けて打ち出した「HarmonyOS」は、すでに新時代のスタート地点に立ったが、大勢のライバルが強敵を取り巻いて様子をうかがう状況の中、「HarmonyOS」が追い越し車線に出てOS市場の局面をひっくり返すことができるかどうか、スマホをIoE時代の究極の「コントローラー」にできるかどうか、「HarmonyOS」の将来には期待しながら見守ることも必要だ。(提供/人民網日本語版・編集/KS)

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