にわかに注目される中国の「寝そべり族」とは? 日本にも似た現象―独メディア

Record China    2021年6月10日(木) 9時20分

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ドイツメディアのドイチェ・ヴェレ中国語版サイトは8日、「中国の“躺平族”は何を考えているのか」と題する記事を掲載した。

ドイツメディアのドイチェ・ヴェレ中国語版サイトは8日、「中国の“躺平族”は何を考えているのか」と題する記事を掲載した。

“躺平(寝そべる)”とは、最近中国のネット上で流行しているワード。主に、あくせく働かずに精神的にゆとりのある生活を送るといった意味で用いられている。今年4月に大手ポータルサイト・百度(バイドゥ)の掲示板に掲載された「“寝そべり”は正義だ」と題された文章が元になったとされる。同文章の作者は「食事は1日2回でいいし、働くのは1年に1~2カ月でいい」「“寝そべり”はまさに賢者の運動。“寝そべり”だけが万物の尺度だ」と主張した。

この“寝そべり”はネット上で急速に人気を拡大し、注目を集めるトレンドワードになった。ドイチェ・ヴェレの記事は、“寝そべり”が掲げる「家を買わない、車を買わない、結婚しない、子どもを産まない、消費しない」というスローガンは、人生に迷い途方に暮れていた90年代以降生まれの若者世代に一つの道を示したと評した。

■「人生は苦しくて短い、楽しめばそれでよい」

ドイチェ・ヴェレが取材した中国人女性は、2年前に米国から帰国し、北京でメディア関係の仕事をしている。先日、大手IT企業を退職したばかりだといい、定職に就くことをやめ、原稿を書きながら本を読み、ゆったりとした生活を楽しむつもりだという。女性は以前勤めていた会社でのストレスが大きく、健康を害したと考えている。

女性は「世間一般で言われる努力するということに疲れた。何年も努力したところで、前の世代と同じような富は得られないか、あるいは本当に生きるか死ぬかの生活を長年続けなければならないと感じた」「家や車に興味はないし、他人からどう思われようと気にならない。今は社会も開放的になった。他人より抜きんでる必要もないし、世間的な成功を追い求める必要もない。人生は苦しくて短いのだから、楽しめばそれでいいと思っている」と語ったという。

中国のネット上では近年、「非合理的な内部競争」を表す“内巻”というワードも注目されている。20代の別の男性は英シェフィールド大学で修士課程を卒業し、金融系の各種資格を取得したものの、大企業では面接の機会さえ得ることは難しかった。男性は「“内巻”はずっと口にしてきました。“寝そべり”を叫ぶ人たちは、この内部競争に勝てなかったのだと。ある程度は私もそう認識しています。結局のところ、すごい人、バックグラウンドがある人、自分よりももっと努力した人たちがたくさんいる」と語った。

また、「家族とも話しました。上海に家も車もあるんだから、給料は多少少なくて楽な仕事をするのも悪い選択ではない、身体を壊したら大変だって言っていました。この点は、私も同意見です。この内部競争はコストパフォーマンスが低すぎると思います。競争に挑むよりも、“寝そべり”たくなります」とやるせない表情で語ったという。

記事によると、在米中国人学者の朱大可(ジュー・ダーカー)氏は“寝そべり”文化が生まれた原因が「若者世代の奮闘がさらに困難になった」ことによると指摘する。「上昇する空間がほとんどなく、水平移動、ひどい場合は下降する。主流の生活の中で“内巻化”が起こっており、将来の見通しが暗くなっている」と分析。「40年来、中国人の物欲は絶えず上昇してきて、ほぼ爆発に達した。しかも、道徳の瓦解まで起こっている。一方、“寝そべり”は欲に対する否定。これは欲の文化が盛衰のサイクルに入ったことを意味する」と指摘した。

■中国メディアは“寝そべり”を批判

朱氏は「中国政府としては、こうした状況の発生を見たくないに違いない」と指摘する。人口増加が大幅に減速している上、高齢化も深刻な状況。既存の労働資源である若年層が“寝そべり族”となれば、中国経済にマイナスの影響を及ぼすことは必至だ。

実際、中国メディアの南方日報が「“寝そべり”は恥、正義感はどこにあるのか」と題する記事を発表し、国営の新華社もこれを転載した。同記事は「元気いっぱいであるはずの若者の多くが仏系になっている」とした上で、「頭の中ではどうすれば心地よいかということしか考えていない」「ネガティブな感情に染まりやすい」などとして警鐘を鳴らした。

また、若者のストレスフルな生活に一定の理解を示しながらも、「奮闘することが幸せであり、奮闘する人生こそが幸せな人生」「プレッシャーを目の前にして“寝そべる”ことを選ぶのは正義ではなく恥ずべきことだ」と批判した。別の中国メディアからも「“寝そべり”は長期的な奮闘に備えるため。流行を追う若者の間で口癖になっているだけ」「ここの人たちは寝そべるのではなく、永遠に走り続ける」など否定的な報道が続いた。

■“寝そべり”は中国だけの現象ではない?

ドイチェ・ヴェレの記事は、“寝そべり”文化は中国だけのものではないとも説明している。日本を例に挙げ、「1990年代のバブル崩壊を経て経済の停滞が始まり、社会に出られない自己閉鎖的な“引きこもり”が生まれた」としたほか、人口減少、超高齢化、向上心や欲望を失った若者の増加などから「低欲望社会」が形成されたと紹介した。

その上で、「特定の文化的現象の出現は、往々にして経済社会のモデルチェンジと関係する」とし、「経済体はある段階に達すると、一定の社会保障機能を持ち、経済機会の選択は多元的になる。残業による限界利益は低下し、自然と向上心のない若者が生まれる」とした。

前出の朱氏は「“寝そべり族”は貧しい貧困層ではなく、中間層にしか現れない。都市経済がある程度発展したことによる産物だ」と指摘。「“寝そべり”が抵抗だとは思わない。単純な“寝そべり”は反経済行為であり生活戦略。ただそれだけだ」と語った。

記事は一方で、“寝そべり”に否定的な見方をする人も紹介。インターネット企業で副社長を務めるある男性は「出身によって生活条件は異なるが、これは重要ではない。ルールが公平で階層が固定化していなければ、社会は活力を持つ。私の周りには努力で運命を変えた人がたくさんいる。端的に言って、才能があり、勤勉さと運があれば成功することはできる。中国にはまだ上へ行く道がある」と語った。

別の男性も「“寝そべる”のは簡単だが、起き上がるのは難しい。中国は短期的にはまだ急速な発展を続ける。都市化が進んでおり、階層分化も続いている。“寝そべって”いる人は他の人が踏みつけていくだろう」と話したという。(翻訳・編集/北田

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