経営はつまらない?若くして退くTikTok、拼多多の80后創業者、中国のIT巨頭はどうなる?

高野悠介    2021年6月25日(金) 9時20分

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バイトダンスの創業者・張一鳴氏がCEOを退くと伝えられた。TikTokの世界的ヒットによって、今、乗りに乗っている企業の創業者である。

字節跳動(バイトダンス)の創業者・張一鳴氏がCEOを退くと伝えられた。TikTokの世界的ヒットによって、今、乗りに乗っている企業の創業者である。

また3月には、共同購入型ネット通販、拼多多の黄崢氏も董事長を退任した。拼多多はアクティブユーザー数でアリババを超え、大きな話題を集めた。最も旬の時期に、若い創業者が相次いで退いた。当局のIT巨頭への締め付けが影響しているのだろうか。さらにこれは“風潮”となるのだろうか。

■IT巨頭の創業経営者

IT巨頭、第1世代創業者の生年と創業年は、次のとおり。

アリババ、馬雲、1964年、1999年、2019年引退

テンセント、馬化騰、1971年、1998年

バイドゥ、李彦宏、1968年、2000年

京東、劉強東、1974年、1998年

続く世代は次のとおり。80后が大活躍している。日本の大企業ならまだ課長クラスだろう。

滴滴出行、程維、1983年、2012年

美団、王興、1979年、2010年

字節跳動、張一鳴、1983年、2012年

快手、宿華、1983年、2011年

拼多多、黄崢、1980年、2015年

このうち張一鳴と黄崢が、早くも経営の第一線から退く。

■バイトダンス

周知のように字節跳動は昨年米国トランプ前大統領から名指しで非難され、TikTok米国事業の売却を迫られた。世界中でこれ以上の成功証明はまたとあるまい。

バイトダンスは2012年8月、ニュースサイト「今日頭条」をスタートした。独自のアルゴリズムで、カスタマイズされたコンテンツの提供により、わずか3カ月で1000万ユーザーを獲得した。2021年1月のアクティブユーザー数は3億1000万だ。

2016年、今日頭条のトラフィックを生かし、映像へ進出した。抖音(海外名TikTok)である。抖音には、先行者があった。2014年にリップシンク(口パク)のビデオ投稿、シェアサービスを開始したMusical.Lyだ。バイトダンスは2017年11月、社運をかけてMusical.lyを買収し、TikTokへ統合していった。やがて2018年以降、世界で最も成功した中国アプリとなる。2020年の売り上げは前年比2倍、現在の企業価値は4000億ドルと見積もられている。上場来高値を更新したトヨタの1.5倍だ。

■張一鳴“卒業”の理由

2021年5月20日、張一鳴氏はCEOを退き、その座を南開大学(天津)の同窓生で共同創業者の梁汝波氏に譲ると発表した。

離任の理由について、中国メディアは次のように報じた。3つのOKR(Objective and Key Result、目標と主な結果)に満足できなかったという。新戦略の探究、研究組織とその管理、より大きな社会的責任の分担の3つだ。

そのため、日常の管理業務から退き、創業者として、より大きな方向性、企業文化、社会的責任など、長期戦略に専念する。バイトダンスの使命は、継続拡大し、創造力に富み、有意義であること、そして豊かな生活を創造することだ。そのため、一旦業務から離れ、第三者の目で外部から観察する。これは新たなスタートだ。

■拼多多

拼多多は、2015年9月にスタートした。創業者の黄氏崢は、浙江大学卒業後、ウィスコンシン大学マディソン校へ留学した。ここで網易(ネットイース)創業者の丁磊氏や歩歩高の段永平氏と面識を得ている。その後グーグル(中国)に入社。2007年に退社し、起業家となった。

成功のカギは、独自のユニークなシステムだった。ユーザー自身がWeChatを活用し、コミュニティーへのプロモーションを行い、予定販売量を確保する。低価格の魅力も前面に出し、地方の新規ユーザーを獲得した。サプライヤー側も、計画数量が確実にさばけるのなら安く出せる。サプライヤーとユーザー間のコミュニケーションを促進する、新しいC2Mモデルとして急速に浸透した。

そしてユーザー数でアリババを凌駕した。2021年第1四半期は、8億2380万人、前年より2億人近い増加となった。時価総額では京東を上回り、総合ネット通販2位の座を固めた。

■黄崢“卒業”の理由

拼多多は2020年、やっと黒字化のめどがつき、新たなステージへ踏み出した。プラットフォーム提供から、農産品や物流部門など、本格的なシステム作りへシフトする。投資によって、サプライサイドへの関与を強める。

そして黄崢氏は2021年3月、株主への手紙という形で、会長職の辞任を発表した。後はウィスコンシン大学同窓で、共同創業者の陳磊CEOが引き継ぐ。すでに昨年7月、CEOは譲っていた。これで完全に経営権は移行した。さらに株式の議決権まで取締役会へ委譲する。

今後は、食品科学と生命科学の研究に関与したい、そして未来の偉大な科学的業績のサポートができればこれ以上の幸せはない、という。

■80后は欧米のセンス

張一鳴氏、黄崢氏とも学生時代以来の盟友、共同創業者に後を託している。逆にそうした存在がいたからこそ、退任に踏み切れたともいえる。報道通りなら、張一鳴氏はファウンダーとして影響力を行使する。一方、黄崢氏は完全に距離を置く。

とにかく、人間力で強力にリーダーシップを発揮する、アリババの馬雲氏のような前世代創業者とは明らかに一線を画している。彼らの本質はエンジニア、技術オタクであり、新アイデアを次々具現化したい起業家だ。経営実務や当局との折衝はもともと本意ではない。これからは、本来の自分に忠実に生きようというのだ。自己実現の追求や社会貢献の強い意識も、欧米のセンスに近い。彼ら2人のような流れは、若い経営層全般を見れば、続きそうである。それはIT巨頭やスタートアップ市場にどういう影響をもたらすのか。もうしばらく観察が必要だろう。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。著書:2001年「繊維王国上海」東京図書出版会、2004年「新・繊維王国青島」東京図書出版会、2007年「中国の人々の中で」新風舎、2014年「中国の一族の中で」Amazon Kindle。

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